第20話悪口
ハム子と金剛先輩が付き合った翌日。昨日の体育館での一件は瞬く間に全校生徒の耳へ届き、この日1日はずっとその話題で持ちきりだった。
「ねぇねぇ聞いた。あの金剛先輩があの
「あー聞いた! なんで? どう考えても釣り合わなくない?」
「なんでも、土下座までしたとか」
「何それウケる〜」
「しかも、篠原さんが土下座させたって」
「えー何それ。どう言う意味?」
「知らなーい。つーかあの人いつも寝てるけど、ちゃんと会話とかできたんだ」
「はは、美希ひどーい。篠原さんに聞こえちゃうよ〜」
「いいよいいよ。どうせ寝てるから聞こえないっしょ!」
「ギャハハ、ちょーウケるー」
おいおいすげーな女子の会話。あんな堂々と悪口言えるメンタルに尊敬すら覚えるわ。篠原はいつも寝たふりをしているって言ってたし、きっとこの会話も聞こえてるんだよな……。
俺はそーっと篠原の方を見ると、寝ていながらものすごい貧乏ゆすりをしている。
うお〜マジギレしてるじゃん。え? なに? 俺あの人と放課後過ごさなくちゃいけないの? やなんだけど。女子の陰湿な悪口とか聞きたくないんだけど。でもまあ篠原だし、意外と寛容で女子の悪口なんか水に流したり…………。
「非常に不愉快だわ」
部室に来てソファーに座ると、いの一番に苛立った様子で言ってきた。
「なんなのあの人たち? なんでいちいち聞こえるところで悪口を言う必要があるの? しかもそれを共有して話のネタにするなんて、よっぽど陰湿で暗いコミュニティなのね」
苛立っている篠原は、ものすごい貧乏ゆすりをしながら俺へ愚痴ってくる。
「どうせそんなことでしか盛り上がれないのだから、きっと薄っぺらい関係なのよ。それでうっかり身内の悪口を言って、気づいたらボッチになってるパターンね」
篠原はだんだんヒートアップしていき、最終的に両手の拳をギュッと握ると、机にドン! と拳を叩きつけ。
「駆逐したい……」
殺意のこもった声で言った。こいつならマジでやりかねんとか一瞬思ってしまい、俺はまあまあと篠原を宥める。
「まあ別に気にすんなよ。女子高生なんて悪口とコイバナが大好きな年頃なんだし」
俺が気を使って篠原を落ち着かせようとするが、篠原は俺の方を睨みつけると、標的を変更してきた。
「何その『俺最近の女子高生事情詳しいです』みたいな感じ。酷く腹立たしいのだけれど。普段女子と接点ないのだから、あまりしゃしゃり出てこないでくれるかしら」
イラァときて、こいつが女じゃなかったらぶん殴ってやるのにと思った。もうこいつのことなんか知るか。俺は今朝方篠原の悪口を言っていた女に加担するよう、目の前の性悪女の悪口を言ってやる。
「うるせーよぼっち女。お前昼とか教室にいねーけど、どうせ便所で飯食ってんだろ。臭いんだよ!」
「は? 証拠はあるの?」
「いやないけど」
「証拠もないくせに適当な事ばかり言わないでくれる? 訴えるわよ」
「うるせぇ。お前が怒って言い返してくるのが証拠だ。図星なんだろ!」
ギャイギャイとみっともない言い争いをしていると、勢いよく部室の扉が開かれ、銀髪オカッパ頭の男か女か分からない抽象的な顔立ちをした生徒が、部室へ入ってきた。
「やあやあ恋愛部の皆さん! 早速で悪いけどこの
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