第43話 組合支部(鍛冶①)

 俺とマユは遅れる事なく宿の前にいた。しかし、アヤカとライは…… 

 流石に約束の時間を15分以上過ぎたので、仲居さんにお願いして呼んで来て貰う。

 寝不足の顔を見れば察しがつく…… それでもライだけじゃなく、アヤカもとは?


「師匠、申し訳ありません。昨夜は中々接戦で決着がつくのが遅くなってしまって…… ふわぁ~~~」


「マユ、ごめんね。待たせてしまって…… あふぅ~~」


 2人ともアクビが最後に出てる。眠そうだが、買取してもらえるか、そしてその方法なんかも1人1人知っておく方が良いので我慢して貰おう。


「まあ、そんなに時間は掛からないだろうから、眠気を堪えてくれ。終わったら宿で寝てても構わないから」


「「はぁ(ふぁ)~い」」


 頼りない返事を聞いて組合支部がある場所に向かう。ダーカ村には、【冒険者】【商業】【鍛冶】の3つの組合の支部が横並びであるそうだ。【飲食】組合の支部は無いそうだが、【商業】の方で食肉を買取してくれるらしい。そこで、俺達はまず始めに【鍛冶】に行ってみる事にした。


 炉と金槌が描かれた看板が見えた。下に【鍛冶】と書かれている。間違いないな。


「良し、ここみたいだ。入ろうか」


「「「はい」」」


 扉を開けて4人でゾロゾロと中に入る。するとカウンターが並んでいて、【鍛冶依頼】・【修繕依頼】・【素材買取】・【素材販売】と別れている。


「素材の買取だけじゃなくて、販売もしてるんですね」


 マユが気づいてそう言った。


「ああ、そうみたいだな。幸いにも、買取カウンターには誰も並んでないから、直ぐに受付して貰えそうだな」


「そうですね。ここで、全部の素材を出しますか?」


「いや、ここでは低レベルの素材を出してみるよ。どれくらいになるのか、値段を知りたい」


 そう言いながら俺はカウンターに行き、受付に座っている眼鏡を掛けた真面目そうなお兄ちゃんに声を掛けた。


「素材の買取をお願いしたいんだが、ここで良いのかな?」


「はい、買取は此方こちらで受付ております。主に鉱石、魔石、魔獣の角・牙・爪・骨・皮などですが、何処かの組合には所属されてますか?」


「いや、俺達は組合には所属してない」


「ああ、矢張そうですか。人族の方なのでそうではないかと思ってました。規則で組合員ではない方からの買取は出来ないのですが、宜しければ何処かの組合に所属して頂けますでしょうか?」


 丁寧な対応に気分も良いが、ユグドから聞いた通りに通行証を出してお兄ちゃんに見せる。


「俺達が聞いた話では、コレが俺達の身分を証明するって聞いたんだが? コレじゃダメかな?」


 俺が出した通行証を見たお兄ちゃんが、椅子から飛び上がってそのままカウンターの上で土下座して叫んだ!?


「知らぬ事とは言え、ユグド様の最も大切なお客様に大変、失礼致しましたぁ!!! この身はどうなっても構いません!! しかし、私の身内である幼い妹の命だけはどうかお許し下さい!!! 伏して、伏して、お願い申し上げますっ!!!」


 俺達、ポカーン…… マユが最初に正気に戻った。


「あっ、あの何か誤解があるようなのですが、私達は通行証コレが、身分証変わりになるとユグドさんから聞いてまして、買取もして貰えると聞いてたのでお見せしただけなんですけど…… 取り敢えず、あの、土下座は止めて椅子に座り直していただけますか?」


 マユがそう言っても、お兄ちゃんは、


「いえっ! それでは、私が言った非常に失礼な言葉の謝罪になりません! 私の命だけでお許し頂けると言質をいただかないと、椅子に座り直す事などはできません!!」


 そこで俺も正気に戻ったので、お兄ちゃんを掴んで椅子に座り直させて、一言。


「早とちりが過ぎるっ!!」


 威圧を込めて一喝!


 すると真面目なお兄ちゃんはハッとして、


「すっ、すみません。いつも妹にも注意されるのですが……」


 と、項垂れた。


「俺達はユグドからちゃんと話を聞いてきてるから。組合員以外では買取はして貰えないが、この通行証を見せれば買取してくれると聞いている。ただ、それだけの事であって、謝罪される様な事じゃない」


「大変、失礼致しました。このランゲインではユグド様は3代前の王でして、先代と今の王の教育をなされた方でもあります。今でも国民の多大なる信頼を得ておられまして…… その方が心から信頼する者にしか渡されない身分証をお持ちでしたので、つい早とちりをしてしまって…… 申し遅れました、買取受付を担当しております、ドワーフとノームのハーフで、ガザフと申します」

  

 やっと落ち着いたガザフは仕事が出来る状態になったようだ。それにしてもユグドが3代前の王様だったとは…… 何が悲しい宮仕えだよ! その事にビックリはしたが、気を取り直して、


「それじゃあ、ここに出しても良いかな? 魔獣素材なんだが。解体は済んでて、角・牙・爪・骨・皮だけど、量が多いんだ」


 俺がそう言うと、ガザフは


「量が多いのであれば彼方あちらの部屋でお受取り致します。よろしいでしょうか?」


 と、カウンターの奥の部屋を指し示した。


「ああ、分かった。カウンターの奥に入っても良いのか?」


「はい、私が同行します。そのまま、私が部屋で査定も担当しますので。では、此方こちらへどうぞ」


 と、案内されたので俺達はガザフに続いて部屋に入った。

 

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