第50話 ミドリが居たそうだ。

 東にダイワという国がある。王政ではあるが、騎士団ではなく武士団。騎士団長ではなく、武士さむらい大将……

 日本人だろ!? 間違いなく作ったのは日本人だ!! しかも、国旗に今では誰も意味が分からないという【大和】っていう記号があるらしいから、間違いないっ!!


 で、何でそんな話になったかと言うと、目の前にいる近衛騎士団長のオーガ族のガリガリさん(女性)がダイワからの緊急連絡を女王陛下と女王様ロザリアさんにしたから。その緊急連絡の内容が……


 ※ハイレッカ王国から連絡のあった元勇者のミドリがダイワに現れて、ダイワの下級10武士団を纏める10人の大将を木乃伊ミイラにした後に、逃走した。ついては各国でも同様の事が起こる可能性があるので、注意されたし。※


 との内容だった…… おお~、ミドリは相変わらずなんだなぁ~。と他人事の様に思っていると、マユとアヤカ、ライから


 (ライ)

『やっぱり、放っておいたのは不味かったんじゃぁ……』


 (アヤカ)

『ミドリは自制心がないから危険なのよね』


 (マユ)

『タモツさん、これは放っておいたら犠牲者が益々増えて行くんじゃないですか?』


 と言う言葉が・・・。


『でもなあ、あいつが狙うのは強い精力を持つ男だけだし、引っ掛かる男も自業自得だしなあ……』


 と俺が言うと、マユが


『でも、タモツさん。以前はミドリが魅了を覚えてないって事でしたが、新たに魅了系を覚えてたりして、それを使って男性を狙っていたら?』


 と言うので、俺は真実を教えてやる。


『あいつは男を誘うときは覚えたとしても、魅了を使う事はないぞ。何か男女の駆け引きを楽しんでるから、とか言ってたしな。だから、引っ掛かる男は自分の責任になると俺は思うんだよ。それに、木乃伊ミイラになった男もハイレッカの男達とは違って安静にして食事を確りとれば回復してるそうだし…… 放っておいて良いんじゃないかなぁ』


 『『『魅了を使ってないのに引っ掛かる男って…… 只の助平って事か。うん、放っておきましょう』』』


 皆の意見が一致した。


 そして、女王陛下が俺達に向けて言葉を述べる。


「皆様方のお陰で、私は助かりました。何をもってお返しすれば良いのかわかりませんが、取り敢えず有り難うございました」


 と頭を下げる。齢10歳の女の子が。


「ああ~、良いって。頭は下げないで顔を上げて。助かって良かったな。こっちのお姉さん2人のお陰だから、お礼だけで良いよ」


「「タモツさん、言葉、言葉!!」」


 ん? 不敬になるか? そう言えば1国の主だもんな。でも、10歳の女の子だしなぁ…… 俺が少し困った顔をしていたら、女王は、


「ウフフ、大丈夫ですよ。マユ様、アヤカ様。皆様も気にせずに接して下さいね」


 と、にっこり微笑んだ。そして、女王様ロザリアさんも、


「皆様方はミネヤーマ陛下の恩人です。不敬などはないので、友人として接してあげてちょうだい。勿論、私ともね」


 と言う。おお、名前がミネヤーマって、女王の先祖は日本人か? 俺は聞いてみた。


「ミネヤーマって名前は、名字かな? もしかして、転移又は転生した人が先祖にいるのかな?」


「はい、そうなんです。タモツ様。私の祖父は60年前にこの国に来られて恩恵をもたらした勇者だと聞いております。私はミネヤーマ・カオリがフルネームです」


「おお!ひょっとして50年前に温泉宿とか開発した人かな?」


「はい、そう聞いております。残念ながら祖父は私が産まれる直前に亡くなったので会った事はないのですが、父が言うにはとても楽しみにしてたと聞いてます。名前も祖父が亡くなる前につけてくれたそうです」


「おお、そうなんだ。もう亡くなられてたのか。残念だ、お会いしたかったな」


「はい、私も祖父には会いたかったです」


「そうだな、カオリの方が会いたかったよな。ゴメンな、辛い事を聞いて」


「そんな、謝らないで下さい。タモツさん」


 気がつけば、俺は女王陛下を呼び捨てに、陛下は俺を様からさんにと親しくなっていた。


 そこで、近衛騎士団長のガリガリさんが俺の方を見て、


「タモツ殿、地球の古武術と言われる武術を修められているとお聞きしました。もし、宜しければ私に1手、御指南頂けないでしょうか? 私も家に伝わる武術を長年修行しております。それも、300年前に地球から来られた勇者に教えられた武術です。流派は【古武術:華山】と言います。如何でしょうか?」


 と言ってきた。ここでまた懐かしい名前が出たな。日本にはその界隈では有名だが、見た者はいないと言われる3流派の古武術がある。


 1、古武術:武御たけおみ

 2、古武術:華山かざん

 3、古武術:流水りゅうすい


 の3つがそうだ。武術、武道の総帥クラスが名前だけは聞いた事があるっていうレベルの知名度だが、例外として大東流合気柔術の祖『武田惣角』は若い頃に華山の総家と試合ったらしい…… 口伝が大東流に残っているそうだ。と、師匠から聞いた。


「試し合うのは良いが、無手か? 武器術か? それとも何でもありかな? 俺はどれでも良いが」


 とガリガリさんに聞くと、


「我が流派は棍術に重きをおいております。もし構わなければ、それでお願いしたいのですが」


「流水は棍術ではなく、棒術と言う。では得物はそれで良しとして、場所は? 俺はここでも良いけど」


 ここは畳でいうと50畳程の広さがある。


「陛下のお許しがあるなら私もここで構いません」


 そこで、女王の方を見ると、期待に満ちたキラキラした眼差しで、


「はい。許可します。ガリガリ、確りと戦いなさい」


 と、許可が出た。さあ、俺も対人試合は久しぶりだな。少し気合を入れて試合に望もう。

 


 

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