第5話嫌な女
明くる日の放課後。俺は直人に昨日の出来事を説明して、一緒に恋愛部へついて来てもらうことにした。
「いまだに刀鬼の話がちゃんと頭に入ってないんだけど、昼休みに言ったこと、本当か?」
「本当だ。だいたい、あんな意味わからん嘘つく必要ねーだろ」
「まあ確かに……」
恋愛部の部室へ向かう途中。直人は俺の話をあまり信じてないようで、疑心になっている様子だ。でもま、当然のことか。俺だって「学校一の美少女がお前の恋愛相談にのってくれる」なんていきなり言われたら、妄言だと思い込む。
ていうか俺だって未だに信じられない。あの篠原が恋愛部なんて意味のわからない部活動を設立していて、しかもその内容が人の恋を叶える部活動なんて。もしかして直人の恋を叶えてやりたい俺が作り出した幻想なんじゃ。最悪、昨日の教室に向かったらそこには何もありませんでした。なんて怪奇現象も……。
隣のこいつが不安にさせてくるから、俺まで意味のわからない考えが脳を巡り出す。不安な気持ちを抱えたまま、俺たちは昨日の教室に到着する。
「おお、本当に恋愛部って書いてあるな」
昨日の場所にはしっかりと恋愛部の教室があり、一先ずホッとする。直人は驚いているが、驚くのはまだ早い。教室の前で棒立ちしている直人をどかすと、扉を二回ノックして中に入る。
「よう」
綺麗な所作で本を読んでいる篠原に軽く挨拶をすると、「こんにちは」と返ってきた。
「本当に篠原だ……」
後から入ってきた直人は、篠原がいることにまたしても驚いている。こいつは今日ずっと驚いてるなと半ば呆れていると、篠原は短く。
「掛けたら?」
ソファーに目を向けて言ってくる。それじゃあ遠慮なくと、俺たちは篠原の対面に座る。俺たちがソファーに座ると、篠原はパタンと本を畳み、床に置いてある自身の鞄からワックスとグラサンを取り出し机に置いた。
いきなり出された奇妙なものに、俺と直人は混乱する。
「えっと、何だこれ?」
目の前に出されたものの意味が理解出来ずに質問すると、篠原は俺のことをバカにするよう笑い。
「これはワックスとサングラスよ。そんなことも知らないなんて、もしかしてお姫様?」
いきなり皮肉をかましてくる。なんて嫌な女だ。
「ちげーよ! なんでこんなのものを取り出したんだっていう意味だ」
「あぁ、なるほど……」
全く察しの悪い奴だなと思うが、もしかしたらわかった上で俺を貶してきたんじゃないのか? だとしたらこいつ、相当性格が悪いな。こんな奴に相談して本当に大丈夫か? 今更不安に思いつつ、篠原は自分の考えを説明し始める。
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