第74話期待のない舞台

 俺の名前は秋篠亮太。しがない映画監督だ。今日は娘が高校でやる演劇を観にわざわざ休暇を取って観にきた。でも聞いてみれば、娘は劇に出ず、なんでもナレーションを務めるとのこと。なら別にわざわざ休暇をとるほどのことでもなかったなと若干後悔しつつも、劇が始まるのを待つ。

 つってもまあ、ほとんど期待はしていない。所詮高校の文化祭。ましてや演劇部でもなんでもない、いわば本当の素人だ。期待しろってのが無理な話だ。

 だが台本を書いたのはこの俺な訳で、台本通りにやれば多少マシだろう。でもマシな程度で、観客を沸かすことなんてできやしない。劇の時間は三十分と言っていたが、この三十分が無駄に終わるのは分かりきっている。

 素人のヘッタクソな演技にイライラするかもしれない。やっぱり帰ろうかなと思った矢先、ビ ––––––––––––––––っと体育館中に大きな音が響き渡り、舞台の幕が上がった。

 

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