第47話 王都到着。
マシラ村を出て、更に2つの街を経由した俺達は、とうとう王都へ着いた。
門が2つある。近くにいた商人らしい人に聞いてみたら、1つは一般向けの門で商人や旅人が対象。もう1つは貴族や王族、騎士など公的立場の人用らしい。俺達は迷わずに一般向けに並んだ。俺達の順番が来て、身分証をと言われたので、ユグドの通行証を見せると、
「これは…… !! 失礼致しました。皆様方は申し訳ございませんが、彼方の門に移動していただけますでしょうか?」
公的な立場ではないのだが…… まあ、門番さんも上から言われてるのだろう。しょうがないか……
「分かった。あちらに移動すれば良いのかな?」
「はい。あちらでこの通行証をご提示ください」
そう言われて、俺達は移動する。こちら(公的)の門について門番に通行証を提示した時に、俺達の後ろから慇懃な声が掛かった。
「いつからこの門は毛のない猿が通れる様になったのだ。今すぐこの門の前から立ち去れ!」
その声を聞いた門番は強く抗議しようとして、相手の馬車の紋章を見て声を弱めた。
「無礼な! はっ、ダルド公爵閣下…… 申し訳ございませんが、こちらの方々はユグド様のお客人です。いかに公爵閣下と言えど、先程の物言いはお客人に対して失礼にあたりますぞ。」
「はんっ! 門番風情が偉そうな事だな。前時代の遺物の威を借りてまでこの私に意見するか。ユグドが偉いのなら、この私の祖父も8代前の王だぞ!!」
『それじゃ偉いのはお前じゃないだろ!』
と、心の中で突っ込みを入れる。
「え~と、俺達は場違いのようなのでヤッパリ向こうの門から入る事にするよ」
俺がそう言うと慌てる門番さん。
「いやいや、それでは我らが処罰を受けてしまいます。どうか、今しばらくお待ちください」
「ふん! 自らあちらに行くと言うのだから、早く私を通せ!!」
ダルイじゃなかった、ダルド公爵閣下がそう言った時に、門の奥から涼やかな美声が、
「あら、私の主人の客人に文句があるようね? ダルド。それじゃあ遂に反逆の準備が整ったのかしら? 何時でも良いわよ。何なら今すぐ私と勝負する?」
そちらに目を向けると、髪は緑銀、肌は薄黄緑、目は濃緑で、絶世の美女が茨の鞭を手に立っていた……
その姿を見て、M系男子に好かれそうな出立ちだなぁと思ったが口には出さなかった。俺は……
ライが、ついという感じで
「女王様だぁ……」
と言ってしまったが……
アヤカから阿修羅の威圧が立ち上ぼり、ライが青ざめる。
「ち、違うんだ! アヤカ! 僕は純粋に思った事を口にしただけで、あの鞭で打たれたいとか、あの足に踏まれたいとかは一切考えてない!」
いや、ライよ。聞いてた全員がお前の願望だと悟ったぞ……
「あら、こんな年増で良ければお相手するわよ!」
火に油を注ぐ美女。
「いや、そんな、そんなにお綺麗なのに年増だなんて、とんでもない!」
ダイナマイトを放り込むライ。
すると、無視される事になれてないのか、ダルイじゃない、いやもう面倒だから俺はダルイと呼ぼう。公爵閣下が金切り声を上げる。
「突然現れて訳のわからない事を言ったかと思うと、今度は毛のない猿に色眼鏡か! 女王の側近の振る舞いとは思えんな! ロザリア!!」
「あらあら、公爵風情が偉そうに言うわね。いつからこの国では大公よりも公爵の方が偉くなったのかしら?」
「私は女王の婚約者だ! つまりは王になる者だ! 大公ごときが逆らえる者ではないのだ!!」
その一言で場の空気が冷える…… こりゃあ、ビシュヌの威圧だな。
「いったい、いつ、貴方が女王の婚約者に決まったのかしら? 私は初耳だけど……」
「ふん! これだから無知な奴は…… 知らないようだから教えてやろう。良いか、女王が15歳になるまでに婚約者が決まっていなければ我が家から婚約者を出すと王国法にもしるされているのだ! 分かったか!!」
「女王はまだ10歳だけど?」
「あと5年しかないのに、あの女王に婚約者が出来る訳がなかろう! だから、取り決めに従って私が早めにもらってやるのだ! 私の慈悲の心が分かったかっ!!」
まだ続きそうだが、いい加減こっちもウンザリしてきたし、アヤカがライを締め上げてるしで一声かけた。
「で、俺達は王都にいつはいれるんだ? このまま入れないなら、スルーさせてもらって違う街を見に行きたいんだが?」
俺の一声でダルイが切れた。
「毛のない猿が、貴族の会話に割り込むな! 死ね!」
詠唱なしで魔力の矢が凡そ100本ダルイの前に出て、俺に向かって飛んできた。
対処する前に茨の鞭の一振で全て消えたが…… そしてその瞬間、ロザリアが叫ぶ。
「王家に対する反逆罪で、ダルドを捕えよ!!」
どうやらもう少し掛かる様だ。到着したのに入れないって……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます