第11話成功
い……痛い……。まさか本気で殴られるなんて。頬の内側も切れてるし、なんで俺がこんな目に……。
頬に手を当てて抑えていると、篠原が近づいてきて手を差し伸べてくれる。
「良い演技だったわよ。あとは見守るだけね」
ふっとはにかむように笑みを浮かべる篠原に、俺は思わず心臓が高鳴る。ダメだダメだ。今は直人の事を見守らないと。
俺は篠原の手を掴むと立ち上がり、すぐさま二人が走っていった方へ駆けつける。
直人たちは路地を抜けたすぐ先に突っ立っており、二人して見つめ合っていた。何してんだ? 早く言わないと、柏崎の気持ちが冷めてしまう。
「あの……だ、大丈夫?」
「あ、うん……。ありがと」
甘酸っぱい雰囲気が二人の間に流れてる。いける。これはいける雰囲気だ。
「その、東堂くんだよね。隣のクラスの……」
「う、うん……」
ちょっとだけ気まずい雰囲気が流れる。何してんだ直人。早く告れよ!
俺がこんな思いをしてまでやってやったんだ。なんとしてでも成功させてもらわないと、俺が報われないだろ。
ギリギリと歯を噛み締めながら、俺たちは二人の行く末を見守る。
「あの、それでなんだけど……」
「うん……」
つ、ついに来るのか。てか、人の告白のシーンを間近で見るのなんて初めてだから、こっちまでドキドキしてきたな……。
俺は胸を押さえつけ、今か今かと直人の告白のセリフを待ち続ける。そしてついに、直人は大きく息を吸うと。
「柏崎夏帆さん。好きです、付き合ってください!」
よくあるありきたりな告白のセリフを吐いた。おお、真っ向勝負だ。これに柏崎はどう出る!?
直人に告白された柏崎は、頬を赤らめぎこちなく。
「わ……私でよければ……」
告白を受諾した。ほとんど勢いだけでごり押した告白だったけど、よかった。これで俺も報われる。俺が安堵の表情で二人を見ていると、隣で見ていた篠原はさっと元来た路地の方へ進むと。
「それじゃあ告白も成功した事だし、私は帰るわね」
あまり感情を表に出さず、それでもどこかホッとした様子で言ってくる。
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