第41話 森の中には村

 俺達は森をユグドに聞いた通りに進んでいた。


「そろそろユグドさんの言っていた村ですね」


 マユがそう言うと、アヤカが、


「そうね、楽しみだわ。どんな人達が暮らしているのかしら?」


「僕もハイレッカからは出た事がないから、ワクワクしてるよ」


 と、ライも楽しみにしてるようだ。そう言いながら更に歩くこと5分・・・村に着いたようだ。


 木で作られた柵に囲まれた場所に着いたからだ。そして、恐らくは門番だろう、2人の人が居た。

 1人はオーク、もう1人はゴブリンだと思う。但し地球で描かれている悪役顔ではなく、穏やかで澄んだ瞳だ。オークが俺達に声を掛けてきた。


「おーい、そこの4人の人。ここはランゲインの1の村、ダーカ村ですが何かご用かな?」


 マユ、アヤカは地球では魔物扱いのオークに穏やかに問い掛けられてビックリしているし、ライは初めて見る人間以外の人にコレまた驚いているようだ。俺はオークに答える。


「やあ、初めまして。俺達はハイレッカ王国から旅をしてきたんだ。王国ランゲインを見たくて。通行証はコレなんだが、通して貰えるかな?」


 と言ってユグドから貰った通行証を見せると、ゴブリンが、


「ユグド様の通行証!! 勿論、大丈夫です。どうぞ、何もない村ですがゆっくりと体を休めて下さい。ようこそ、ランゲインへ。旅の人達、歓迎します」


 と、驚きながらも笑顔で言ってくれた。


「有り難う。さあ、皆入らせて貰おう」

 

「「「はい。よろしくお願いします」」」


 と、3人も門番の2人に頭を下げて村に入った。村には色々な人が居るようだ。

 オーク、ゴブリン、コボルト、オーガ、と言った地球では魔物扱いされてる人達の他に、猫や犬に兎らしい獣人の人にアレはエルフかな? グラスランナーやノームらしき人も居る。村というが、中はかなり広いみたいだ。そうしてキョロキョロしていると、制服を着た兎獣人に声を掛けられた。


「ようこそ、ダーカ村へ。人族の方がこの村に訪れるのは数十年ぶりです。もし、ご都合が宜しければ村長に会って頂けませんか? 申し遅れました、私はこの村の警備を担当しております、ランカと申します」


 と、丁寧に頭を下げて言われたので、こちらも、


「俺達はハイレッカから旅をしてきた、俺がタモツで、隣にいるのがマユ。後ろの男女2人がアヤカとライといいます。そうですね、宜しければ村長さんにご挨拶したい。案内して頂けますか?」


 出来るだけ丁寧な口調を心がけて返答した。するとランカさんは花開いた様な笑顔で、


「はい、ご案内いたします。とても、人族の方とは思えない丁寧な対応を有り難うございます! あっ

スミマセン…… つい……」


「いやいや、謝る事はないですよ。何となくですが、分かります」


「いえ、やっぱりスミマセン」


 とランカさんは頭を下げた。


「では、御案内しますね。此方です」


 と、歩きだしたので俺達もゾロゾロとついていった。

 1軒の少しだけ周りの家より大きな家に着き、ランカさんが、


「村長、ハイレッカからの旅の方達をお連れしました~」


 と呼び掛けると、


 「はーーい!今、行きます」


 と女性の声で返答があった。それを聞いたランカさんは、


「それでは、私はこれで失礼します。どうか良い旅を!」


 と言って去って行った。そうして待っていると、ドタ、バタ、ガン、ドゴッ!と凄い音がしたあとに人が苦悶する気配が…… 思わずマユが、


「だっ、大丈夫ですか!?」


 と声を掛けると、


「だ、だ、だ、だい、大丈夫で~す~」


 あまり大丈夫じゃなさそうな声とともに扉が開いた。そこに居たのは銀髪をサラリと腰まで伸ばしたエルフの女性。しかし、美人な顔が苦痛で歪んでいる…… マユは、【技能:治癒】を使い女性を癒した。


「はっ! 有り難うございます。旅の方。足と腰の痛みが無くなりました」


 女性は満面の笑みで礼を言うと、


「ようこそ、ダーカ村へ。私が村長のミレイです。数十年ぶりの人族の旅人を私達は歓迎します。どうぞ、時間の許す限りゆっくりとして下さいね」


「有り難うございます。俺達は急ぐ旅じゃないので、暫くはゆっくりしたいと思います。それで、お聞きしたいのですが、宿屋はあるのでしょうか?」


「はい。村に1軒だけですが、温泉宿があります。御案内しますね」


 と気軽に案内しようとするので、俺達は慌てて


「イヤイヤ、村長さんに案内して貰うなんて、とんでもない! 道を教えて頂けたら自分たちで行きますから!」


 と言ったが、


「この村、平和で住人の皆さんも良い人ばかりで、私の仕事が無いんです~。案内位はさせて下さい~」


 半泣きになって懇願されてしまった……


「分かりました。よろしくお願いします」


 で、村長さんの案内で連れて来られた宿屋はとても立派な建物で、どうやら王都やこの先の街などからお忍びで王族や貴族が来ることもあるので村人総出で建てたらしい。


「宿代って一泊いくらですか?」


 俺は少し心配になって村長さんに聞くと、


「ご心配なく、ユグド様から既に頂いております」


 との返事が……


「「「「ええっーーー!!」」」」


 宿屋の前で俺達の声が木霊した。

 

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