第32話 巨獣討伐 ~ギガントハント~ (上)

 ダークグリフォンを討伐し、ゴジョーの都のギルドへ帰って来たレオネス達。


「こちらが報酬です、お確かめください」


 報酬を受け取り、金額を確かめるレオネス。


「50,000Gゴールド、確かに」


「あと、センジ様とフェレティス様はランクアップとなります。おめでとうございます!」


 センジはAランクに、フェレティスはBランクに昇格した。


「やった! やりましたよレオネスさん!」


 自分のギルドカードを見せ、得意げにするフェレティス。


「ああ、やったな」


 耳を倒し、促すような目でレオネスを見るフェレティス。

 察したレオネスはフェレティスの頭を撫でる。


「俺の頭も撫でるか?」


「やだ、おめぇ、気持ちわりぃ……」


「なんだこの扱いの差は!?」


「原因は年齢と性別、かな」


 同時に昇格したセンジがおどけるが、帰って来たのは冷ややかな目線だった。


「今回の昇格で剣の魔術師ウィザーディング・ブレイドのクランのランクもAランクとなります」


 センジの発言をなかったことにして、ギルドの受付嬢は言葉をつづける。


「Aランク、か……」


 レオネスは呟く。

 かつてレオネスが所属していたクラン『野を駆ける牙獣ワイルドファング』も期間は短いが、Aランクのクランであった。

 かつてのクランを思い出し、そして頭を横に振るレオネス。


(もう、野を駆ける牙獣ワイルドファングのことはいい、俺は剣の魔術師ウィザーディング・ブレイドだ)


「ところで、相談なんですが」


 受付嬢が言葉をつづける。


「強力な冒険者を必要としている依頼クエストがあるのですが、剣の魔術師ウィザーディング・ブレイドの皆さんも受注してくださいませんか?」


「どんな依頼です?」


「それは……」



◇◇◇



「現在、ナシチナの町に巨大魔獣ギガントモンスター巨大蛇竜ギガントヴルム大蛇竜リンドヴルムの群れを率いて進行中である。我々の任務は此処ここ、ヌンガ渓谷で迎え撃ち、最終防衛ラインであるロックスの砦までに巨大蛇竜ギガントヴルムを討伐ないし撃退する事である!」


 ギルドの会議室で今回の作戦の説明をする王国騎士と、それを聞く作戦に参加する冒険者たち。


「各員の配置については現地で伝える。質問がある者はいるか?」


 手を上げる冒険者はいなかった。


「ふむ、ではこれで作戦会議を終了する。各員健闘を祈る」


 作戦会議を終了し、冒険者たちは装備を整え、ロックスの砦へ向かう馬車に乗る。


剣の魔術師ウィザーディング・ブレイドの皆さんはこっちですよ」


 ギルド職員に案内され、レオネス達は馬車に乗り、ロックスの砦へ向かう。


「しかし、巨獣討伐ギガントハントとはな」


 センジが口を開く。


巨獣討伐ギガントハントなんて話に聞くだけだったが、自分たちがやる立場になるなんてな」


 レオネスも馬車の窓から外を眺めながら、誰に言うでもなく呟く。


 レオネス達、剣の魔術師ウィザーディング・ブレイドが受けた依頼クエスト巨獣討伐ギガントハントと呼ばれる特殊依頼であった。

 巨獣とは巨大魔獣ギガントモンスターの事であり、巨大魔獣ギガントモンスターとは、魔力により異常発達し、巨大化した魔物の事である。

 今回のターゲットは大蛇竜リンドヴルムと呼ばれるドラゴンの一種が巨大化した巨大蛇竜ギガントヴルムと呼ばれる巨大な魔物である。

 それが現在、大蛇竜リンドヴルムの群れを率いてナシチナの町に向かって移動していた。

 小さな山に匹敵する大きさの、動く城塞と呼んでも過言ではない巨大蛇竜ギガントヴルムが町に到着すれば、町は壊滅状態になるため、最終防衛ラインであるロックスの砦までに討伐か撃退するというのが、今回の目的である。


 馬車の中は静寂に包まれていた。

 初めての巨獣討伐ギガントハントで緊張しているということもあるが、各々、頭の中でどうやって巨大蛇竜ギガントヴルムを倒すか考えていたのだ。


 馬車に揺られること30分、目的地であるロックスの砦に到着する。

 既に数台の馬車が到着しており、王国騎士団や他の冒険者クランが迎撃の準備を進めていた。


「おお、来たか。君たち剣の魔術師ウィザーディング・ブレイドはヌンガ渓谷の前線で戦ってもらおうと思っている。詳しい事はこの後の最終作戦会議で伝える」


「分かりました」


 王国騎士の話を聞いたのち、レオネス達も弩や迫撃砲の準備を手伝う。


「みんな集まってくれ、最後の作戦会議を行う」


 王国騎士団、冒険者たちは砦の広場に集まり、作戦実行前の最後の作戦会議を聞いていた。


七色の道標ビフレスト剣の魔術師ウィザーディング・ブレイドはヌンガ渓谷の前線で戦ってもらう。出来るだけ取り巻きの大蛇竜リンドヴルムを減らしてくれ。可能であれば、巨大蛇竜ギガントヴルムにダメージを与えてくれれば助かる。だが、無理はするなよ。死んでしまっては元も子もないからな」


 レオネス達、剣の魔術師ウィザーディング・ブレイドと、もう一つの冒険者クラン、七色の道標ビフレストには、巨大蛇竜ギガントヴルムの取り巻きである大蛇竜リンドヴルム討伐の役割が与えられる。


勝利の女神の剣フレイヤ・ソーズと、我々、バルドリン隊はこの砦で巨大蛇竜ギガントヴルムを迎え撃つ。弩、大砲、迫撃砲、穿撃針せんげきしん、この砦にあるすべての武装を以って巨大蛇竜ギガントヴルムを止める。」


 冒険者クラン、勝利の女神の剣フレイヤ・ソーズと王国騎士団・バルドリン隊はロックスの砦で巨大蛇竜ギガントヴルムを迎え撃つ役割を受け持つ。


「現在、増援で王国騎士団精鋭部隊ロイヤルナイツの一部隊がこちらに向かっている。だが、増援が間に合うとは限らない。我々で仕留めるつもりで事に掛かるように。我々の後ろにはナシチナの町があることを忘れるな。以上だ、質問のあるものはいるか?」


 冒険者たちは誰も手を上げない。


「ふむ。では解散! 各員の健闘を祈る!」


 剣の魔術師ウィザーディング・ブレイドと、七色の道標ビフレストは先行してヌンガ渓谷へ移動する。


「俺たちは右側から攻撃する。そっちは左側を頼むぞ」


 七色の道標ビフレストのリーダー、クラースがレオネス達に言う。


「分かった、お互い頑張ろうぜ」


「ああ」


 剣の魔術師ウィザーディング・ブレイドと、七色の道標ビフレストはそれぞれ左右に展開し、巨大蛇竜ギガントヴルム大蛇竜リンドヴルムの群れを迎え撃つ。


 地響きと共に、山を思わせる巨体を揺らし、一歩一歩ゆっくりとだが、確実に近づいてくる巨大蛇竜ギガントヴルム


「私たちはアレに勝てるんでしょうか……」


 1000メートルを超える巨体を前に弱気になるフェレティス。


「大丈夫だ、過去に討伐された記録もあるんだ。奴は人間が倒せる!」


 弱気になるフェレティスを鼓舞するレオネス。


 ロックスの砦から作戦開始の狼煙のろしが上がる。


「行くぞ!」


 巨大蛇竜ギガントヴルム討伐の幕が開ける──

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