第31話 取り敢えず放っておくか?

 皆の叫びを聞きながら俺は、


「う~ん、探すのも面倒だし取り敢えず放っておくか? いや、それはそれで問題があるか?」


 とブツブツ呟いていた。


「タモツさん? ミドリは放っておくんですか?」


 マユから聞かれたので、


「うん、探すのは可能だけど面倒臭いしなぁ~。旅の途中で見つけたら対処するってどうかな~?」


 俺がそう言うと、


「でも、それまでに沢山の犠牲者が出るんじゃ……」


 マユがそう言うので、説明をした。


「ミドリの隠れ職業の【男滅魔】なんだけどな、マユ。別に魅了とかが使える訳じゃないんだ。彼奴に誘われてそれに乗る男は、云わば自業自得なんだよな。だから余り積極的に助ける気にならないと言うか……」


「そうなんですか。自業自得ですか。じゃ、取り敢えず放っておきますか。出会ったらその時に対処するというのに私も賛成します」


 と、俺の説明を聞いてマユ、アヤカ、カミナの女性陣はコクコクと頷いた。そこで、タツヤから助けた女性が、


「あっ、あの、助けていただき有り難うございました。私はこの近くの村で宿屋を営んでます。ケイーザと申します」


「ケイーザさん、災難でしたね。間に合って良かったです。さあ、村までお送りしますね。それと1つお願いがあるのですが、ここで見た事は他言無用にしていただけますか? そうしないと、貴女にも迷惑がかかるかも知れないので」


 アヤカがそう言ってケイーザを優しく見つめる。


「はっはい。見た事は誰にも言いません。アヤカ様に誓います」


 と約束してくれた。


「さてと、それじゃあカイゼルとカミナ、神殿長で彼女を送ってくれるか? 俺とマユ、アヤカとライは野暮用を済ませてくるから。用事が済んだら、カイゼルの家に顔を出すよ」


「タモツ殿、分かりました。このお嬢さんは私が責任を持ってお送りしましょう。そして、我が家で貴殿方を待ちましょう」


「タモツさん、有り難うございました。少しスッキリしました」


 カイゼルとカミナにそう言われ、神殿長からも


「タモツ殿、出来れば神殿にも顔を出して頂きたいのだが…… 無理にとは言うまい。時間が有れば宜しくお願いします」


「 ……考えておくよ。良し、それじゃ、行くか。【転移】」


 そして、俺は3人を連れて転移した。王女レインの元へ。




 

「で、何の説明もなく連れて来られたけど、野暮用って何なの? タモツさん」


 アヤカが少し怒りながら言う。


「ああ~、すまん。言うの忘れてた。ミドリは取り敢えず放っておくけど、放っておいちゃいかん奴がいるだろ?」


「王女レインとガルバですね」


「そうそう、その2人な。で、レインは只の人だけどあのガルバは違う。所謂いわゆる【悪魔】で、堕神の眷属だからランゲインへの土産序みやげついでに滅しておこうと思ってな」


「私とタモツさんは分かりますが、アヤカとライさんを連れて来たのはどうしてですか?」


 マユが聞くので、


「アヤカは勇者として認識されてるから、レインを懲らしめてガルバを滅しても非難されないと思って。俺やマユだけで対処したら誰かが難癖つけて来るかも知れないしな」


「なるほど~! さすが、タモツさんですね!」


「って、理由はそれだけですか? 私とライの力が必要とかじゃなくて!」


「ん? それだけだけど……」


 俺があっさり返すと、アヤカとライは


「はぁ~、分かりました……」


「アヤカ、諦めよう」


 と2人揃って脱力していた。


「じゃあ、あっちも俺達に気づいて待ってるみたいだから、行こうか。あっ、アヤカは参加しても良いけど、ライは後ろに下がって結界を張って見学な。但し、レインが逃げようとしたら捕まえてくれ」


「はい、分かりました」


「良し、訓練場に2人揃っているから行こうか」


「「「はい」」」

  

 

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