第49話 アヤカ覚醒

 女王陛下の場所に転移した俺達はギリギリ間に合った。もう、右目から上部分を除いて全て石化しているにも関わらずに、この幼い女王は俺達に会えて嬉しいとでも言うように目で微笑みを見せた。其を見た俺は即座に結界を張るとマユとアヤカに解呪を促す。

 

【想像:組成変換・完全治癒】

【想像:全回復魔法・御神法】


 2人の技能が女王の全身を包む。石化は右半身は消えたが、左半身が治らない。焦る2人。そんな2人に俺は言う。


「マユ、呪いを促す呪具があるはずだ! 其をみつけて壊せ! 其がある限りこの結界は外せない」


「アヤカ、落ち着いて自分の魔と気を練り上げろ! 今の技能では完全な解呪が出来てない。完全解呪を想像しろ!!」


 実際にこの呪いは強力だ。俺の結界を壊そうと外から圧力がかかってきている。俺は初めて全力で結界を張っていた。そうしないと女王がヤバいのだ。実際、どの様に感知するかは分からないが俺達が部屋に転移して女王の状態を確認した時に、呪いの強度が上がった。結界が間に合ってなかったらその時点で女王は完全に石化していただろう。

 

「マユ、探す前に自分にも最大強度の結界を張れ! アヤカ、悪いが、マユの結界に上乗せして結界を張ってやってくれ! この呪いはヤバい!!」


「「はい!!」」


 マユはタモツの言葉を聞いて緊張した。


『あの、何事も余裕を見せて対処してきたタモツさんが余裕をなくすなんて……』


 そして、マユは呪具を探す為にタモツの結界から出た。その瞬間、マユの動きが止まった…… タモツが焦って、


「マユッ、マユッ! 戻れ!俺の結界の中に戻れっーー!」


 叫ぶがマユは動けない。呪具は床下に隠されていて、その真上に立ってしまったからだ。マユとアヤカの2重結界はあっさりと侵蝕されて、マユは【気】の力で呪いが自分の体を侵そうとするのを全力で防いでいた…… しかし、徐々に呪いに押し負けて侵蝕され始める……

 タモツは焦り、しかし、女王への結界を外せずに威圧を高めて呪いを牽制するしか出来ない。そこに……

 

「酷いですよ~、師匠~、置いてきぼりなんて~」


 緊張感の欠片もないライが部屋に入って来た!マユを侵蝕していた呪いがライにも迫る! 何の準備もしてなかったライは一瞬で呪いに囚われ、石化した!!

 

「イヤーッ! ライッーーー!!」


 アヤカが叫ぶ! ライは石化した状態でゆっくりと倒れて行く。そこに飛び込みライが床に倒れて割れない様に下敷になる影が!! 女王様ロザリアさんだった! そして、そのまま女王様ロザリアさんも石化する! 其を見たアヤカの目が金色に光る!


【想像:阿修羅顕現・破解呪】


 アヤカの体から腕が4本、新たに現れて顔の側面に顔が…… 【怒】の顔が正面に来て【怒】から【憤怒】に、目から光が溢れて部屋全体を包んだ! そして、手に持つ金剛杵、剣、棍、鞭をふるって空間を切り裂いた!




 光が収まった後には、全ての異常が解呪された状態の皆がいた。そして、【憤怒】から【慈愛】の顔になった阿修羅アヤカは静かに俺に言う。

 

『そなたもスパルタよの。この程度、そなたであれば一瞬も要らずに消せように。この者達の成長を促す為か?』


 おっと、阿修羅王がアヤカに顕現している様だ。

 

『あ~、まあ、その事は内密にお願い出来るかな? 俺が居たら何とかなるっていうのが当たり前になると不味いんでな』

 

『フフフッ、あい分かった。内密にしておこう。それから、この女子おなごの今の望みを我が叶えておいたぞ。我が顕現したのじゃから、我が武器を全て使いこなして貰わねばならぬからの』


 ん? 我が武器? 阿修羅王の武器は、金剛杵、剣、棍、鞭…… 鞭か!

 ライの望みも叶うなぁ……


『分かったよ。それにしても助かったよ。顕現してくれて』


『我は何もしておらぬ。この女子おなごの力よ。次からはこの女子おなごの意識は途切れずに我が姿のみの顕現となろうぞ。そなたの嫁子もまた、此度のことで力が上がっておるでな。では、サラバじゃ、【理外の主】よ』


『ああ、またな。阿修羅王』


 そこで、アヤカは目覚める。普段通りの姿で。


「はっ! ライ、ライは?」


「大丈夫だ、アヤカの力で皆が元に戻ったぞ」


 俺はマユを助け起こしながらアヤカに言う。

 

「う、う~ん、タモツさん?」


「マユ、良く頑張ったな。アヤカの力が覚醒したからもう大丈夫だぞ。呪いは全て解けて、相手に返された」


 起きたマユにそう告げると、


「怖かった! もうタモツさんに会えなくなるのかと思って……」


「マユ、その時は何をおいても俺がマユを助けるよ。心配するな」


「うん……」


「あと、マユとアヤカ。位階が上がってるからな」


「「えっ?」」


「アヤカは兎も角、私まで?」


「マユは極限まで【気】を使っただろう? それでだな」


「アヤカはライが気絶してるから言うけど、鞭技が恐らくこの世界では最強レベルで取得されたよ」


「あっ! 本当だ。わかる、どう扱えば良いか、頭でも体でも分かる!」


「それから、ライについてだが、アイツがM気質に目覚めたのは、アヤカによるんだからあまり責めてやるなよ。初めてからを思い出せば、自覚も出来るだろう?アヤカ」


 俺がそう言うと、真っ赤な顔で、


「タモツさん!!」


 とアヤカに怒られた。俺はMじゃないから怒られても嬉しくないぞ、アヤカ。


 


 暫くして、ライが、女王様ロザリアさんが目覚める。女王陛下は呪いにかかっていた時間が長かったせいかまだ目覚めない。目覚めた女王様ロザリアさんにアヤカが礼を言う。

 

「ライを守ってくださり、有り難うございました」


「いいえ、私は何も出来ませんでした。力ある者と自負しておりましたが……」


 それを聞いてアヤカは、


「いえ、貴女は危険を省みずにライの体を守ってくれました。何も出来なかったなんて事はありません」


 横からライも、


「女王様、本当に有り難うございました」


 と礼を述べた。


「皆様、来ていただいた上に陛下の呪いを解いていただき、本当に有り難うございました。お疲れでしょう。お部屋に御案内しますので、明日また改めて陛下を交えてお話させて下さい」


 女王様ロザリアさんにそう言われて、各々の部屋に案内された。その時に皆に隠してアヤカに鞭を渡したのはここだけの話だ……


 その夜、ライの悦びの声が結界を超えて俺とマユに届いた……

 

「さあ、ライ! 貴方の女王様はダレ!?」


「ああ、アヤカ様~! そのおみ足で私を踏みにじり下さい~!」


 バシーンッ! バシーンッ!


「この、コブタちゃんはダレの許しを得て舐めてるの!!」


 「ひぃーひぃー、もっと、もっと打って下さい~」


 ピーーーーーー《自主規制》


 早朝まで続けられた……


 名前:マユ  職能:古武術家(中伝)

 位階:6段  経験:207,357

 心:39,667 技:35,885 体:41,567 魔:50,821

 武器:剛古樹(+5,500~+7,800) 攻撃力:60,555

 防具:堅古樹一式(+8,800)   防御力:67,128

 技能:想像・古武術   状態:良好


 【技能:想像】マユ

 鑑定・適応合成・武術推算・組成変換・完全治癒

 知識辞典・適合神経・誠神・光角線


 【技能:古武術】マユ

 威圧:般若仏心・絶界掌・天輪拳・光天昇・耐呪


名前:アヤカ  職能:聖神女

 位階:3段  経験:138,963

 心:31,831 技:25,534 体:24,267 魔:38,459

 武器:天杖(+2,500)  攻撃力:21,723

 防具:硬軽ローブ(+3,500)   防御力:32,499

 技能:想像(気・魔)・聖魔法  状態:良好・豊穣神の加護


 【想像:気】    

 体術・杖術・飛空(低空)・強化・阿修羅顕現

 【想像:魔】

 応用・念話・気配察知・貯蔵庫

 

 【聖魔法】  

 全回復魔法・全防御魔法・強化魔法・ 御神法・破解呪

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