第14話 その頃、勇者達は・・・②

ミドリ・・・


「やだ~広~い。ターッチ、お風呂はあるの~?」


「はい、ミドリ様。左の扉になります」


「わ~い。じゃあ、ターッチ一緒に入ろ!」


「ミドリ様、よろしいのですか?勿論、私には疚しい気持ちは微塵もございませんが、妙齢のミドリ様の様に美しい女性と共に入るとなると、私も理性を保つ自信が……」


「アハハ~。な~に言ってんのよ。ターッチ! 男と女が居たらやることは1つでしょ! やることやって、汗を流してサッパリしましょ!!」


「はい!喜んで!!」


「ギャハハ、何処の居酒屋よ~。」



アヤカ・・・

 

 アヤカはライに案内された部屋に入ると、扉の鍵を掛けた。そしてベッドへ向かい腰かける。そのまま無言でライを見つめている……


 見つめられているライは幾分か顔を赤らめながらアヤカに問い掛ける。


「アヤカ様、お食事の用意が整うまで暫くはお待ち頂く事になろうかと存じます。ですので、宜しければこの部屋に備え付けられております、お風呂で汗をお流しになられては如何でしょうか?」

 

 アヤカは問いかけられても答える事をせずに、ライをじっと見つめている。その目はライを見ているが思考は別の事を考えていた。


『ライには何も画策するような意思を感じられない。なので、本当に私の世話を命じられているだけのようね。では、少しこの部屋を調べて見ましょうかしら……』


 アヤカは知っていた。魔法とはイメージが大切だと。そして、自分の魔法の可能性も。


 『全防御魔法展開。展開の際に他の魔法を感知、分析……』


 ・・・・・・・・・・・・・・


『やっぱりあったわね。極弱い物だけど、盗聴魔法のようね。あら、防御魔法のLvが2に上がったわ。そうね、これで展開の仕方を変えましょう。全防御魔法展開。範囲結界。結界内の会話を卑猥ひわいな言葉に変換して放出。これで色狂いと見て油断してもらいましょう。』


 そこまで手を打ってからようやくライに声をかけた。


「ライ、此方こちらに来て座りなさい。少しお話をしましょう(ライ、このベッドで良い事をしましょう。)」


 突然にアヤカから( )声をかけられたライは顔を真っ赤にして、


「アッアヤカ様。そんな事はなりません!」


 と言いながらも、フラフラとベッドに近づいてアヤカの隣に座った。勿論、結界内である。


「さて、ライ。さっきは私はこっちに来て話をしましょうと言ったのだけど、貴方には違う様に聞こえたと思うわ。ご免なさいね。勿論、話の後に良い事をしても良いのだけど。フフッ(さあ、ライ。服を脱いで、お風呂に入る前に貴方をよーく見せて私を楽しませてちょうだい。)」


「アヤカ様・・・。お戯れを(アッアヤカ様~。そこはダメでございます~。)」


 ライは少し残念そうな顔を見せたが、何とか言葉を出した。


「少しライに聞きたいのだけど、答えられなければ無理に答える事はないわ。もし、知っていたら教えてちょうだい(フフッフフッ、ここかしら、それともこっちの方が良いの・・・)」


「はい。承知しました(ああ~、アヤカ様!そこは、そこは~~~。)」


「先ずここは、ハイレッカ王国の王都ではないわよね? (ウフフ、ライったら可愛いわ~。)」


「はい。ここはハイレッカ王国の西の辺境で、レイン王女の支配地域になります。名前もそのまま、【辺境レイン】と申します(アッアッ、アヤカ様、もう、もう、ダメでございます~。)」


「今回、私達は召喚された訳だけれどそれは国王も認めている事なのかしら(まだよ、ライ。まだ逝っちゃダメよ~。)」


「いえ、国王陛下や王太子殿下はご存じないと思います。それに陛下は、レイン王女様の事を諦めておられます。王女が何をしても無視されておいでです。それとレイン王女が魔族と呼んでいるのも、種族は違えど人族です。異世界の方にも有名なドワーフ、エルフ、ゴブリンやコボルト、オーク、オーガ等の種名がありますが、私共の世界では神々の元で皆等しく人族だと教えられております。違うのは悪魔と呼ばれる人でない者達だけです(アヤカ様~、アヤカ様~、私はもう、もう、ハアハア・・・)」


「そう、ならばレインは何故、それら人族を魔族と呼んで攻めようとしているの? (自主規制ピーッ!)」


「それが、分からないのです。ただ、ガルバ様が王女様のお付になってから、少しずつ王女様が今の様な考えに変わっていったと皆に言われています(ピーッ!)」


「そうなのね。有り難う、ライ。大体は分かったわ。因みにこの部屋には盗聴魔法が仕掛けられているのをライは知っていた? (ピーッ)」


「なっなんですってっ!勇者様に何と失礼な事を…… 申し訳ございません(ピーッ!)」


「フフッ、良いのよ。ライ。私が魔法を展開して、私と貴方の会話は盗聴している方達には卑猥な会話に聞こえているから。ウフフ(ピーッ!)」


「なっ・・・さっ左様でございますか。ならば安心ですね(ピーッ!)」


「そう、安心なの。でね、ライ。ライは私についてお世話をしてくれるらしいけど、私としてはライにパートナーになって欲しいの、心身共にね。『だって、少し華奢で線が細くて可愛らしい顔立ちって、私の好みのド真ん中なんですもの。性格も良さそうだし』(ピーッ!)」


「アヤカ様!アヤカ様さえ宜しければ、このライ! アヤカ様に身も心も捧げます!!(ピーッ!)」


「あら、じゃあ今から証拠を見せて。一緒にお風呂に入りましょう(ピーッ!)」


 そして、浴場では本当の嬌声が鳴り響いた…… アヤカも矢張ギャルだった……





 ( )内の言葉が盗聴相手に聞かれている会話という事になります。

 

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