第5話 正騎士サーバイン卿。

 俺達2人はサーバインに連れられて城の一室に入った。そこで、


「先ずは王女に代わり異世界の方に謝罪を申し上げる。我らの都合に巻き込まれただけのあなた方には謝罪では足りないであろうが、どうかご了承いただきたい」


 と言って頭を下げられた。

 この騎士はこの国の中ではマトモな人なんだな。と心の中にメモをする。俺は、


「頭を上げて下さい。あなたが俺達を召喚した訳ではないですし、あなたに謝られてもどうしようもないので」


 と答えた。


「なれど、本来であらばあなた方は城にて保護しなければいけないと我ら正騎士団は考えておる。今までの召喚でも巻き込まれた者達がいたが、大抵は城下町で余生を送っておる。しかしながら、お2人はステータスが……」


「低すぎったって訳ね」



 俺が先手を取って言うと、サーバインは項垂れた。

 

「その低いステータスでは西の隣国には恐らくたどり着くのは無理だと思われる。そこで、王女の命に背く事になるがあなた方を東に連れて行こうと考えておる。東は街道も整備されており、人の往来も多く隣国の街まで比較的安全に行ける。西は『魔跋扈まばっこの渓谷』を抜けて、『魔障ましょうの森』を通らねば隣国の街にたどり着く事が出来ない」


 この騎士さんは良い人だね~、そんな人が俺達の所為で処罰されたりするのは心苦しいな。


「サーバイン卿。卿とお呼びしても」


「勿論である」


「俺達の為に卿が苦境に陥る事はない。何、俺の国の言葉に『為せば成る』というのがある。あの腹黒姫が言った通りに西に連れて行ってくれ。装備は良く切れるナイフと俺達2人に軽く丈夫な杖があれば貰いたい。食料は2~3日分で良い。それ以上は邪魔になるから。そして、出来れば2人が街に着いた時に1ヵ月程度が生活出来る資金を用意してもらえれば有難い」


「しかし、そなたはこの娘を連れて本当に大丈夫だと言うのか? 『魔跋扈の渓谷』はその名の通り我が国の国境から500mも進めば魔物が襲ってくるのだぞ。ナイフや杖ではとても倒せまい」


「そこは何とか出来る心積りがある。心配ご無用。それよりはこの世界についてお聞かせ願いたい。この国で用意して貰う貨幣は隣国でも使用可能なのか?」


「うむ~。そうまで言われるのであれば。納得出来ぬが納得しよう。タモツ殿、この世界は2つの大陸と大小様々な島がある。我が国がある大陸はガーデン大陸と言い、5つの国があるが貨幣は全て共通しておる。銅貨、大銅貨、銀貨、大銀貨、金貨、大金貨、白金貨である。庶民2人が1ヵ月程度の生活をおくるには金貨5枚あれば可能であろう。因みに銅貨5枚で大銅貨1枚と同じだ。屋台出店などの食べ物は大体銅貨6~8枚程度だ。あなた達には出立に際して2人それぞれに金貨10枚が渡される。勿論、銅貨や大銅貨、銀貨などを混ぜて渡すようにしよう」


「心遣い、有り難う。卿よ、それでは出立しても良いだろうか?俺はもう腹黒姫に会いたくないのでな」


「あい分かった。タモツ殿、マユ殿、馬車にご案内する。特殊な馬車で御者にはお二人の会話は聞こえない。安心して馬車内で良く相談してくれ」


 サーバインの言葉を聞き、俺と麻優は頭を下げてからサーバインについていった。

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