異世界の常識!?そんな事は知らん!!
しょうわな人
第1話 飛ばされたおっさんと女子高生、その他3名
今日は珍しく定時で家路につく事が出来た。いつもなら残業確定だったが、後輩が妻と子供の命日だと知っていて気を使ってくれた。亡くなって25年になるが、未だに悲しみが消えない。
そんな事を考えながらトボトボ歩いていたら前方の路地からイライラとした年若い男の声が聞こえた。
「だ~か~ら~、もう学校に来んなって言ってんだよ! 臭いし、不潔だからよっ!」
被さるように女の声が、
「そうよ、あんたが居るから私達の組全体が臭いって他の組の子から言われてるんだからね!」
良く見ると1人の少女が同じ組らしい少年1人と少女2人に詰め寄られているようだ。詰め寄られている少女は線が細いというよりは栄養不足だろ?というレベルで痩せていた。少年達はまだ俺には気付いてないようで、
「お前も自分でも分かってんだろうがよ。マユよ~。頭もボサボサで歩く度にフケを巻き散らかしてよ~。成績が良いからって教師は何も言わねえけど、お前が居るだけで皆の成績は落ちてんだよっ!」
と言うと、自分の言葉に興奮したのか少年はマユと呼んだ少女を突飛ばし、倒れた少女を更に蹴ろうとしたので、
「こらっ! 何してるんだっ!」
と声を掛けながら倒れた少女の前に走り込んだ。
少年少女達は突然現れたおっさんにビックリしたようだが、俺の容姿を見て馬鹿にしたようにニヤニヤし始めた。そして、
「おっさん、何?関係ないんだから引っ込んでろよ。妙な正義感だしてると大怪我すんぞ。チビでデブでトロそうなんだからよ~」
(チビでデブは合ってるなぁ~。でも、1ヵ月かけてやっと10kg減量出来たんだけどなぁ。)
と頭の中で考えていた。確かに目の前の少年は身長180㎝を超えてて、高校生にしては鍛えられた体つきをしている。一方の俺は身長は165㎝で体重も78kgとメタボな体だ。年も49歳だしな。
俺が黙っているとビビっていると勘違いしたのか後ろのお馬鹿そうな少女が、
「な~に~? オッサン、このガリ子を助けて後でよろしくしてもらおうって考えてたの? キモッ! ビビって何も言えなくなるなら最初から出てくんなってね。ねぇ、タツヤ」
(少年の名前はタツヤか。情報を有り難う。馬鹿少女。序に君の名前は?)
「ミドリの言う通りだぜ。オッサン。ビビる位なら出てくんなよ」
(馬鹿はミドリと・・・。メモメモ。さて、後1人は何ちゃんかな~?)
「本当に気持ち悪い。中年小太りは生きていてはダメだと思うわ」
(毒舌でた~っ。まあ、名前は?)
もう1人の名前の分からない少女の言葉を聞いてタツヤとミドリが大笑いする。そして、
「あ~、ホントにアヤカは口が悪いよな~、オッサンも更にビビって声もだせなくなってんじゃん!」
(はい、お名前ゲット~。タツヤ、ミドリ、アヤカね。君たちに黙秘権はないよ。フフフ。)
「さて、君たちは山海高校の2年生のようだね。名前も分かったから今から学校に連絡をしようと思う」
と俺が冷静に喋りだし、スマホを取り出したらタツヤ少年が慌てて、
「ばっ馬鹿じゃねぇの。俺らはさっ、山海高校じゃねぇよ。だから学校に電話してもいっ、意味ねぇんだよ。オッサン。それ以上スマホ触るなら殴るぞっ!」
と言いながら殴りかかってきた。本当に馬鹿だっ。
俺は余裕を持ってその拳を捌こうとした時だった。地面がいきなり光輝き、俺を含む5人は恐らく意識を失った。
光が収まった路地には最初から人など居なかったように静寂な佇まいをしていた・・・。
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