第33話 巨獣討伐 ~ギガントハント~ (中)

「この数だ、乱戦は避けられない。自分の身を守りつつ、各個撃破だ!」


「了解!」


「はいです!」


「ええ!」


「承知!」


 レオネスの指示に剣の魔術師ウィザーディング・ブレイドのメンバーは武器を構え、戦闘を始める。

 レオネスとセンジは剣を構え、大蛇竜リンドヴルムの群れに突撃、ミレス、ルナリス、フェレティスは中距離から大蛇竜リンドヴルムの群れを攻撃する。


 大蛇竜リンドヴルムは翼を持たないドラゴンのため、地を這って移動している。

 レオネスは跳躍し、上空から地を這う大蛇竜リンドヴルムの頭を剣で刺し貫き、絶命させる。


「まずは一体だ!」


 早速、大蛇竜リンドヴルムの一体を葬るレオネスだが、大蛇竜リンドヴルムの群れの数は20体を超えていた。

 さらに、この数は剣の魔術師ウィザーディング・ブレイドが担当している大蛇竜リンドヴルムの数なので、巨大蛇竜ギガントヴルムを挟んで反対側で戦っている七色の道標ビフレストの分も入れると、その総数は40体を超える量となる。


 巨体ゆえに緩慢な動きの巨大蛇竜ギガントヴルムの行進に大蛇竜リンドヴルムの群れも動きを合わせ、決して速い速度では移動していないが、それでも、20体を超える大蛇竜リンドヴルムの行進に巻き込まれれば、下敷きとなり、蹂躙され、ただでは済まない。

 そのため、大蛇竜リンドヴルムの群れとの距離感を誤れば、あっという間に命を落とす危険性があった。


「くっ! 少々マズいか!」


 センジは大蛇竜リンドヴルムの攻撃を大剣を盾にして防ぐが、大蛇竜リンドヴルムの重量に押され、片膝を突く体勢となっていた。

 このまま大蛇竜リンドヴルムに押し倒されてしまえば、大蛇竜リンドヴルムの行進に巻き込まれ蹂躙されてしまう可能性がある。

 今の体勢でも十分危険であり、一体の攻撃を防ぐのに精いっぱいで、横や後ろはがら空きであった。


 大剣を盾に踏ん張っていたセンジだが、急に大蛇竜リンドヴルムの力が抜けたので、大蛇竜リンドヴルムを投げ飛ばす。


「大丈夫か!?」


「ああ、助かった!」


 センジにし掛かろうとしていた大蛇竜リンドヴルムは、背後からレオネスの剣戟を受け、絶命したのだった。


「集団戦で乱戦だ、気を付けろよ!」


「ああ!」


 前線で大蛇竜リンドヴルムを斬り、蹴散らすレオネスとセンジだが、数が多く、大蛇竜リンドヴルムの通過を許してしまう。


「簡単には通さない!」


通過してきた大蛇竜リンドヴルムをミレスたちが攻撃し、数を減らす。


「水よ、敵を斬り裂く刃となれ! アクアブレイド!」


 ミレスは水魔法・アクアブレイドを発動させ、大蛇竜リンドヴルムを攻撃する。

 アクアブレイドは、高圧の水を放出し、敵に斬撃ダメージを与える中級魔法である。


「長期戦だから、魔力を温存しながら戦わないと……」


 魔法使いのミレスはもちろん、自身の魔力を弾丸として撃ち出すルナリスも魔力の残量に気を付ける必要があった。

 また、自身の魔力を用いないとはいえ、フェレティスの魔法銃にも弾数は存在し、ペース配分を考えながら戦う必要がある。


「結構、硬いですね……!」


 狙撃銃で大蛇竜リンドヴルムの頭部を狙うフェレティス。

 上手く頭部を撃ち抜く事が出来れば、一撃で倒す事が出来るが、大蛇竜リンドヴルムも攻撃をかわすべく、動き回るので、なかなか頭部に命中させる事が出来なかった。

 しかし、頭部に当たらずとも、身体に命中させることは出来ていた。

 だが、身体は鱗に守られ、威力の高い狙撃銃を以ってしても一撃必殺とはいかなかった。


「結構、仕留めたつもりだが、数が減ってんのか、これ?」


 レオネスは大蛇竜リンドヴルムの眼や頭部、鱗に覆われていない腹部など急所を狙って、的確に大蛇竜リンドヴルムを撃破していた。

 センジもまた、大剣の重量を活かし、渾身の振り下ろしにより、鱗を砕き、骨を断ち、大蛇竜リンドヴルムを撃破する。


「向こうも、上手くやってるみたいだな」


 歩を進める巨大蛇竜ギガントヴルムの足の隙間から僅かに見える反対側の光景を見て、レオネスは呟く。


 剣の魔術師ウィザーディング・ブレイドと共に大蛇竜リンドヴルムと戦う七色の道標ビフレストは、剣の魔術師ウィザーディング・ブレイドより一つ上のSランクのクランであり、メンバーもSランクやAランクの強者が揃っている。

 竜騎士クラースをリーダーに、黒魔剣士ノクス、炎の巫女ティファ、魔剣使いマリー、弓使いのヘレネーディアの五人で構成されたクランである。


「競ってるわけじゃないが、やっぱり負けたくないな……!」


 レオネスは剣を右腰の辺りに持っていき、構えを取る。


「アルハザード流奥義の壱! 闘牙竜破斬とうがりゅうはざん!」


 かつて、エビルファングの魔物との戦いで放った、アルハザード流の奥義の一つ、闘牙竜破斬とうがりゅうはざんを放つ。

 極限まで高められた闘気は斬撃の奔流となり、大蛇竜リンドヴルムを薙ぎ払う。


「こっちの露払いは出来たが、……くっ!」


 大蛇竜リンドヴルムの群れの全滅には成功したが、巨大蛇竜ギガントヴルムのロックスの砦への接近を許してしまう。


 中距離で戦っていたミレスたちの元へ駆け寄るレオネス。


「ミレス、ルナリス、フェレティス、お前たちはロックスの砦へ行け」


「私たちだけ避難しろってこと!?」


 レオネスの言葉に抗議するミレス。


「そうじゃない、ロックスの砦から巨大蛇竜ギガントヴルムの頭を集中攻撃しろってことだ」


「あ、そういうこと」


 巨大蛇竜ギガントヴルムがロックスの砦へ到着するのは時間の問題だった。

 もはや、迎え撃つしかない。

 前衛が足止めし、後衛が集中攻撃する。

 レオネスはそう考えた。

 七色の道標ビフレストのクラースも同じ考えのようで、クラースとノクスの前衛を残し、残りの三人はロックスの砦へと後退する。


「さて、俺たちの底力、見せつけてやろうぜ!」


 クラースがレオネス達に声を掛ける。


「ああ、頼りにしてるぜ、冒険者の先輩!」


 レオネスがクラースに返す。


 ロックスの砦へと到着した巨大蛇竜ギガントヴルムは、自身の進路を阻む壁を破壊せんと、攻撃態勢を取る。


 ここに人間と巨獣の最終決戦が始まる。

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