第45話 村から街、街から村へ!


 組合支部で素材と魔獣肉を売った俺達はその2日後にダーカ村を出た。温泉宿の女将サーラさんや村長ミレイさんにはもっと滞在して下さいと言われたが、俺とマユ、アヤカとライは安住の地を見つける為にもう少しアチコチを見たいと考えていた。勿論、この村も候補の1つになったが。


「色々とお世話になりました」


 俺は礼を言って頭を下げる。


「「「お世話になりました」」」


「また、いつでも戻ってきて下さいね」


 村長ミレイさんがウルウルでそう言う。そして、女将サーラさんが、


「ああ、タモツさんの逞しいアレともお別れなんですね…… ライさんの優しいアレとも……」


 などと、宣ったものだから、途端にマユからは般若の威圧、アヤカからは阿修羅の威圧が……


「だーっ! 待て待て! 無かったから、サーラさんが言うような事は一切無かったからっ!!」


 俺は慌てて否定した。


「アッ、アヤカッ! 僕はアヤカしか目に入ってないから! 女将さん、言って良い冗談じゃないです!」


 ライも慌てて否定する。すると女将サーラさんがコロコロと笑いながら、


 「あら、やだ。私の願望が口から出ちゃったわ」


 と、冗談だと告げた。するとマユとアヤカが顔を真っ赤にして、


「「女将サーラさんっ!!」」


 とハモる。そんな2人に、


「お二人とも、素晴らしい殿方に出会えて羨ましいですわ。私やミレイもお二人の様に素敵な殿方といつか出会いたいです。ウフフッ何時でもまたお越し下さいませ。お待ちしております。(愛人契約も…… )ボソッ」


 最後に少し不遜な言葉が聞こえたが、俺以外は気づかなかったようなので、スルーして、


「では、また。有り難う!」


「「「有り難うございました!」」」


 そうして、王都へ向けて旅立った。

  



 それから、2日かけて街についたが滞在は1日だけで直ぐに旅立つ。素材や肉は王都の組合でまとめて売ると決めたし、街はダーカ村よりも雑然として落ち着かなかった。

 その街から歩いたら5日掛かると言う村に俺達は2日で着いた。魔石爆馬鉱石ミスリルを利用して4足ゴーレムを2体作り、荷馬車を改造して乗用馬車を作成。最高時速80kmの技術の粋を極めたゴーレム車で快適に進んだのだ。

 けれども村の門番には悪い事をした…… どこの者とも知れぬゴーレムが攻めて来たと勘違いして、緊張して槍を構えていたのだが、村に入る前に停車して俺達が降りてきたのを見て腰砕けになっていた…… スマン……


「よっ、ようこそ、マシラ村へ。しかし、見事なゴーレムですな」


「ユグド様の通行証…… 流石はユグド様が認められた方々。この馬車の車輪も見た事がない……」


 ハイ・ゴブリンの2人の門番が頻りと感心してくれる。そして、


「もしも、余裕がおありならば、この村の錬金術師に講義でもしていただけませんか? 真面目な奴なのですが、今一つ成果が出てないのです」


 と頼んできた。そう言えば、この世界の錬金術師の技は見た事がないし、興味もある。


「ああ、講義なんかは無理だが、何かしらの刺激にはなれるかも知れないから、俺も会って見たいな」


「「おお、よろしくお願いします」」


 門番から頭を下げられ、1人が『宿まで案内します』と言ってくれたのでお願いした。ゴーレムと車は生活箱に入れた。


 案内された宿は温泉でこそ無かったが、和風の建屋で大浴場もある。女将さんの案内で部屋に行き、マユに


「早速、錬金術師に会いに行くけどマユも来てくれるか? 適応合成を知らなかったら教えてやって欲しいんだが」


 と聞くと、


「はい。私もこの世界の錬金術師さんに会って見たいです」

 

 と言ってくれたので2人で宿の前で待ってくれていた門番に案内をしてもらい、錬金術師の家に向かった。


「お~い、ラーナ~!居るか~?」


 門番が大声で呼ぶと、


「何よー! 私はまだ、耳は遠くなってないわよ!ザーサ!」


 奥からドワーフ? らしき女性が出てきた。


「はっはっー! ラーナは集中してたら大声で呼んでも聞こえないだろ! お客様をお連れしたんだ。ユグド様から信頼されている方々で、錬金術にも造詣が深い方だ。ラーナは最近、悩んでただろ? 良かったら別の錬金術を見てみるのも良いかと思ってな。お二方とも、了承して下さったから案内してきたんだ」


 門番ザーサがそう言うと、錬金術師ラーナは、


「あっ、えっと、この村で錬金術師をしています、ラーナです。亡父が人族で母がドワーフです。なので、一般的なドワーフよりは背が高いです。独身で恋人募集中です」


 いや、聞いてないし…… マユの目がつり上がり出したし……


「初めまして、ラーナさん。私はマユと言います。こちらがタモツで私の夫です。よろしくお願いしますね」


 マユの先制攻撃。ラーナは、


「マユさん、正妻様ですか? これだけ素敵な方ですから、私は何番目になるのかしら? でも、平等に愛して下さるなら何番でも私は良いわ」


 聞(効)いてねぇ~。いや、俺はマユしか愛してないし、無理です……


「お~い、ラーナ! ユグド様の信頼されている方々だぞ! 怒られるぞ!」


「ハッ! そう、そうでしたね! 失礼しました。その話はまた後程で!」


「「「しません!!」」」


 俺とマユ、何故か門番ザーサの声がハモった。

 

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