第23話 邪悪な牙 ~悪魔の種の根絶~ (前編)

 レオネスとミレスが出かけたのち、ルナリスはレオネスから頼まれたことを行っていた。

 それはフェレティスの修行である。

 レオネスは剣士、ミレスは魔法使いであるため、フェレティスに銃技を教える事が出来なかった。

 そこで、同じ銃士ガンナーであるルナリスにフェレティスの修行を頼んだのだった。


「今、武器を握れないし、出来る事をしましょうか」


「よろしくお願いします!」


 こうして、ルナリスとフェレティスの修行は始まった。



◇◇◇



 宿屋へ戻って来たレオネスとミレス。


「何だこれは……!」


 帰って来たレオネスが目にしたのは、テーブルの上に乗っている二丁の魔法銃だった。


 散弾銃型魔法銃、VULCANO-Mヴォルカノ-モデル4。

 狙撃銃型魔法銃、ERUPTION-Mイラプション-モデル24。


「ああ、これ? 拳銃ハンドガンだけじゃ心もとないでしょ? だから買い足しておいたわ、剣の魔術師ウィザーディング・ブレイドの名義で♪」


 ルナリスの許可なしの行動に、レオネスは頭が痛くなったが、銃士ガンナーのルナリスがフェレティスにというのであれば、無駄な買い物ではないだろうと思うことにした。


「あ、あと、魔力式手榴弾マジックタイプグレネード魔力式閃光手榴弾マジックタイプスタングレネードをフェレティスのついでに、私もいくつか頂いたわ♪」


 やはり頭が痛くなるレオネスだった。


「まあ、それはいいんだけど、ルナリスに聞きたい事があるんだけど」


「なにかしら?」


「滝の周りにペチペチ草が生えている場所を知らない?」


 ミレスはレオネスが推理した場所をルナリスに聞く。


「ウルズの滝かしら? でも、どうして?」


 レオネスは自身の推理をルナリスに説明する。


「レオネスさん凄い!」


 感心するフェレティス。


「なるほどね。確かにそんなところは調べなかったわね」


「その滝を張り込みして、確信が持てたら突入するつもりでいる」


 レオネスはこれからの計画をルナリスに言う。


「今度こそ私もついて行くわ」


「分かっているさ。だから、張り込みは俺とミレスでやる。ルナリスはケガの回復に努めてくれ」


「分かったわ」


「あと、フェレティスの修行も頼んだ」


「もちろん♪」


「でも、勝手に買い物しないでよ」


「ちぇ~」


 ルナリスに釘を刺すミレス。



◇◇◇



 レオネスとミレスがウルズの滝を張り込みして三日が経過する。

 宿屋に戻って来た二人はルナリスに報告する。


「怪しいマントが何人か出入りしていた。あそこで間違いなさそうだ」


 ルナリスとフェレティスも装備を整える。

 装備を整え、ウルズの滝へ向かうはずが、レオネスは違う方向へ行く。


「ちょっと、滝に行くんじゃないの?」


「そのまえに、王国騎士団に連絡しておこうと思ってな。ほら、相手は犯罪組織だし、規模もどのくらいか分からないしな」


「でも、それじゃ、獲物を横取りされるかも……」


 レオネスの考えに否定的なルナリス。


「じゃあ、こうしましょ。私とレオネスとルナリスが先にアジトに突入する。その間にフェレティスに王国騎士団を呼んでもらうの。そうすれば、全部終わった後ぐらいに騎士団が到着するんじゃない?」


「まあ、それなら……」


「私だけ別行動なんですか?」


 ミレスの案にルナリスは納得するが、フェレティスが別行動に異を唱える。


「フェレティス、今回の相手は犯罪組織だ。いつもの魔物討伐とはわけが違う。それに悪魔の種エビルシードも絡んでいる。今回はミレスの言葉に従ってほしい」


「むぅ、分かりました」


 不満げなフェレティスであるが、ミレスの案に従うことにする。

 フェレティスは王国騎士団の駐屯地へと向かい、他はウルズの滝へと到着する。


「滝の裏に通路があるみたいだ。俺たちもそこまで入って確認したわけじゃないが」


「行ってみれば、わかるわ」


 ルナリスは滝の裏へと入っていく。

 滝の裏には洞窟があり、その奥には壁に偽装された扉があった。


「こんなところにあったのね、どおりで見つからないわけだわ」


 ルナリスは偽装された扉を開けようとしたが、鍵が掛かっていた。


「そりゃ、戸締りくらいしてるか」


 閉ざされた扉にミレスは肩を落とす。


「下がってな、俺が斬る」


 レオネスは属性付加・電刃エンチャント・ハーモニクスを発動し、扉を斬り裂く。


「行くぞ、短期決戦だ!」


 エビルファングの本拠地へと突入した三人。

 二手に別れ、レオネスは陽動と悪魔の種エビルシード生産工場の破壊に向かう。

 ルナリスとミレスはエビルファングの首領の確保へと向かう。



◇◇◇



 レオネスはエビルファング構成員と戦いながら地下の悪魔の種エビルシード生産工場へと到着する。


「一時の快楽と引き換えに、精神を蝕み、魔へと堕とす悪魔の種、ここで断たせてもらう!」


 レオネスは剣魔法・剣弾爆撃ソードボンバーで辺りを爆破し、設備を破壊する。

 剣弾爆撃ソードボンバー、通常よりも多量の魔力を圧縮した剣の弾丸・剣弾ソードブリットを射出し、着弾時に圧縮された魔力が解放、爆発を引き起こす剣魔法である。


「地下だからな、崩落しない程度には加減しないと」


「貴様、これ以上好きにはさせんぞ!」


 レオネスは10人以上のエビルファング構成員に囲まれていた。


「お前らも魔物化するのか?」


 レオネスの問いに言葉で答える者はいなかった。

 全員、魔物化という行動で答えを示したのだった。


「ま、悪魔の種エビルシードの出所だからな。そうだろうとは思っていたが。これは骨が折れるぞ……」


 レオネスは剣を構え直し、向かってくる無数の赤い魔人と対峙する。


「ちょっと本気を出すから、死にたい奴からかかってきな!」



◇◇◇



「わわっ、揺れたね」


「派手に陽動してくれているみたいね」


 ミレスとルナリスは手薄になった通路を進んでいた。

 レオネスの陽動のおかげで、エビルファング構成員は地下の悪魔の種エビルシード生産工場へ向かっているからだ。


「ちょっと豪華な扉、ここが指令室かな?」


「やっぱり鍵が掛かってる。でも、このくらいなら!」


 ルナリスは二丁の魔法銃で扉を撃ち、扉を破壊する。


「貴様らが侵入者か!」


 部屋の中には中年の男がおり、カバンに資料や金を詰め込んでいた。


「あら、自分だけ逃げる気だったの?」


悪魔の種エビルシードの製法を知る私さえいれば組織の再建は容易い」


「いいことを聞いたわ。あなたが居なくなれば、悪魔の種エビルシードはもう作れないってことね?」


 ルナリスは男の鞄に魔力弾を撃ち込む。


「貴様! 製法の資料が!」


「これで終わりよ」


 ルナリスは男に銃を突きつけ、引き金に指を掛ける。


「ま、待て! 金ならやる!」


「そんなもので、父さんは戻ってこない。死んで償え!」


 ルナリスは引き金を引き、男を撃ち抜く。


「終わったね」


「ええ」


 ルナリスの復讐はこれで幕を閉じた。

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