第55話正攻法
「本当に戻ってきた……。一体どう言うことだ?」
「さっき私が米太郎くんの前に携帯を落としたでしょ。その時、彼に見せた文よ」
状況の理解が出来ていない新藤くんに、私は携帯の画面を見せる。すると彼は、ゆっくりと私の携帯に綴られた文を読み上げる。
「『後で来て』って……。なるほど、よくあの一瞬で思いついたな」
新藤くんがいつものように私へ感心するので、当然と言わんばかりにドヤ顔をする。やはり私は天才なのだと気持ちよくなりつつも、本題へ移行する。
「それじゃあ早速本題へ移りましょう。まあ色々と考えたんだけど、結局普通に行くのが一番手っ取り早いと私の中で結論づけたわ」
当たり前のように言うが、二人は首を傾げて要領を得ない様子だ。そんな私の言葉に対して疑問を抱いた新藤くんは。
「えーと、お前の言う普通ってなんなの? 人と価値観がズレまくってるお前の普通が俺には理解できないんだけど」
いきなり失礼極まりないことを言われた気がしたので反論する。
「失礼ね。私は至って普通の一般人となんら遜色無い価値観を持ち合わせているわよ。むしろズレてるのはあなたの脳みそとか顔の配置じゃない?」
「おい、それは遠回しに俺の顔を貶してるのか?」
「遠回しじゃなくて直球で貶したつもりだったのだけど」
「なんなのお前? 別に俺の顔はズレてねーよ! 至って平均なはずだ」
「かわいそうに、自分を客観視できていないのね」
「なんだよその目線。だいたいお前だって……」
「何よ? こと顔に関して、あなたが私に反論できるとは思えないけど」
「く、くそ……。この性悪美少女め……」
「ふっ、今日も勝ってしまったわ」
新藤くんを言い負かすのはいつもながら気持ちがいい。そんな悦に浸っていると、米太郎くんが苦笑いで聞いてくる。
「あの〜結局さっきの話はどうなったんですか?」
すっかり置いてけぼりにしてしまった米太郎くんをみて、先ほどの会話を思い出す。確か私が考えたアイディアの話だったわね……。
「まあつまりはね、普通にデートして好感度を上げてから告白する、みんながやってる方法でいきましょうってことよ」
私が説明すると、新藤くんが驚いたように。
「ここに来て正攻法!」
とツッコんでくる。相変わらずうるさい男ね。まあそんなこんなで、私たちの話し合いは先へと進んだ。
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