第31話 ゴジョーの都 ~グリフォン討伐~

 レオネス達、剣の魔術師ウィザーディング・ブレイド一行はゴジョーの都を活動拠点としていた。

 ゴジョーの都とは、B、A、Sランクなどの中堅から上級の冒険者が集う町である。

 センジを仲間に加え、ミレスとルナリスがAランクに、レオネスがSランクに昇格したため、活動拠点をワンランク上の町へと移したのだった。


 そんなレオネス達は現在、ゴジョーの都で依頼を受け、目的地へと向かっていた。


「ふぅ~、山を登るだけでも結構疲れるね」


「ターゲットのダークグリフォンが生息しているのはもう少し上だ」


「はぁ~、この後にダークグリフォンとの戦いが待ってるのかぁ」


「これが俺たちの仕事だろう?」


「まあ、そうなんだけどね」


 山を登り、ダークグリフォンとの戦いが後に待っていることに憂鬱になるミレスにセンジが言葉を掛ける。

 ダークグリフォンとは、名の通り、闇のように黒いグリフォンである。


 レオネス達は山から家畜をさらうダークグリフォンの討伐のためにサジフの山を登っていた。


 不意にレオネスが屈み、地面を見つめる。


「どうかしたんですか?」


「おや、ついに足腰が限界かな?」


 不思議に思うフェレティスと茶化すルナリス。


「グリフォンの足跡だ、近いところまで来たな」


 地面のくぼみを観察したレオネスは、それがグリフォンの物だと判断する。

 翼を持つグリフォンだが、その巨体ゆえに飛ぶためには助走が必要であり、巣の周辺は地面を歩いていることが多い。


「だいたい、俺がこのメンバーで一番強いんだぞ? 俺の足腰がヤバい事になってるんなら、お前はもうヘロヘロだろ、触手水蛇テンタクルヒュドラの時みたいにな」


「くっころ!」


 意地悪な笑みを浮かべ、ルナリスに言い返すレオネス。

 触手水蛇テンタクルヒュドラとの戦いで痴態をさらしたルナリスは赤面して黙るしかなかった。

 ついでに、触手水蛇テンタクルヒュドラにやられたミレスとフェレティスも無言になっていた。


「巣が近い、遊びはその辺にしておけ」


「おう……」


「はーい……」


 ダークグリフォンの巣に近づき、センジに注意されるレオネス達。


「お留守のようだな」


 ダークグリフォンの巣に到着するが、巣の中は空であり、食べられた家畜の骨が転がっているだけであった。


「! 後ろだ!」


 レオネスの言葉に全員が左右に散り、ダークグリフォンの強襲をかわす。

 レオネス達が巣を訪れたのと、ダークグリフォンが巣に帰って来たタイミングが重なり、背後からダークグリフォンに強襲されることとなってしまった。

 ダークグリフォンの強襲により、レオネス達は散り散りちりぢりになり、陣形を組めずにいた。


「先手を取られたか、このまま二手に分かれて倒すぞ!」


「おう!」


 ダークグリフォンの強襲を左右に分かれて回避したため、右側に避けたレオネス、ミレス、フェレティスと左側に避けたセンジ、ルナリスの二手に分かれていた。

 二手に分かれたのを利用し、レオネス達はダークグリフォンの左右に展開してダークグリフォンを挟み撃ちにする。

 ダークグリフォンは挟み撃ちを回避するために後方に飛び退き、レオネス達を正面に見据える。


「頭のいい奴だ。だが、これならこっちも陣形を立て直せる」


 アタッカーのレオネスとタンクのセンジが前衛に着き、ミレスが中衛、ルナリスとフェレティスが後衛に着く。

 陣形を整えるレオネス達に、ダークグリフォンは翼を広げ、レオネス達に魔力を帯びた羽根の弾丸を撃ち出す。


「そう簡単には当たらないわよ」


 撃ち出された無数の羽根の弾丸はルナリスの二挺拳銃により撃ち落とされる。

 さらに、羽根の弾丸の隙間を縫って放たれたフェレティスの狙撃銃による銃撃はダークグリフォンの翼へと直撃する。

 右の翼にダメージを負ったダークグリフォンは、羽根の弾丸を止め、突進を行う。

 遠距離攻撃から近距離攻撃へと切り替えたのだ。


「こっちだ!」


 スローイングダガーを投擲し、ダークグリフォンの突進を引き付けるセンジ。


 中衛と後衛のミレスたちは距離を取り、レオネスは上空へ跳躍する。

 ダークグリフォンの突進をやり過ごし、追撃の爪撃を大剣で防ぐセンジ。

 センジがダークグリフォンの攻撃を受けている間に、上空へ跳躍したレオネスは剣を構え、ダークグリフォンの後頭部を狙う。

 剣を逆手に持ち、落下の勢いを乗せ、ダークグリフォンの頭へ剣を突き立てようとするが、ダークグリフォンの動きが激しく、狙いが反れ、レオネスの剣はダークグリフォンの背中へと突き刺さる。

 突如、背中を襲う激痛にダークグリフォンは飛び上がり、背中の異物を振り払わんと身体を大きく揺すり、暴れる。

 レオネスは暴れるダークグリフォンに掴まり、剣をねじ込み、傷口を広げ、さらなるダメージを与える。


「出番だぞ」


「わかってる」


 暴れまわるダークグリフォンから離れ、ミレスに声を掛けるセンジ。

 センジがダークグリフォンを引き付けている間に詠唱を行い、魔法の準備をしていたミレスはダークグリフォンへ向けて魔法を放つ。


「行くよレオネス! フレイムジャベリン!」


 ミレスは炎の槍を放ち、放たれた三本の炎の槍の一本は暴れまわるダークグリフォンの胴体へ突き刺さる。

 ミレスの合図を聞き、ダークグリフォンから離脱するレオネス。

 レオネスが離れると、ミレスは追加の呪文を唱える。


「“爆ぜろ”!」


 ミレスの追加呪文でダークグリフォンへと突き刺さった炎の槍が爆発する。

 突き刺さった炎の槍が爆発したことで、体内にもダメージを負ったダークグリフォン。


「これで、トドメです!」


 動きの鈍ったダークグリフォンの脳天を狙撃銃で撃ちぬくフェレティス。

 頭を撃ちぬかれたダークグリフォンは地面に倒れ、動かなくなる。


「よーし、やったな!」


 ダークグリフォンの討伐に成功したレオネス達は巣を焼き払う。


「こっからが大変なんだよなぁ……」


 レオネスとセンジはダークグリフォンを担いで運ぶ。

 ダークグリフォンの素材を活用するため、ダークグリフォンの死体を持ち帰る必要があるからだ。


「私も風魔法で手伝ってるんだから、頑張ってよ」


 ダークグリフォンの巨体をレオネスとセンジの二人で運べているのは、二人が力持ちというのもあるが、ミレスがダークグリフォンの下部で風魔法を起こし、重量を軽減しているからだ。

 ルナリスとフェレティスは分担して、ダークグリフォンを運んでいるメンバーの荷物を運搬している。


魔法の小袋マジックポーチに入る台車を誰か作ってくれ~」


「そんなものがあっても重量は据え置きだぞ……」


ふもとまでもう少しよ」


 山のふもとにはダークグリフォンの死体を運搬する台車と、それをギルドへ運ぶギルド職員が待機していた。


「ご苦労様です、あとは我々が」


 台車までダークグリフォンを運搬し、ギルド職員に引き渡したレオネス達。


「俺たちも帰るか」


 依頼を終え、レオネス達も報酬を受け取りに、ゴジョーの都へ帰るのだった。

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