第31話全自動孕ませ機

俺が落ち込んでいると、佐藤が追撃するかのように。

「あの、どうしてそんなに気持ち悪いんですか……?」 

 ものすごい辛辣な言葉を放ってくる。あれ? さっきまでものすごく緊張してて気弱な感じだったよね。なんだか物凄い見下されてる気がするんだけど……。佐藤に罵倒され俺が落ち込んでいると、意外にも篠原は俺のことをフォローしてくれる。

「でも確かに気持ち悪い提案だけど、一理ある気がするわ」

 おお、篠原! 一回落としたくせに持ち上げるなんて、そんなのありかよ。え? 

 何この気持ち。もしかして俺、篠原のことが好きに……。

 俺が篠原のことを見直すと、篠原は下卑たものを見るように俺を見ると。

「それじゃあそこの”全自動孕ませ機”の案を実行しましょう」

 とんでもないことを言ってくる。

「おい、なんだその一人で少子化問題を解決できそうなモンスターは。変なあだ名をつけるな!」

 俺は抗議するが、篠原は無視する。

「それじゃあとりあえず、作戦を立てましょう」

 俺のことなど眼中にない様子で話を進める。てか本当にやんの? 自分で言っといてなんだけど、やっぱりまずいいんじゃ……。そう思っているのは俺だけではないらしく、篠原の横に座っている佐藤も不満と不安を露わにする。

「えっと、本気で新藤先輩の案をやるんですか? もっと別の方法はないんですか?」

 ウルウルと涙目で訴える佐藤。でも、篠原はそんな佐藤を勇気付けるように肩をポンと叩き。

「大丈夫よ、私を信じなさい。きっとうまくいくから」

 励ましの言葉を送る。だから誰だよこいつ。頼むからその優しさの一パーセントでも俺に分けてくれ。

 篠原に励まされた佐藤は、不満げな表情から一転して、グッと何かを決意した面持ちになると。

「私、篠原先輩のことを信じます!」

 今さっき会ったばかりとは思えないほど、信用しきった目をしていた。一体篠原の何に感化されたんだか。数分前に出会った人間にここまでの信頼感を寄せるなんて、佐藤がちょろいのか篠原がすごいのか知らないが、なんだかものすごい光景だなと思った。

 俺にはない才能だ。篠原に感心しつつも、俺は作戦の概要を聞く。

「それで、どうするんだ?」

 聞くと、篠原は佐藤に質問をする。

「えっと、そうね。とりあえず佐藤さん」

「はい!」

 篠原が佐藤の名前を呼ぶと、佐藤は嬉しさを隠そうともせず元気に返事をする。なんかものすげえ慕ってんな。一瞬で好感度カンストしてんじゃん。

「その、例の笹川くん。何か部活動とかに所属してたりする?」

「はい。サッカー部の部員です」

「そう。なら作戦はこうよ。私たち三人はいつもより早く学校へ登校する。それで佐藤さんは、朝練が終わった笹川くんに話しかけに行く。二人が話し合っている最中に、頃合いを見計らって新藤くんが佐藤さんのスカートをめくる。佐藤さんの下着を見てしまった笹川くんは、その日一日中佐藤さんのことを考えてしまい、放課後呼び出して告白する」

 長い説明を受けるが俺は納得できず、篠原の作戦に異議を申し立てる。

「ちょっと待ってくれ。なんで俺がスカートめくんだよ! これじゃあ変態じゃねーか」

「事実じゃない。今更スカートの一枚や二枚なんだっていうの?」

「おい! まるで俺が常日頃からスカートをめくっているかのような言い方はよせ。てか、お前がめくれよ。なんで俺なんだよ」

「嫌よ。そんなことしたら変な噂が立つじゃない」

「だったら俺だってやだよ!」

「文句の多い男ね。じゃあ後でじゃんけんするから、負けた方がめくる。それでいい?」

「まあそれなら……」

 しぶしぶ了承する。絶対に負けられない。もし負けたら、俺はこの学校で一生変態と罵られて生きていくことになるかも……。

 我ながらなんてリスキーな作戦なんだろうと思う。いや、作戦を立てたのは篠原だけど。

 篠原の作戦を聞いた佐藤は、緊張しつつも、篠原を信じたのか。

「それじゃあ先輩方。明日の朝、よろしくお願いします!」

 丁寧に頭を下げてきた。篠原はそんな佐藤に対して、ふっと微笑みつつ。

「えぇ。それじゃあ8時5分までに校門前集合で」

 集合時間を伝える。篠原の言葉を聞いた佐藤は。

「はい。それじゃあまた明日」

 もう一度「ありがとうございました」と頭を下げてから、部室を出て行った。

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