第46話 錬金術とは・・・【想像力】!

 バカ話を終わらせて、ラーナの悩みを聞いてみた。


「私、魔力は人よりも多くて制御も上手い方だと思うんですけど…… 考えた通りに錬金が出来ないんです!! どうしたら良いでしょうか?」


「う~ん? 例えばどんな感じなのか見せてくれるかな?」


 俺がそう言うと、ラーナは薬草各種と精製水を出してきて、


「今からポーションを錬金して見ます。見てて下さい」


「ああ、分かった」


 材料を作業台に置いて、材料に手をかざすラーナ…… えっ! そのまま錬金したら台の上でポーションが零れて終わるんじゃぁ…… 俺とマユは目を合わす。マユも俺と同じ考えのようだ。そんな俺達の心配を余所にラーナは、


「行きます! ポーション!」


 見ていて分かった。魔力も十分、制御も丁寧で完璧だ。しかし、そう、しかしである……


 予想通りに出来上がったポーションは作業台の上をびちゃびちゃにして零れていった……


「だぁーっ! 何でポーションを入れる容器を先に用意しないんだっ!」


 俺が突っ込むと、


「はっ! そうか、先に用意してソコに材料を入れて作れば良いんですねっ!! タモツさんって天才ですか!?」


「ちっがーうっ! 普通は人に言われなくても気づくぞ!」


「えーっ、そうですかぁー? 私は言われないと気づかなかったですけどぉ……」


「そこで、疑わしそうに言うな!」


「まあ、お陰さまでポーション等の液体系の悩みは解消されました。他にもあるんですけど、相談にのってくれますか?」


 気を取り直して俺とマユは、


「ああ、分かった。どんな事だ?」


「私は魔道具や作業工具なんかも依頼されて作成したりするんですけど、いつも依頼主さんの思っている道具と違うものが出来ちゃうんです。例えば、火鉱石を利用したランタンを依頼されてたんですけど、出来たのがコレなんですけど……」


 そう言ってラーナが俺とマユの前に出した物は、地球で言う懐中電灯の形をした魔道具だった。


「えっと、何でこの形にしたんですか?」


 マユが不思議そうに聞くと、


「私、ランタンって見た事なくて、夜道を照らしたいって聞いたので、この方が便利だろうって作ったんですけど、依頼主さんからランタンじゃないってダメ出しされて…… でも、コレ性能は良いんですよ。100m先まで照らしますし」


 と、地球のLED懐中電灯の様な謳い文句が聞こえた。


「ランタンを見た事がないって…… でも、誰かに聞けば直ぐに分かるでしょう?」


 とマユが言うと、


「だって、恥ずかしいじゃないですかぁ! 錬金術師が普通の人に物を尋ねるなんて」


「でも、それで依頼が達成出来なければ生活も出来なくなりますよ」


「そうなんですぅ~。今月の食費があと僅かしかないんですぅ~。助けてくださ~い」


 途端に泣き出したラーナ。


「俺達に聞くのは恥ずかしくないのか?」


「えぐっ、ひぐっ、だって、同じ錬金術師さんになら聞いてもおかしくないって思って。ひっく、ひっく……」


「ラーナさん、泣かないで下さい。問題は簡単に解決しますよ。はい、この本を差し上げます」


 と、マユが取り出したのは【現場の味方・コモノ、オオモノサブロウ】の商品カタログ全15冊。


「この本にはありとあらゆる物が画像付きで載っています。コレで商品の形を確認して錬金術を使えば問題は解決です」


 とマユはニッコリするが、大問題が1つ……


「マユ、ラーナさんは日本語が読めないぞ!」


 俺の指摘にハッとした顔をするマユ。しかし、ここでマユは更にニッコリとして、


「早速、【訓練】ですね! ラーナさん、錬金術に必要なモノは何か知ってますか?」


「はい、王都で錬金術師をしている母が常日頃言ってました。それは、【想像力】です」


「はい、その通りです。そして、その必要な【想像力】をラーナさんは既に持っておられます。そこで、この本に書いてある文字を読めると【想像】してください。心から!」


 そう言われたラーナは、


「こっ、この文字は私が既に知っている文字! 私には読める! 読める! 読めるのよ!! 読めないと、食費が稼げないのよ! 読めるったら、読めるの!」


 そう、叫んでいるラーナを【見(検)分眼】で見ていると、スキルに【想像力】と、【言語翻訳】が出てきた。


「あっ、読める! 分かる! やった!やったわ! マユさん、いえ、マユ師匠!! 有り難うございます!!」


「良かった。コレからは依頼主さんから名前を聞いたら、先ずこの本を見て確認してから制作してくださいね」


「はい!必ずそうします!」


「それじゃあ、私達は失礼しますね。依頼された制作を頑張って下さい」


「ああ、魔力制御を見せてくれて有り難う。参考になったよ。コレからも頑張って!」


「お二人とも、有り難うございました。私はこの教本を元に、更に精進して行きます!」


 そうして、数年後にはランゲインで知らぬ者はいないとまで言われる錬金術師が、マシラ村に誕生した!!

 

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