第40話 さあ、ランゲインへ!

 俺達は1日、ゆっくりと休息をとり(何処かの夫婦はかなり励んだようだが…… 何故か、ライが落ち込んで、俺の方を見てくる…… 知るか!)、いよいよ今日、ランゲインへ向かう。


「取り敢えず、魔障の森との境界線まで行こう。そこにエルダートレントが戻ってたら、アヤカとライの通行証を貰おう」


「「「はい」」」


「道中の魔獣は向かって来たら狩る。来ない奴は無視して進むぞ。素材は今までに狩ったのがあるから、ランゲインで売れたら売ろう」


「タモツさん、買ってくれるのかな?」


 マユが聞いてくるが、俺も分からないので、


「う~ん? 食肉としても問題ない物ばかりだし、牙、角、爪、皮なんかは加工も出来るから買ってくれると思うけどな。それも、トレントに聞いてみよう」


 そう、ハイレッカの『旧』領都レイン『現』カイゼル侯爵領では売る暇もなかった為、実際に買ってくれるのかはランゲインに行って売ってみるしかない。しかし、トレントが居たら聞けば教えてくれるだろう。

 そうして、俺達は魔跋扈の渓谷を進み(途中、向かってくる魔獣を狩りながら)、森との境界までやって来た。


『お~、強い人。久しぶりだ』


 どうやらトレントは戻ってるようだ。良かった。


「久しぶりだな、ユグド」


『おや、君に名を名乗ったかな?』


「っと、すまん。前に会った時に、お前の情報を見させて貰ったんだ。」


『何ともはや…… 普通は読めない筈だけどなぁ。規格外だね、君は』


 呆れたようにトレント《ユグド》に言われてしまった。


『それで、其方の人達は? 確か、相方は1人と言ってたと思うけど……』


 問われた俺はハイレッカで起こった事を説明した。


『おお、そんな事があったのか! では、勇者達がランゲインへ侵攻する事は無くなったのかな?』


「一先ずは大丈夫だと思うぞ。ただ、行方の分からないミドリはいつか来るかも知れない。但し、侵攻じゃなく、【アレ】に強い男漁りに…… それと、消えた元王女レインの今後の行動も不明だから、警戒は必要だと思う。」


『なるほど…… そうだね、タモツの言う通りだ』


「アレッ? 俺も名乗った覚えはないが?」


『豊穣神様から聞いた』


「あっ、そういう事か。それで、悪いけどこの2人、アヤカとライの通行証を貰えるか? もう1つ、渓谷で狩った魔獣の素材や肉はランゲインで買ってくれるかな?」


『ああ、そうか。タモツとマユの分しか渡してなかったね。分かった、2人の分もはい、コレ』


 と、あっさり渡してくれた。


「すんなり出してくれたけど良いのか?」


『豊穣神様の加護もある人だし、それに戦っても負けるしね』


 と笑いながら答えてくれた。続けて、


『魔獣の素材や肉はランゲインの冒険者組合か、商業組合なんかで買い取りをしてるよ。但し、牙、角、爪なんかは鍛冶組合が一番高値で、食肉は飲食組合が良いかな。今の王の治世で組合が細かく別れたからややこしいかも知れないけど、看板もあるから大丈夫だと思う。文字は読める?』


「ああ、全員読めるよ。有り難う。それと、組合員じゃなくても買い取りはして貰えるのか?」


『渡した通行証が君達の身分を証明するから、それを見せれば買い取りに応じる筈だよ。身分証がない場合は応じないけどね。それと、1つ頼まれてくれないかな?』


「ああ、良いよ。何をすれば良い?」


『鍛冶組合に行くなら、コレを組合長のバズっていうドワーフに渡してくれるかな?』


 と言ってユグドは前に俺にくれた【古樹人の剛腕】と【古樹人の堅皮】を出した。


『そろそろ貯まってきたから、出さないと孫に怒られるんだよね~。あっ代金は振り込まれるから良いんだけど、君達に支払う分はどうしようか?』


 とユグドは言うが、


「報酬なんかは通行証で十分だよ。むしろ、こっちが払わないといけない位だろ。ってか、孫いるのね、そっちに驚いた!」


 と俺は返した。


『アハハ、そうだね。勿論、妻も居るよ。王の側仕えをしているよ。夫婦揃って悲しい宮仕えの身だよ……』


「それは御愁傷様」


『思ってないな~。口調に心が込もってない』


「ハハハッ、まあそれは勘弁してくれよ。其よりそろそろ行くよ。色々と有り難うな」


『ああ、此方こそ。それと、ようこそランゲインへ。歓迎するよ!』


「「「はい、有り難うございます!」」」


「それじゃ、また会おう。ユグド!」


『また、タモツ、マユ、アヤカ、ライ!』

 

 そして俺達はランゲインに入国した。

 

 

 


 

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