第79話幕引き

 結婚の話を聞かされたジュリエットは、もちろん猛反発します。しかし、今まで従順だった娘がいきなり反抗的な態度をとったことに不快感を覚えたキャピュレット夫妻は、婚約を受諾しないのなら家を追い出すと言い、憤りました。

 周りにいる人間は誰もジュリエットの味方になってくれず、どうしたら良いのかわからなくなったジュリエットは、唯一ロミオとジュリエットの関係性を知っている教会のロレンス神父の元へ助言を請いにいきました。

 助言を求められた神父は、絞りに絞ってアイディアを出します。そのアイディアとは、ジュリエットを仮死状態にし、皆に死んだと思わせ、その後ロミオと二人で遠くの街で余生を過ごさせるというものでした。

 こんな作戦を聞いたジュリエットは、最初こそためらいましたが、他にいい方法もないので神父の言う通りに動くことを決めます。家に着くと、ジュリエットはキャピュレットへ結婚を前向きに検討すると言い、従順になったふりをします。

 みなが教会で心変わりしたジュリエットの姿を見て舞い上がるなか、ジュリエットは夜の寝室で一人、神父から渡された仮死状態になる薬を飲み込みます。翌朝ジュリエットの異変に気付いた乳母は、ジュリエットが息をしていないことに気がつき、盛り上がっていた家中は一転、暗いムードに包まれてしまいます。

 ここまで思い詰めていたことに気づけなかったキャピュレット夫妻は、強い自己嫌悪に苛まれ、街中ではジュリエットの死亡したニュースが流れました。

 ここまでは神父の狙い通りの展開になりました。あとはここで、ことの経緯をロミオに伝え、二人で逃げ出すことができれば作戦は成功します。

 しかし、神父がロミオの元へ手紙を送るために遣わした人間が疫病の疑いで足止めをくらってしまい、結果としてロミオの元へは、本当にジュリエットが死んだと言う訃報ふほうのみが伝わってしまいました。

 街を追放されたロミオは酷く悲しみ、ジュリエットと死を添い遂げるために毒薬を買い、キャピュレット家の霊廟れいびょうに忍びこみます。

 霊廟に忍び込んだロミオは、亡きジュリエットを見て酷く心を痛め、薬屋からもらった毒薬を取り出します。

「ああ、愛しいジュリエット、なぜまだそんなに美しい? まるで姿なき死神が恋に落ち、痩せこけた恐ろしい怪物となって、この暗闇に君を囲っているかのようだ。そうだといけないから、いつまでも君と一緒にいよう。

 この夜の帳の宮殿を、決して離れはしないぞ。我が恋人に乾杯!」

 そうしてロミオは毒薬を飲み干し、ジュリエットの隣で息絶えました。そしてそのすぐあと、仮死状態から復活したジュリエットは、横で倒れているロミオに気がつき、ロミオの後を追おうとします。

「これは何? 愛しい人の手に握られた盃は? 毒ね。これで永遠の別れを告げたのね。ああ、意地悪。全部飲み干して、あとを追う私に一滴も残してくださらなかったの? その唇にキスを。私を殺して、あなたのキスで」

 ロミオの口に接吻をするジュリエットですが、死ぬことはできず、ロミオの腰に差してある短剣を見つけ、剣を自らの胸に差し自決します。

 こうして二人の若者が凄惨な死を遂げ、二度とこんな自体を招いてはいけないとし、キャピュレット家とモンタギュー家の争いは、皮肉にも二人の跡取りの死によって無くなりました。

 太陽も悲嘆に沈んで表を上げぬ。かつてないほどの悲しみに至り。これぞ、ロミオとジュリエットの物語。




 

 パチパチと体育館に鳴り響く拍手の音。そのどれもが、あの舞台を褒め称えるものだと確信できる。本当に素晴らしいものを見たときに送る、賞賛の拍手。俺は手が腫れ上がるほど強く、賞賛を彼らに送る。

 

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