第2話 腹黒な王女様を見つけた。
何か、自分がより集まっているような感覚を感じていたら急に意識が戻った。その瞬間、
「おお~、成功だ!勇者様の召喚に成功しましたよ!姫」
「やりましたわ。爺。きっとあの筋骨逞しく凛々しいお顔をされた方が勇者様ですわね。何かお付きの草臥れた顔をしたおじさんも居るようですが」
……草臥れた顔をしたおじさん ……俺の事だろうな。勇者様はタツヤ少年の事だろう。しかし、ここは一体どこなんだ。召喚などと言っているが? 49歳のオッサンには良くも悪くも常識というものが染み付いている……
が、しか~し! このオッサンは臨機応変がモットーだから異世界に転移した事を即座に理解した。
「なっなんだ! ここは何処だ!」
「なに~? ここ? 私達さっきまで路地にいたよね」
「フフフッ! 来たわーっ!やはり、私は選ばれし者だったのね。愚民達よ、安心なさい。私が魔王を滅ぼしますわ」
……言葉は兎も角として、1名は俺レベルの順応力を見せているようだ。はっそうだ。マユって子は?辺りを見回すと、俺の足元から少し離れた位置で顔を上げて座り込んでいる。俺はゆっくりと近づいて、
「大丈夫かな? 体に異常はないかい?」
と聞いてみた。マユは
「あっはい。大丈夫です。助けて貰って有り難うございます。でも、ここは?」
と意外に確りした声で返事をしてくれた。しかし、この子は痩せすぎだな。病気なんだろうか?と考えていたら、姫と呼ばれていた女性がタツヤ少年とミドリ、アヤカ少女に声を掛けていた。
「ようこそお越しいただきました。勇者様。私はあなた方を召喚いたしました、王国ハイレッカの王女でレインと申します」
「ワシは王女様お付きの爺でガルバです。よろしくお願いいたします」
声を掛けられたタツヤとミドリは何も言えない様で、口をパクパクさせているが、ここで危ない少女アヤカが、
「私の名はアヤカ。こっちがタツヤでこっちがミドリよ。で、レインさん、さんで良いわよね。私達は無理矢理に召喚されたのだから。私達に何を望んでいるのかしら?」
と、問いかけた。アヤカの失礼な口調を聞いて後ろにいる恐らく近衛だろう兵士?騎士?が険しい顔をするが、王女が
「レインと呼び捨てでも構いません。勇者様方にはこの国をお救いいただきたいのです。恐ろしい魔族の手が我が国へと伸びてこようとしております。幸い今はまだ何も被害が出ておりませんが近く、この数年の間に大きな被害が出るのは明白です。しかし、魔族は強大な力を有しております。我が国の兵力だけではとても太刀打ち出来ません。そこで古より王国に伝わる召喚魔法を使用して勇者様方を召喚させていただきました」
この言葉を聞き、黙っていたタツヤとミドリが、
「ヘヘヘッ来たぜーっ!俺の時代がー!俺の素晴らしい力を見せつける時がっ!」
「キャハ~!来たわ~私が主役よ~。異世界よ~。先ずは邪魔な魔族とやらを排除して、出来れば王子様、無理でも位の高い貴族様と結婚よ~」
と馬鹿丸出しで言い出した。その時に俺は見た。王女の口角が奴らを馬鹿にしたようにつり上がるのを。こりゃ、話には乗れないな。しかも俺達(俺とマユ)は員数外のようだし。さて、そうなると始末される前に逃げ出す必要があるな。王女を人質にするか? いや、出来れば役立たずをあいつらが放り出す形にした方が良いな。俺は頭を巡らせながら、マユに
「俺はここから取り敢えず逃げ出すつもりだが、一緒に来るか?」
と聞いてみた。マユは、
「足手まといになるので、おじさん1人で逃げて下さい」
と言う。そこで、俺は
「マユ自身はどうしたい?このままここに居ればあの兵士達に殺されるかも知れないし、彼奴ら(タツヤ、ミドリ、アヤカ)が成長する為の捨てゴマにされるかもしれない。俺はマユ1人位なら守って逃げる位は出来るぞ。それも穏便にな。まあ、見知らぬオッサンの言うことは信用出来ないとは思うが」
と更に声を掛けた。マユは俺の言葉を聞き、
「足手まといと思われないなら一緒に連れて行って下さい」
と言った。
「よし、任せておけ」
俺は力強くマユに返事をした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます