第10話 幻想《ファンタジー》は想像力。

 朝。時間は時計で確認出来る。この拠点を作った時にもちろん時計も一緒に作った。サーバインに確認したので色々と分かったのだが、こっちの世界は週という概念がないらしい。月と年はある。1ヵ月は26日で、13ヵ月で1年だ。数字の概念があって、1月、2月と地球と同じらしく、違いは13月がある事だ。

 時間は地球と同じで1日は24時間だ。しかし、正確な時間を気にしている人は少ないらしい。


 マユが起きてきた。風呂に入ったのだろう。癒しの効果も湯に含めていたので、肌荒れがかなりマシになっているな。ボサボサだった髪も艶が出ている。痩せているのはそのままだけど、かなり元気になったようだ。


「お早うございます。保さん。今日こそは教えて下さいね」


「ああ、お早う。マユ。良く眠れたようだな」


 俺がそう声をかけると、


「そうなんです。ベッドも心地好く体を支えてくれるし、何よりもお風呂が凄かったです。お湯が優しく体を包み込んでくれて、癒されてるような感じがあって」


「ああ~、薬湯だからな。肌荒れなんかも改善された筈だ」


 俺はそう答えながら朝食を出す。マユにはまだ胃に優しいスープとパンだ。勿論、俺も同じメニューだが。


「あっすみません。お手伝いもしないで」


「気にするな。この拠点でのルールを言っておこう。出来る奴が出来る事を気付いた時にやる。相手はそれを感謝する。それがルールだ」


 俺がそう言うと、マユは微笑みながら


「はい」


 と返事した。

 

 

 さてと、どういう風に説明したら良いだろうか?難しいな。取り敢えずマユに聞いてみる。


「マユは異世界を題材とした小説や漫画、ゲームなんかはした事があるか?」


「ゲームはないですが、両親が本好きだったので、小説は呼んだ事があります」


 うん、それじゃあ俺の能力の背景から説明したら理解してくれるかな?


「えーっとな、俺は49歳なんだけど幻想ファンタジーに触れたのは小学生の頃になるかな。そして、今もまだやってる人も多いと思うが、T-RPG(テーブルトークロールプレイングゲーム)と言うのがあってな。1人がマスターとして、舞台を用意する。そして、俺の時は友人3人とパーティーを組んでプレイヤーとしてマスターが用意した舞台をルールにのっとりプレイする。っていうのが流行ってたんだ。それ以降も色々な幻想ファンタジーに触れて親しんできたんだけど、そんな俺が見つけたのが、幻想ファンタジーは想像の世界だろ。地球から見て。つまり、想像の力が強いと創造出来る訳だ。想像力は創造力になる! という訳で、ここは異世界だ。俺やマユにしてみれば、幻想ファンタジー世界な訳だ。つまり、想像して創造出来る世界なんだ」 


 俺の話を聞いたマユの反応…… ポカーン? とした顔で見られた。この人の言葉が分かりませんって感じかな?


 それでも何とかマユは質問を絞り出してきた。


「えっ、ええとですね。保さん。言われてる事は何となくですが分かります。けど、私が読んだ小説なんかですと、転移した人は最初は何コレ? 的な能力が後からチートだったり、最初から凄い能力を持ってたりとかなんですが。想像で創造ですか…… ちょっと想像がつきません」


 うん、悪い意味で小説にとらわれてるなぁ。


「マユ、小説も作者の想像から創造された世界だよ。俺達は現実に異世界転移をしている。この世界は地球に住んでた俺達からしたら幻想世界だから、この世界のルールに縛られる事を止めると想像すれば、自分で創造出来るようになるんだ。それが、俺が見つけた幻想のルールだよ」


 と説明した。マユの瞳に少しだけ理解の光が灯ったように見える……

  

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る