第44話義妹
多くのオタクたちを発狂させたあの悪夢のような日から数日。残すところあと数十日で、なんと高校で二度目の夏休みだ。でも夏休みだからと言って何かあるのかと問われれば、何もない。
いつも通りグータラしてゲームしてたら、なんか知らんうちに終わってる。それが、俺の夏休みなのだ。でももしかしたら今回は……。ちらっと真正面で漫画を読んでいる篠原を一瞥する。
こいつと居れば、俺のつまらなかった夏休みも多少は面白くなるんじゃないかと期待してしまう。でも考えてみれば、俺はこいつの連絡先も家も知らないから、きっと一度も夏休みに会うことはないのだろうなと思い、もう少しで退屈な夏休みが始まってしまうことにちょっとばかし憂鬱になっていた。
ここ最近の学校生活は、なんだかんだ楽しいのだ。クラスの奴らとさもそれっぽい青春談義を交わすよりも、多少女子から嫌われても篠原といる方が俺は楽しいと感じていた。
そんな篠原は、読んでいた本をパタンと閉じると携帯をいじりながら俺につかぬことを質問してくる。
「そういえば、新藤くんの妹さんは今いくつなの?」
突然の意味不明な質問に、俺は困惑する。だって色々おかしいもん。俺はこいつに妹がいるなんて一言も言ってないのに、なぜそんなことを聞いてくる。というかそもそも、何故妹がいる前提?
「いくつも何も、存在すらしないからな……」
俺がそう返すと、篠原はものすごく驚いた様子で携帯を落とす。
「えっと……。あぁ、大丈夫よ。血が繋がってなくても妹としてカウントしていいから」
「なんで
はっきり妹も義妹もいないことを告げると、篠原は大層驚いた様子で。
「なん……ですって……」と、キャラに合わないような驚き方をする。
そんなに驚くことか? 別に珍しくないだろ、一人っ子なんて。俺は愕然としている篠原に、何故驚いているのかを問う。
「別におかしくねーだろ。だいたい、なんで俺に妹がいると思ってたんだよ?」
「いや、普通ラブコメの主人公なら妹、もしくは血の繋がりのない
なにその持論……。ものすごい決めつけに俺は驚いているが、そんな俺のことなど気にもせず、篠原は呆れた様子で大きくため息を吐くと。
「やめたら、主人公」
軽蔑したような眼差しを向けてくる。どうして妹がいないだけでこんなにも言われなくちゃいけないんだ。
「なんだよ主人公やめるって。そもそも、ラブコメの主人公の妹ってなんか好きじゃないんだよ。あいつらってなんか知らんけど、やたらヒロインと主人公をくっつけようと躍起になってるじゃん? あれが意味わかんないんだよ。多分現実だったら、兄貴の恋愛事情なんて妹にとってはどーでもいいだろうに」
俺が反論すると、篠原はやれやれとでも言いたげに首を横にふると。
「あなた、現実とフィクションの区別もつかないの? この前のキモオタと変わらないわよ」
全く論点が違うところでディスってきた。ほんとムカつくなこいつ。現実とフィクションの区別が付いてないのはお前だろ! と言い返したいが、俺は言わない。何故なら大人だからな。
俺は澄まし顔で「それは悪うござんした」と適当に返して、部室にある漫画を手に取り読み始める。
そんな俺の態度に少しばかり腹を立てたのか、篠原は続けてラブコメ談義に見せかけた俺への誹謗中傷をしてくる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます