第12話 それから3年…… いや、3週間

 能力値や俺やマユの技能、『想像』について説明を続けて、身体に負担がかからない様に想像から創造する事を覚えてもらった。気付けば3年の月日が流れて…… いや、3週間が過ぎた。


「やった。タモツさん、異常が消えました!」


「おお~、思ったよりも早かったなぁ」


「栄養豊富なご飯のお陰です。有り難う、タモツさん」


 マユはガリガリだった身体が女性らしい柔らかなラインを取り戻し、笑顔も健康的で可愛らしさがアップしている。


「いやいや、最初の1週間は俺がメインで作ってたけど、後はほぼマユが作ってくれてただろ」


「それでも、です。タモツさんが居なかったらこんなに快適な生活は望めませんでしたし」


「まあ、今日はもう少し技能『想像』を訓練して、明日から古武術の鍛錬に入ろう」


「はい。あの、タモツさんの古武術って何方どなたかに習ったんですか?」


「ああ、5歳から18歳まで師匠に教えてもらった。免許皆伝はもらえなかったけどな」


 そう言えば、師匠はもう亡くなってるだろうなぁ……

俺が18歳の時に76歳だって言ってたし。最後に別れを言われてから31年にもなるんだな……


「……さん、タモツさん?」


 いきなり黙って回想に入った俺をマユが呼んでいた。


「おお、ゴメンゴメン。師匠の事を思い出してた」


「タモツさんのお師匠様って、どんな方だったんですか?」


「う~ん、見た目は痩せた爺さんだったな。ただ、強かった。結局、最後の手合わせでも1本も取れなかったし」


「ふわぁ~、そんなに強かったんですね」


「まあ、年季が違うと言えばそうなんだけど、俺も18歳でかなり動けてたから、あれはショックだった」


 そう、最後に師匠にはこう言われたな。

 

『5歳から10歳までの単調な稽古にもめげずについてきたお前さんじゃ。これからも基礎稽古を欠かさずにやっていけばワシよりも強くなるじゃろうよ。精進するんじゃな、保よ』


 まあ、あれからもどんなに忙しくても基本の歩方と無手、棒、杖、刀の型は必ずやってきた。それはこの異世界に飛ばされてからもだ。だから、経験は少しだけだが上がっている。


「タモツさん、流派名とかあるんですか?」

 

 とマユが聞いてきたので、


「ああ、あるぞ、古武術『流水』だ」


 と俺は誇らしげに答えた。 


「取り敢えず明日から基本の歩方からやって行こうな」


「ご免なさいタモツさん、『ほほう』って何ですか?」


 マユから聞かれてしまった……

 そりゃそうか。武術や武道、格闘技の経験なんてないだろうし、知らないわな。


「歩方っていうのは足捌きの事で、色んな流派が独自の歩方を持っている。応用できるようになる為に基本の足の進め方が決まっていて、それを歩方って言うんだ」


「それを先ずは覚えるんですね。大丈夫かな? 私は運動が苦手なんですが」


 とマユが心配そうに言うから、


「『流水』の歩方は身体を無理に曲げたりする訳じゃないから大丈夫だよ。普通に道を歩けるなら覚えられる。ただ、覚えるだけじゃダメなんだけど、それはちゃんと教えて行くよ」


 と俺は答えた。


「歩方は『流水』全ての基本でもあるから、明日から毎日頑張って稽古していこうな」


「はい!」


 マユの元気な返事を聞きながら、そういや人に教えるのって初めてだけど大丈夫かな? と少し不安になったのは内緒だ……



 

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