第5話 ギルド ~変わった所、変わらない所~
ギルドを訪れたレオネスは受付嬢にギルドカードの提出を求められていた。
ギルドカードの存在を知らないレオネスはギルドカードとは何かを問う。
「ギルドカードって何ですか?」
「冒険者の証明書ですけど、ギルドの利用は初めてですか?」
「いや、何度も利用していますよ。昔は冒険者をしてましたし」
「昔ですか、具体的に何年程前ですか?」
「5年前です」
「5年前ですか、なるほど」
レオネスと受付嬢の問答で、受付嬢は納得がいったという顔をした。
「ギルドカードは3年前に導入された冒険者の免許であり証明書なんですよ。危険管理の面から今ではギルドカードを持っていない冒険者は依頼を受けられなくなっているんです」
「え、じゃあ、俺は無免許ってことに?」
「なりますね」
「なんということだ……」
「まあ、手続き自体は簡単ですので。こちらに必要事項をご記入下さい」
レオネスは手渡された書類に必要事項を記入していく。
「書けました」
「拝見しますね」
受付嬢はレオネスの書類に不備が無いか目を通す。
「書類は大丈夫ですね。最後にこちらの水晶に触れてください」
「何ですかコレ?」
「ギルドカード悪用防止のために個人の魔力をカードに登録するアイテムです。怪しい物ではありませんよ」
そう説明され、レオネスは水晶に触れる。
水晶はひんやりと冷たく、それ以外は特に変わった点は無い。
「はい、大丈夫です。では、カードは5分ほどで出来ますので、それまでお待ちください」
レオネスは自身のギルドカードが出来るまで、ギルドに新設されている喫茶コーナーで時間を潰すことにした。
「コーヒーを一つ」
「120
料金を支払い、レオネスは空いているテーブル席に座り、周囲を見回し、観察する。
レオネスの他にも数名の冒険者がおり、談笑や食事をしている。
レオネスの知るギルドは無法者の集まりといった感じであり、喧嘩などは日常茶飯事だった。
現在はそんな気配などなく、本業の喫茶店にも劣らないオシャレともいえる雰囲気を醸し出していた。
リフィアの町の周辺には比較的弱い魔物しか出ないため、新米冒険者でも討伐依頼がしやすく、新米冒険者の町というイメージがついており、多くの新米冒険者がこの町で経験を積み、他の町へ旅立っていく。
(若い冒険者が多いのは、昔も今も変わらないな)
そんなことを考えながら、レオネスはコーヒーを飲み干す。
「レオネス・レオルクスさーん」
コーヒーを飲み終えると、ちょうど受付嬢から呼び出された。
「こちらがギルドカードです」
紫色のカードを手渡される。
カードには氏名、年齢、冒険者ランク、所属クランの四つの項目が記載されており、冒険者ランクは最低のE、所属クランは『無し』となっている。
レオネスはクランに所属していないが、冒険者ランクは下級冒険者のCくらいはあっても良いのではないかと思った。
そのことを質問するレオネス。
「ごめんなさい、ギルドカードを持つ前のランクは引き継げないんですよ。なので、ギルドカードが導入されたときは、上位冒険者からの苦情が多くて……。あ、でも、ランクの評価方法は昔と同じく活躍度で評価されますので、バリバリ依頼をこなせば、どんどんランクが上がりますよ!」
上位冒険者からの苦情が多かったと、死んだ目で語る受付嬢から、苦労を察したレオネスは、Eランクは誰もが通る道だと納得し、それ以上は触れないことにした。
「では、ギルドカードの説明をさせてもらいますね」
ギルドカードはランクに応じて色が変わる。
そのため、ギルドカードの色を見るだけで、どのランクかが分かるのだ。
SSSランクは漆黒、SSランクは黄金、Sランクは白銀、Aランクは赤色、Bランクは青色、Cランクは緑色、Dランクは黄色、そしてEランクは紫色である。
特殊な色として、灰色がある。
これは持ち主以外の者が持つと悪用防止機能が働き、灰色になるのだ。
他には、討伐した魔物を記録する機能があり、魔物を討伐したが、証拠が無いといった場合はギルドカードを鑑定すれば、討伐の真偽がすぐに分かるというわけだ。
かつては魔物の討伐数は自己申告だったが、ギルドカードが導入されたことで、確実な魔物の討伐数を測る事が出来るようになったのだった。
「説明は以上になります。何か質問はありますか?」
「ないです」
「では、こちらの依頼の受注ですが、……あ! すみません、この依頼は受けられないんですよ」
「どうして?」
「安全面から受注できる依頼は冒険者ランクと同等かそれ以下の物に限られるんです。」
ギルドとしては、身の丈に合わない依頼を受けて、失敗したり、冒険者が死亡するリスクを低減する目的があり、導入した措置であった。
「そうですか。では、自分に合う依頼を見繕って下さい」
「かしこまりました」
ギルドカードを始め、いろいろと制度が変わっているため、覚える事が多く、依頼を選別するのが面倒になったレオネスは、依頼の選別を受付嬢に任せたのだった。
「こちらはどうですか?」
「
「はい、受注できました。では、頑張って下さい!」
レオネスとしては物足りなさを感じる相手ではあるが、Eランクでは受けられる依頼も限られるため、仕方ないと納得し、依頼に向かうことにした。
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