第78話怒りと悲しみ
式を終え舞い上がるロミオですが、道の途中、親友のマキューシオとティボルトが一触即発の状態となっている場面に出くわし止めますが、仲裁も虚しく、マキューシオはティボルトの手によって殺されてしまいます。目の前で親友を殺されたロミオは怒り狂い、我を忘れてティボルトを殺害してしまいました。
ふと我に返った頃にはもう遅く、ティボルトを殺したロミオはヴェロナからの追放という処罰を受け、街から追い出されてしまいました。
一方ジュリエットはそんなことなど知らず、年頃の女の子のように舞い上がっていました。今宵はロミオとジュリエットが夫婦となった初夜なのです。次はいつ会えるのか、その知らせを乳母が持ってきてくれるのを、今か今かとジュリエットは待ち遠しにしています。
「ああ、待ちきれない思い。ばあやはまだなの?」
落ち着かない様子で乳母をまっていると、乳母が悲しい表情を顔に残して戻ってきます。
「ああ、ティボルト、ティボルト。あんなに良い方が亡くなられるなんて」
「ティボルトが亡くなる? ばあや、ロミオは?」
「ティボルトは死に、ロミオは追放です。ティボルトを殺したロミオは、追放となったのです」
「なんですって! ロミオがティボルトの血を流したの?」
「そうです、そうです、なんてことでしょう」
乳母からロミオによってティボルトが殺されたことを聞かされ、一瞬ロミオを恨みます。しかし、ロミオが追放されたことを聞くと、ジュリエットはティボルトのことなど忘れ、ひどく落ち込みます。
そして乳母は、これでもかとロミオのことをジュリエットの前で貶します。ひどい言葉の羅列に、ジュリエットは憤り、乳母がいなくなるとひどく恨めしい目を向け、この世の怒りをぶつけます。
「ああ、煩わしい、嘆かわしい、鬱陶しい!
どうして誰も彼も、私と彼の仲を邪魔するの? 神様はとても残酷だわ。一体私たちが、何をしたというの?」
怒りを漏らすジュリエットは、その日からひどく落ち込み、ベッドに籠るようになってしまいます。そんなジュリエットの様子をみかねたキャピュレット夫妻は、新しい生活を始めた方が立ち直るきっかけになると思い、良心からパリス伯爵という偉い身分の青年と結婚させようと、ジュリエットの承諾なしに、結婚の話を進めてしまいました。
静まり返る客席。もう誰も、目線を逸らさない。あの力強く、そして繊細で美しい演技から。ジュリエット役の嬢ちゃんの演技に、俺はすっかり虜となっていた。今のセリフは俺の台本にはなかったセリフなんだが、そんなことはどうでもいいと思えるほどに……。
見入った。長らく感じていなかった、劇への高揚を思い出すほどに。
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