第33話 サーバインとカイゼルとカミナ
あれから、サーバインを探してうろちょろとしていたら(技能は未使用)、向こうからこちらを見つけてくれた。
「タモツ殿、タモツ殿ではないか! 随分と痩せられたな! 息災であったか。だが、何故にここに? それに、勇者アヤカ殿もご一緒とは、どうした事か?」
そう聞いてくるサーバインの顔を見て男前だなぁ…… とつくづく思う。地球で言う西欧風の顔立ちで、瞳は少し薄いブルーアイだ。均整のとれた身体にさぞかし“モテル”だろうなぁ……と考えていたら、
「「「「タモツ殿(さん)?」」」」
皆から突っ込まれた。
「あっ、ああサーバイン卿、久しぶりだ。すまない、どう話そうかと少し考え事をしていたので」
と、誤魔化してサーバインへこれ迄の事を簡潔かつ要点をまとめて説明した。
「何と、そんな事が!」
と驚くサーバインに、
「すまないが、カイゼル侯爵の処に一緒に来てもらっても良いだろうか? 2人で協力してこの街をまとめてもらいたいんだ」
「勿論だ、タモツ殿。我ら正騎士団は元々は侯爵閣下の騎士団であった。元の鞘に戻れるのであれば願ってもない事だ。それに、侯爵閣下は領都をまとめる職を辞しただけで、国からは除爵はされてない。侯爵閣下ご自身が頑なに職を放棄したのだから侯爵ではなくなったと言っておられるがな……」
「そうか、それならこの領都をまとめて貰うのに都合が良い。それじゃあ、俺達と一緒に来てくれ」
俺がそういうとサーバインが躊躇いながら、
「あーその、何だ、タモツ殿。つかぬ事を伺うが、その、な、カ、カ……」
「カ?」
「カミナ嬢は、お元気であろうか!?」
思い切ったという感じで顔を少し赤くしながら聞いてきた。俺は吹き出すのを我慢しながら、
「おう、カミナ嬢ちゃんなら元気になったぞ。少しだけ気持ちも切り替え出来た様だしな」
と答えた。サーバインは、
「私は近くに居ながらお守りする事が出来なかった。今さら悔やんでも遅いのだが、今後は必ずやお守りすると心に誓っているのだ!」
と、決意表明する。なので、俺は
「俺にじゃなくて嬢ちゃんに直接言ってやれよ。今から会うんだし」
と、言ってサーバインを連れてカイゼルの処に行くのだった。
カイゼルの処にサーバインを連れて行くと、
「サーバインではないか! おっと、失礼。サーバイン卿とお呼びすべきだな」
「閣下、私は閣下の忠実な騎士に戻れるようですぞ! 陛下からの手紙を預かっております。先ずはこちらをお読み下さい」
と、サーバインが国王からの手紙をカイゼルに渡した。
「むっ、では皆をお待たせする事になるが先に読ませてもらおう」
……手紙を読んだカイゼルは、
「サーバイン、陛下からの手紙は確りと読んだ。どうやら私はこの地をまとめて行かなければならないようだ。しかし、私1人では中々に難しい。よって、陛下の許可もある故にそなたを私の権限で子爵にする。私を助けてくれ、サーバイン」
「なっ、私が子爵…… 謹んでお受け致します。カイゼル侯爵閣下。この剣に誓い、閣下にこれ迄以上の忠誠を!」
2人の世界に入った男達を
「お~い、悪いけど話が纏まったなら俺達はもう行くよ。後は頑張ってくれ。それとサーバイン卿、先程からチラチラとある方向に目を向けてるが、こういう時に勢いで言った方が良い事もあるぞ」
サーバインの目線に気づいていた俺は少しだけお節介をした。俺の真剣な顔を見たサーバインは、
「タモツ殿、忠告有り難く承った。カイゼル侯爵閣下、カミナ嬢への求婚をお許し願えますか? ダメだと言われても求婚致しますが!」
「何と、我が剣は我が娘を求めるか! しかし、娘はあの勇者に……」
カイゼルが躊躇っている。しかし、サーバインはそれを無視してカミナの前に行き、
「カミナ嬢、1度お守り出来なかった不精の身ではありますが、此れからは何があろうともお守りすると誓います。どうか私の側で私と共に生きていただけないでしょうか?」
と跪きカミナに盾を掲げた。
「サーバイン様、私は汚れた身です。それでも、サーバイン様は私を求めますか?」
カミナは不安な顔でそう告げる。
「カミナ嬢が汚れているなどということがあろうか! その身も心も清らかなる事を私は知っています!」
そう、サーバインが叫ぶと
「サーバイン様、私は子供の頃から貴方をお慕いしておりました。私でよろしければ、貴方のお側に居させて下さい」
カミナの返事にカイゼルは、
「父には相談無しか……」
落ち込んでいた。それを無視して、
「いや~、目出度いな。2人共、おめでとう! それじゃあ、俺達はランゲインに向かうよ」
と、去ろうとしたらカイゼルが、
「タモツ殿、これを。有っても
「タモツさん、マユさん、アヤカさん、ライさん、有り難うございました」
「タモツ殿、また何れ!」
「有り難く受け取るよ、カイゼル。カミナ嬢ちゃん、良かったな。サーバイン卿ならば何があっても守ってくれるさ。サーバイン、ああ勿論だ。また会おう!」
「「「カミナさん、お幸せに。」」」
『良いなぁ~、カミナさん。私もいつかタモツさんと……』(マユの心の声。)
3人に挨拶して、俺達はランゲインに向けて先ずは魔跋扈の渓谷に向けて歩きだした。
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