第57話 堕神は創世神
公爵をアヤカとライに任せて、俺とマユは魔剴山の麓までやって来た。
「この峠を登った所かな?」
「そうみたいですね」
何か色々な気配を感じる。
「どうやら俺達を出迎えてくれるようだぞ。マユ」
「クスッ、出迎え方が悪い人にはお仕置きが必要ですね。タモツさん」
「そうだな、先ずは挨拶代わりにこれでどうだ? 【古武術:流水 対魔:闘技 烈破風】!!」
俺は剛腕棒を体の正面で構え、風車の様に回した。それにより巻き起こる風は【魔の者】を
「タモツさん、凄いです!! 気配が失くなりました!」
「マユ、次は中腹辺りにいる様だ。登って対処してみるか?」
「はい。次は私がやってみます」
そうして登った中腹では一人の魔神が待っていた。
「何用かな? この山の山頂では堕神様がお休み中なので、このまま立ち去ってもらいたいのだが?」
「その堕神に用事があるんだよ、俺達は」
「それは無理な相談だな。堕神様の元に行けるのは我ら眷属だけだ」
「まあ、そう言わずに素直に通してくれよ。俺達も無駄な事はしたくないんだ」
「無駄な事とは?」
「弱い者いじめだよ」
「クックックッ、人の身でありながらの大言壮語。我は嫌いではないが、言うだけの力があるのか? あるならば通るが良い」
「だってよ、マユ」
「はい、タモツさん。全力で行きます!」
「いやいや、マユ。全力だと可哀想だから、力半分で相手してやれ」
「クワッハッハッー、貴様が相手かと思えば
マユはガノの言葉を聞いて威圧を解放して、身体強化(気力)を行う。手には既に剛腕刀を握っている。
「ほう!?
そう言ったガノは右手に禍々しい見た目の剣を持ちマユに襲い掛かった! 普通の人間、いや一流と言われる剣聖でも反応出来ない速度で斬りかかられたマユだが、剛腕刀で確りと剣を受け止めた。
「ほう? この速度に反応するとは!」
「自身が斬られて死んだ事にも気付かない三流は居なくても良いでしょう」
「何を馬鹿な事を…… そうか! 余りの我への恐怖で気でもふれたか!? グッワッハッ、グハッ、ゲッ、ゴエッ!!グギャラガァーー!!」
「ふう、もう終わってるのに何時まで喋るのかと心配になりました」
「お疲れ様、マユ」
「タモツさん、何点ですか?」
「12,000点!!」
「もう、タモツさんたら」
「ハハハ、さあ山頂を目指そう」
「はい!」
そうして山頂を目指す俺達に邪魔をしてくる者はいなかった。そして遂に、
「おう、久しぶりだな。レインで良いのか?」
俺は堕神に出会うなりそう声をかける。
「あら、久しぶりね。良くここまで登ってこれたわね? 足腰は大丈夫?」
「タモツさんの足腰がこの程度の山でどうにかなる筈ないでしょう。そんな柔な足腰だったら夜にあんな凄い筈ないわ!」
おーい、マユよ。俺に精神的ダメージを与えちゃダメでしょ!!
「ゴホン、まあそれは置いといてだ。ここで何をしている、レイン?」
「見て分からない? 待ってるのよ」
「何を?」
「
「「おっ!」」
「お?」
「「おっとっーー!?」」
「失礼な人達ね。私に
「「いやー、全然」」
「棒読みじゃない……」
「ふむ、まあ良いか。で、いつ降りてくるんだ?」
「そろそろ来ると思うわよ」
「そうか、じゃ待つか」
「あら!? 闘わないの?」
「下に居た奴にも言ったが弱い者いじめは嫌いなんだ」
「そうね、今の貴方に勝てるとしたら
「随分と物分かりが良いな?」
「フフッ、気付いたのよ。この世界の
「腐っても神か」
「失礼ね! 腐ってなんかないわ!!」
「あ~、こりゃ失礼」
「思ってないでしょ!?」
「バレたか!」
と、漫才の様なやり取りをしていたら、いつの間にか目の前に一人の男が居た。
『やあ、呼んだかい? 僕がこの宇宙を創造した神様だよ。それにしても君は危ないねぇ…… 僕の妻に色目を使って…… ちょっと消えておくかい?』
そう言ってパチッと男が指を鳴らした瞬間に俺は消えた。
「タ、タモツさん!?」
慌てるマユ。
『やあ、君がマユちゃんだね。どうだい? 僕の妻の一人になるならタモツくんを戻してあげるよ』
しかしマユには聞こえてなかった。マユは全力で威圧を出し、全力で身体強化(魔力、気力)をして創造神に斬りかかった。
「タモツさんを、返せーー!!」
『やれやれ、分からない
そう言って再度パチッと指を鳴らす。
しかし、マユは消えずに創造神を斬った。
『おや!? 斬られてしまった…… 何故君は消えないんだ? ここでは僕が絶対的な力を持つ筈だけど……』
斬られても平然として喋る創造神。その言葉を無視して切り刻むマユ。それを横目に見ている堕神。それらを静かに観察しながら俺は待った。
『あー、もう、鬱陶しいなぁ。取り敢えず、【神拘束】』
その言葉でマユは動けなくなる。そしてそのまま、現れた時と寸分変わらぬ姿で創造神は堕神に語りかけた。
『久しいねぇ、
「ええ、お陰様で元気に過ごせてましたわ」
『それは良かった。で、何用かな?』
「あら、妻が夫を呼び出すのに特別な用事が入りますか?」
『ハハハ、これは参ったな。でもこう見えて僕も忙しくてねぇ。用事がないならこれで失礼したいぐらいなんだけど……』
「うふふ、用事ならありましてよ。
『おやおや、何を言い出すかと思えば僕が
「いいえ、頭はこれ迄になく正常ですわ。あなた様が何を思いこの世界に干渉成されているかは分かりませんが、ここは、宇宙を夫が創造し世界を私が造りました。神々の間でも格下の神の管理する世界に干渉するのは禁忌となっております」
『 ……いつ気付いた?』
「お認めになりますのね。そう、あなた様が消した人に会った後の事ですわ」
『ふむ、やはりあの者は消して正解であったか。神に先を読ませぬ人…… 【
「そう、【
『我を
…… …… ……
マユは何とか拘束を解こうと力を振り絞っていた。タモツを消したあの神を絶対に許さないと憎悪に凝り固まってしまっていた。このままではマユが堕ちてしまう。そこに、
『マユ、聞こえるか? タモツだ』
『タッ、タモツさんッ!! 生きてたんですか!?』
『ああ、知らせるのが遅くなってゴメンな。あの創造神の皮を被った奴の正体を知りたくてな』
『いえ、生きていてくれたならそれで大丈夫です』
『うん。それで、今からマユの拘束を解くけどそのまま動かないでいてくれ。俺の結界も張るけど相手の力が読めない』
『タモツさんでもですか…… 分かりました。じっとしています』
『ああ、これから反撃だ!』
『はい!!』
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