第46話 準決勝 ~VSビフレスト~ ①

「それでは準決勝第一試合! 剣の魔術師ウィザーディング・ブレイド七色の道標ビフレスト! 両チーム入場です!」


 マオルゥの声と共に入場する剣の魔術師ウィザーディング・ブレイド七色の道標ビフレスト

 エルスペリオル王国・武闘武術大会も準決勝戦であり、後半戦に差し掛かる。


「む? 四人か?」


 七色の道標ビフレストのリーダー、クラースが剣の魔術師ウィザーディング・ブレイドの人数が一人足りないことに気付く。


「おーっと! 剣の魔術師ウィザーディング・ブレイド、センジ選手が居ません!」


 マオルゥもセンジの不在に気付き、声を上げる。


「センジは用事で今回の試合には出れないんだ。だから俺たち四人、勝ち抜き戦で頼む」


 レオネスはメンバー不在による勝ち抜き戦をマオルゥに申し出る。


「分かりました! では、剣の魔術師ウィザーディング・ブレイド七色の道標ビフレストの試合は残りメンバーが居なくなるまでの勝ち抜き戦となりまーす!」


「二回も勝ち抜き戦とはな……」


「まあ、しょうがないわよ」


 勝ち抜き戦を申し出たレオネスだが、前回の試合も勝ち抜き戦だったため、少々複雑な気分になる。

 そんなレオネスに声を掛けるミレス。


「それでは早速、準決勝一戦目、始めたいと思います! 選手はリングへどうぞ!」


 剣の魔術師ウィザーディング・ブレイドからはフェレティスが、七色の道標ビフレストからはヘレネーディアがリングに上がる。


 ヘレネーディア・ロプスン。

 七色の道標ビフレストのSランク冒険者で、弓使いである。

 弓による遠距離攻撃を得意とするが、二刀のナイフにより接近戦もこなす。


「それでは両者位置についてぇ! 始めっ!」


 ゴングが鳴る。


 ヘレネーディアは矢をつがえ、フェレティスを撃つ。

 しかし、フェレティスは瞬転速スピードスターを発動させ、矢を軽々とかわし、ヘレネーディアとの距離を詰める。


「やはり速い!」


 高速で近づくフェレティスに対し、ヘレネーディアはナイフを抜き応戦する。


「チャージスティンガー!」


 魔力式散弾銃を装備したフェレティスは突進し、至近距離で散弾銃を発射する。


「くっ!」


 至近距離で散弾銃を撃たれたヘレネーディアは咄嗟に弓矢を投げて身を屈め、フェレティスに突進する。

 散弾銃の下に潜り込み、うまく散弾をかわすと同時に、フェレティスの腰に組み付く。

 ヘレネーディアは組み付いた際の勢いを利用し、フェレティスを押し倒す。


「これだけ近いと、その銃は使えないでしょ?」


「そう思います?」


「……っ!?」


 押し倒したフェレティスを追撃しようとナイフを構えるヘレネーディア。

 しかし、フェレティスはどこからともなく魔力式拳銃を取り出し、ヘレネ―ディアに構えていた。

 ヘレネーディアはフェレティスから飛び退き、弓矢を拾い、遠距離戦に持ち込む。


「その拳銃、どこから出したわけ?」


「ここですよ」


 フェレティスはポンポンと腰のポーチを軽くたたく。


武器変更クイックチェンジ


 フェレティスがそう唱えると、フェレティスの武器が拳銃から突撃銃に変わる。


「……何それ」


「私の専用魔道具『武器庫アーモリー』です」


 ──武器庫アーモリー

 フェレティス専用の魔道具で、戦闘用マジックポーチと呼べる代物。

 使用者の意思に応じて、内包した武器を瞬時に入れ替える事が出来る。


「便利な物を、……ちょっとほしいかも」


 フェレティスの専用魔道具の存在を知り、少しフェレティスが羨ましくなるヘレネーディア。


「さあ、戦いはここからですよ!」


 フェレティスは突撃銃を連射し、ヘレネーディアを攻撃する。


「こっちだって負けてられない! 多重追尾弾マルチプルサイドワインダー!」


 ヘレネーディアはフェレティスの連射に対し、無数の魔力の矢を放ち、魔力弾を相殺する。

 さらに、魔力弾を突破した矢はフェレティスに向かって飛んでいく。

 瞬転速スピードスターで回避するフェレティスだが、ヘレネーディアの魔力の矢はフェレティスの方向へ軌道を変え、追尾する。


「追尾弾……!」


 フェレティスは武器を拳銃に切り替え、早撃ちでヘレネーディアの多重追尾弾マルチプルサイドワインダーを撃ち落とす。


「もらった!」


 フェレティスが魔力の矢を撃ち落とす隙を突き、ヘレネーディアは魔力を込めた強力な一撃を撃ち込む。


「いっけぇ! 炎の一撃フレイムワインダー!」


「しまった! でも……!」


 フェレティスの瞬転速スピードスターを以ってしても炎の一撃フレイムワインダーの速度の方が速く、炎の一撃フレイムワインダーはフェレティスの左腕をかすめ、ダメージを与える。


「やるじゃない……!」


 攻撃したはずのヘレネーディアの方が片膝を突いていた。

 フェレティスの武器は拳銃から狙撃銃に変わっており、炎の一撃フレイムワインダーかわしながら、狙撃銃で魔力弾を跳弾させ、ヘレネーディアに反撃していたのだ。


「我流銃技・トリックリフレクションです!」


 立ち上がろうとするヘレネーディアに魔力弾を撃ちこむフェレティス。

 フェレティスのトリックリフレクションで片足を撃たれたヘレネーディアは放たれた魔力弾をかわす事が出来ず、直撃し、場外に吹き飛ぶ。


「はぁ、負けちゃった……」


 テンカウントが行われるが、ヘレネーディアは立ち上がる事が出来ず、リングアウトで敗北する。


「ヘレネーディア選手の場外負けにより、勝者フェレティス選手!」


 フェレティスの勝利に拍手が鳴る。


「肩を貸してくれない? 足がしびれちゃって……」


 ヘレネーディアは駆け寄る七色の道標ビフレストのメンバーに肩を借り、控室へ退場する。


「まずは一勝だな」


「でも、フェレティスは左腕が使えないわ」


 フェレティスの左腕は炎の一撃フレイムワインダーのダメージで動かせなくなっていた。


(この状態で連戦はキツいですね……!)


 左手が使えず、命中精度が大きく落ちた状態でフェレティスは次の試合に挑む。

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