第28話 シシアンの港 ~大いなる危機~(前編)

 シシアンの港に着いたレオネス一行。

 時刻は昼を過ぎていた。


「先に昼食にしよう」


「そうだな、腹が減っては戦は出来ぬ」


 センジの提案で昼食を取るレオネス達。

 昼食を取り、小休憩を挟み、いよいよ素材採集を開始する。


「ここが竜魔鋼ドラゴニウムの取れる迷宮ダンジョンのケノス洞窟だ」


 海辺で、岩に囲まれた洞窟、ケノス洞窟へと入っていくレオネス達。

 洞窟内部は色とりどりの魔晶石が輝いていた。


「綺麗……」


「本当、幻想的ね」


「良い観光名所だね、魔物が居なければ!」


 洞窟を進むレオネス達は、触手水蛇テンタクルヒュドラと遭遇した。

 触手水蛇テンタクルヒュドラ、蛇の形をした魔物で、尾が無数の触手に枝分かれしている。


「5体か、図体ずうたいはそんなにデカくないが、数が多いな」


「奴らの牙には気を付けろ、噛まれたらしばらく動けなくなるぞ!」


 戦闘態勢に入るレオネス達。

 レオネスとセンジが前衛を務め、ミレス、ルナリス、フェレティスは後衛を務める。


「うおっ、なんだこいつ!?」


 触手水蛇テンタクルヒュドラに斬りかかったレオネスだが、その剣は触手水蛇テンタクルヒュドラの体表を滑り、ダメージを与える事が出来なかった。


「こいつらの体表は粘液で非常に滑りやすくなっている。上手くやらんと切れないぞ!」


「先に言ってくれ!」


 センジの忠告に、先に言うように苦言を呈すレオネス。

 攻撃に失敗したレオネスは触手水蛇テンタクルヒュドラの噛み付きによる反撃を受けるが、後方に飛び、攻撃をかわす。


「大丈夫、レオネス?」


「援護します!」


 ルナリスとフェレティスは魔法銃で触手水蛇テンタクルヒュドラを銃撃し、レオネスを援護する。

 しかし、魔力弾は触手水蛇テンタクルヒュドラの粘液の体表を滑り、ダメージを与えられなかった。


「えー!? 魔力弾も滑るの!?」


 思うようにダメージが与えられず、歯噛みするルナリス。


「私の出番かしら」


 ミレスは風魔法・ウィンドスラッシュを唱え、風の刃で攻撃する。

 風の刃は一体の触手水蛇テンタクルヒュドラの触手を斬り飛ばす。


「よし。ん?」


 斬り飛ばされた触手は、瞬く間に再生する。


「ミレス、狙うなら弱点の頭だ! 触手を攻撃してもすぐに再生するぞ!」


「先に言ってよー!」


 ミレスは触手水蛇テンタクルヒュドラの頭を狙い、ウィンドスラッシュを放つが、先の攻撃で学習した触手水蛇テンタクルヒュドラは触手を使い、頭部を守る。


「ちょっとまずいか……!」


 なかなか触手水蛇テンタクルヒュドラに攻撃が通らず、レオネス達の陣形は崩れ、現在は一人一体と交戦していた。


「再生能力が厄介だな……」


 レオネスは剣魔法・属性付加・刃エンチャント・ブレイドを使う。

 属性付加・刃エンチャント・ブレイド、剣に魔力を流し強化し、剣の性能を高める魔法である。


 属性付加・刃エンチャント・ブレイドにより強化された剣で触手水蛇テンタクルヒュドラを斬るレオネスだが、触手に阻まれ、なかなか頭部を攻撃できずにいた。


「やはり、手強い……!」


 センジも大剣の重量を利用し、触手を斬っているが、再生能力に苦戦し、頭部に攻撃できなかった。


「斬ってもキリがないなら……!」


 レオネスは地面に剣を突き立てる。


 ──アルハザード流・護衡魔陣ごこうまじん

 剣を地面に突き立て、自身の周囲に小規模の魔力の結界を形成し、結界内を魔力の奔流で攻撃する技である。


 魔力の奔流により、頭部にダメージを負った触手水蛇テンタクルヒュドラは動きを止める。


「そこだ!」


 動きの止まった触手水蛇テンタクルヒュドラにレオネスはアルハザード流・剛衝破ごうしょうはを繰り出す。

 振り下ろされた闘気をまとう剛剣は触手水蛇テンタクルヒュドラを両断する。

 真っ二つになった触手水蛇テンタクルヒュドラは魔石を残し、灰となる。


「まずは一体!」


 触手水蛇テンタクルヒュドラの撃破に成功するレオネス。

 残る触手水蛇テンタクルヒュドラは4体である。


「ひいぃぃ! 助けてくださいぃ~!」


 触手水蛇テンタクルヒュドラを撃破したレオネスが振り返ると、フェレティスが触手に絡まれ、逆さ吊りにされていた。


「噛まれて動けなくなっちゃいました~!」


 触手水蛇テンタクルヒュドラに噛まれたフェレティスは身体が痺れ、動けなくなり、触手水蛇テンタクルヒュドラの触手に吊り上げられていた。


「しましま……、いや、今助けるぞ!」


「見ないでください~!」


 スカートを履いているフェレティスだが、現在、身体が痺れ動けず、逆さ吊りにされているため、スカートで下着を隠す事が出来ず、下着しまパンを露わにしていた。


 レオネスの一閃により触手は断ち切られ、フェレティスは落下する。

 落ちて来たフェレティスを受け止めるレオネス。


「見ましたよね?」


「ソ、ソンナコトナイヨ」


 フェレティスの問いに、片言かたことで答えるレオネス。


「本当に見てないですか?」


 涙目で問うフェレティス。


「……脳裏に焼き付けし情景は魂に刻み込まれ、容易に忘れることなど──」


「よくわかりませんけど、見たってことですねー!」


 触手水蛇テンタクルヒュドラの触手乱打を掻い潜り、距離を取るレオネス。

 動けないフェレティスを地面に置き、触手水蛇テンタクルヒュドラと対峙する。


「攻略法は見つけた、行くぜ!」


 レオネスは拳で闘気を叩きつける闘襲撃とうしゅうげきを放ち、闘気で触手水蛇テンタクルヒュドラを吹き飛ばし、壁と激突させる。

 壁と激突した衝撃で触手水蛇テンタクルヒュドラの動きが鈍る。


「そこだ!」


 動きの鈍った触手水蛇テンタクルヒュドラに強烈な突きである突襲迅とっしゅうじんを繰り出し、頭部を刺し貫く。

 頭部を貫かれた触手水蛇テンタクルヒュドラは灰となり、魔石を落とす。


「これで二体、あと三体か!」


「こっちも助けて~」


 レオネスが声のする方を見ると、ミレスは触手水蛇テンタクルヒュドラに下半身を飲み込まれていた。


「ミレスーッ!!」

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