第23話 実際の勇者達は①

 あの後、俺は先に風呂を出てベッドで横になっていたが、マユが中々出てこないので目を瞑って風呂場に行きマユに声を掛けたが返事がない…… これは大変だと思いきって目を開けると湯船で逆上せたマユがいた。

 慌ててまた目を瞑り、手探りでマユを抱えて脱衣所で体を拭き、どうやって服を着せようかと考えていると、


「私の大事な所も触れられてしまったから、責任取って下さいね。タモツさん」


 とマユがいきなり喋り出したので、


「大丈夫か? 逆上せた様子だったけど、もうフラフラはしてないか?」


 と真剣に心配してやると、


「ごっご免なさい。心配させてしまって。体を拭いて貰ってる途中で気がついてました。頭もスッキリしてますし、大丈夫です」


 と、返事があってからコツンッとマユの頭を叩き、


「のんびり風呂に入るのは良いけど、逆上せる前に出るように。それと、大丈夫なら自分で服を着てくれよ。オッサンには難易度が高過ぎる」


 と笑いながら言って脱衣所を出た。


 そして今日はもう寝て明日の朝早めに行動予定を決めようという事になり、お互いに眠りについた。


 翌早朝、俺はマユに


「タツヤの様子を見に行こうと思う」


 と伝えるとマユは、


「私はそのタツヤに心を壊された侯爵令嬢を探して会いたいです」


 と言ってきた。


「うん? 会ってどうするんだ?」


「会ってその壊れた心を何とかしてあげられないかと思ったんです。多分なんですけど、この街の何処かにまだ居ると思うので。此方の世界から見て異世界人になる地球の人が全て馬鹿ばかりだと思われたくないという自己満足の感情なんですけど……」


 とマユは言うが、俺は


「うん。良いよ。自己満足でも何でもマユがそうしたいならすれば良いさ。但し、慎重に行動するんだぞ。その令嬢の親父さんはマユが異世界人だと知ると復讐対象にするかも知れないしな」


「ん、はい。分かりました。慎重に考えて行動します」


「良し、まあ何かあったら念話で連絡してくれ。直ぐに駆け付けるから。それと、今日は19時に街外の転移した場所で落ち合おうや」


「はい。分かりました、タモツさんも気をつけて下さいね」


「了解!それじゃ、19時に」


 俺とマユは二手に別れた。





「さてと、あの馬鹿ボンは何処に居ますかね~【想像:索敵】」


 俺は技能を使ってタツヤに目標を定める。


「おっ居た居た。なんだ、野営してるのか? 街の外だな。南側か。他にも居るな、騎士団かな? まあ、取り敢えず近付いて見るか」


 俺は念の為に【隠蔽】と【隠密】を使用してタツヤが居る場所に近付いて行った。



「だ~か~ら~、言ってるだろうがよ! こんな女気のない場所にずっと居らされるとレベルを上げようって気にならねぇって!!」


『おっ聞こえてきたねぇ。久しぶりに聞くがヤッパリ馬鹿だな』


「タツヤ殿、しかしながらせめてレベルを2は上げなければ城には戻れませんぞ。姫からはそう申しつかっておりますのでな」


 立派な口髭を蓄えた偉丈夫な男がそう言っている。団長かな?


「だからよ~、俺は女が居ないと成長しない様になってんだよっ! いい加減に解れよ! 街から見た目が良い女を連れて来いよ! 多少年増でも構わねぇからよ! そしたら2レベルぐらいすぐに上げてやらぁ!」


「しかし、そうして連れてきた街娘も既に8人、タツヤ殿は壊し(殺し)ております。一応、姫からはタツヤ殿の意向を聞くように言われておりますが、我ら騎士団としてはこれ以上は無理です」


 と、団長らしきオッサン(俺もオッサンだが。)と押し問答をしている。しかし、あの馬鹿は娘さん達に何をしてるんだ。怒りが沸き上がるが、今は我慢だ。とりあえず奴の事を見てみよう。


『【見(検)分眼】』


 :名前 タツヤ

 :称号 強姦魔、鬼畜、失格勇者

 :職業 勇者を超えし者(史上最悪の色魔)

 :レベル 10(36)

 :経験値 6,788/7,500(27,917/29,500)

 :HP 2,635/2,514(15,795/12,322)

 :MP 895/618(2,985/2,985)

 :武器 白光剣+250(-1,550)

 :防具 勇光鎧+600(-1,200)

 :物攻1,700(9,850-1,550):物防2,200(8,600-1,200)

 :魔攻950(6,875-1,550) :魔防1,800(9,585-1,200)

 :スキル 全勇者固有魔法Lv.3/10

      回復魔法Lv.2/5

      (絶倫Lv.8/10)

      (色欲魔Lv.7/10)


状態:【異常】 

 悪しき性欲に支配され、勇者の本文から外れた為に勇者としての成長阻害が起こっている。その為に正しい心に力を貸す聖武具が、本来の機能を果たしていない。このままだと、数ヶ月で魔王になる恐れがあり、聖武具は壊れる。


 チーーーーンッ!!

 

『レベルも噂より低いし。隠れ職業がついてるな。最悪なやつが。それにしても隠れ職業のレベルは異様に上がってるな。これはもう勇者としては終わったな。称号(失格勇者)にも出てるし。こりゃ、もう1人の馬鹿もヤバイかもな。こっち(タツヤ)はもう見なくて良いから、あっち(ミドリ)を見に行ってみよう』


 俺はそう考え、この場を後にした……

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る