第56話デートプラン
「まずデートなんだけど、新藤くんはもちろん、私も異性とデートをしたことがないのよね……」
当然のように決めつけると、新藤くんは不満そうにしながらも言い返してはこない。どうやら私の予想通り、デートはしたことがないようだ。私は異性に関する知識が不足していることを米太郎くんに伝えると、彼は愛想笑いを浮かべて。
「じゃあどうすれば……」
不安な表情を浮かべて聞いてくる。確かに頼りないことを言ってしまったかもしれない。でも私は、これでも普通の女子高生だと自負している。どこに行けば嬉しいか、異性に好意を抱くか、脳内のシミュレーションだけで十分だ。
私は想像力を限界まで働かせると、いくつかの答えを導き出す。それから二人に問いかける。
「二人に質問なのだけど、デートではどこに行くのが正解だと思う?」
質問すると、新藤くんが適当に答えてくれる。
「まあ王道なのは映画館とかじゃないのか?」
その答えを聞くと、待ってましたと言わんばかりに否定する。
「甘いわね新藤くん。付き合って長いカップルならその選択肢もありだけど、初デートで映画館は悪手もいいところよ」
「へー、なんで?」
「それはね、初回デートというものはいかに相手の好感度を上げるかの勝負だからよ。なのに二時間も時間を潰すなんて、愚の骨頂以外の何物でもないと思わない? 私が考える初回デートの答えとしては、”コミュニケーションを多く取れる場所”だと思うわ」
私が力説すると、新藤くんと米太郎くんは「おお」と感嘆の声をあげる。
「なるほど……。確かに、理に適ってる気がする」
話を聞いていた米太郎くんは、少しだけ考えるそぶりを見せると。
「じゃあ動物園とかがいいんでしょうか……?」
会話の続きそうな場所をあげたので、私は肯定する。
「確かに動物が好きならありかもしれないわね」
「じゃあ……」
「でも、動物が好きじゃない場合はなしね……。米太郎くん、あなたは知らないの? 意中の相手の趣味とかそういうのを」
一番肝心な個人情報を訪ねてみるが、米太郎くんは申し訳なさそうに俯く。
「すいません。中学から一緒なんですけど、あまり接点はなくて……」
知らないことを伝えられるが、なんとなくわかっていた。昼間の彼女の言動から察するに、米太郎くんは本当にただのクラスメイトで、それ以上でもそれ以下でもないのだろう。
慈愛の神マザーテレサも、「愛の反対は憎しみではない。無関心だ」という素晴らしい名言を残しているし、興味を持たれてないというのはかなり厳しい。でも普通に考えたら嫌われてるよりかはマシだと思うし、どうとでもなる。
とにかく、行動を起こさないことには始まらない。思い立ったが吉日というし、米太郎くんにはなんとしてでも動いてもらう。
「米太郎くん」
私は真剣にまっすぐ彼の瞳を見つめると、ヘタレな彼に言い切る。
「明日、彼女をデートに誘いなさい」
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