第8話 魔跋扈の渓谷到着。

 国境に着いた。目の前には厚さおよそ80㎝の鉄板の門が……

 でけぇ~。呆然と門を見ていると、騎士達が門を開ける準備を粛々としている。

 サーバインが、


「保殿、この門の内側には我が国の宮廷魔導師が魔除けを施しておる。よって、この先500m程までは魔物は近寄らない。レベルの高い魔物も不快に思うらしく、こちらには近寄らないのでレベリングを目指すのであれば、門の近くに拠点を作られるが良かろう。そして、こちらは我が隊で使用しているコテージだ。弱い魔物は触れただけで消滅するので安心して使用して欲しい」


「良いのか?そんな事までして。俺の勘だが、遠隔魔法で恐らく城のお歴々が監視してるぞ」


 俺が言うと、


「気になさるな。我らが追放の儀を任された時にはいつも行っておる事だ。それと、監視の魔法だが、あなた方が渓谷に入ると無くなる。というか、渓谷自体が監視魔法を跳ね返すらしい。だから、攻略も進んでおらぬのだがな。厳密に言えばこの門が国境ではなく、渓谷までが我が国の領域で『魔障ましょうの森』が隣国の領域になる。が、渓谷には幾度も挑んだのだが、500mから先には進めない。しかし、勇者様方がレベルが上がれば攻略に乗り出すと思われる。それまでに保殿達が隣国に行ければと思う」


「サーバイン殿、貴重な情報を感謝する。勇者達が攻略に乗り出すまでどれくらいの猶予があるだろうか?」


「おおっ名を呼んでくれるか。保殿。恐らくは始まりの迷宮ダンジョンにてレベリングを行い、徐々に迷宮レベルを上げて行くと思われる。攻略に乗り出すには3人共にレベル50以上になるまでは行われないであろう。それでも半年~10ヵ月の間だろうと愚考する」


 サーバインの言葉を聞き、俺は拠点を利用して位階を上げるのは半年以内にするべきだと判断した。


「有り難う、サーバイン殿。思えば、あの腹黒姫やお付のジジイ、その他大勢にはウンザリだが、サーバイン殿とは善き友になれそうだ」


 俺が笑いながら言うと、サーバインも

 

「ハッハッハッ、私も保殿とは善き友になりたい」


 そういうと握手を求めてきたので、手を握る。その瞬間、


『保殿、聞こえるか?』


 サーバインの声が心に響いてきた。俺の念話と同じような力だな。


『聞こえるよ。サーバイン殿』

   

『これは我がスキルの心話だ。触れた相手と心で会話出来る。1つだけ聞きたいのだ、答えられなければそれでも構わん。教えて欲しい。保殿は隣国へ行ける心積りのようだが、あのステータスを見る限りは無理だ。何故にそこまで自信があるのだ』


 サーバインの問い掛けは最もだと思うが俺は正直には答えられない。まだ、サーバインを心から信用は出来ないし、信用したとしても知っていたらサーバインの知らぬ内に秘密を覗くスキルなんてものでバレてしまうかも知れない。そこで、俺は


『悪いな、サーバイン殿。秘中の秘なのでそれには答えられない。だが、必ず生きて再び会う事をここに誓おう』


 と返事した。


『あい分かった。友とまた再び会える日を楽しみに待つ事としよう。それまでは、息災にな』


 唐突に握手は終わり、


「さあ、門は開いた。行かれるがよい。保殿。麻優殿。あなた方2人の無事を祈っておる」


「世話になった。サーバイン殿、そして騎士の皆さん。いつかこの恩を返せればと思う。それまで、互いに元気であることを祈ろう。では」


「皆さん、お世話になりました」


 マユの挨拶と共に俺達は門の内側に入った。そして、門が閉まるのを待たずに先へとを進めた。

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