第28話 まいた種……
時は少しだけ遡り、転移したタモツと【雑】は外の空の上に居た。
「ぬ、ぐぐぐ、貴様は一体何者じゃ! ワシをどうにか出来ると思っておるのか? 先程までは借物の身体だった故に力を出しきれなかったが、今ならば全力を出せる! 貴様は見誤ったのじゃ! これで終いじゃ! 死ね! 【暗黒大牢】!」
タモツの四方八方から暗黒の壁が迫る!
「はいはい。【剛腕杖】ほいっ!」
タモツが声と共に剛腕杖を縦360度、横360度に振ると壁はアッサリ消えた。
「なっなっなっ、馬鹿なーーーっ!」
【雑】が叫ぶ。
「ワシは堕神様に力を直接授かった眷属じゃぞ! 人間ごときの力でワシの技を消せる訳がっ!?」
「だーー!五月蝿いぞ、【雑】! 〖おちがみ〗だか〖おりがみ〗だかの眷属かしらないが、お前は俺の娘に手を出したんだ。今から滅す! 古武術:流水、対妖怪技【業滅打】!!」
タモツが剛腕杖を【雑】に向かって振ると、【雑】は声もあげずに消滅した。実にアッサリとしたものだった。そして、タモツは一軒家に転移で戻った。
マユの一言の後に、
「えっと、あ~、スマン。タモツ殿とお呼びすれば良いか? 今の言葉は本当だろうか? 娘の身体は元に戻ったと?」
「おお、本当だよ。カイゼル元侯爵。あっ、口が悪いのは勘弁してくれ。庶民だし、あんたよりも年上だしな」
タモツがニヤッと笑いながら言うと、
「ああ、気にしないでくれ。私も今は庶民だ。そして、心から礼を言う。娘の身体を戻してくれて有り難う」
と深々と頭を下げた……
「おっ、お父様、信用するんですの? この胡散臭い男性の言う事を!」
カミナは父にそう問う。と、マユが、
「カミナさん、私の大切な人が胡散臭いですか……?」
般若の威圧が出た状態でカミナに問うた。
「ひいっ!マッ、マユさん! ちが、違いますの……」
「お~い、マユ。威圧を消せ、消せ。カミナ嬢ちゃんがチビりそうだぞ」
「マッ、マユ、落ち着いて。カミナさんは事情を知らないんだから。ねっ」
「マユさん、怖い……」
最後はライのセリフだ。
俺やアヤカから言われたマユは顔を赤くして、
「ご免なさい。カミナさん。でもタモツさんの事は信じて大丈夫だから。私が保証するわ」
と、優しい声音で言った。
「はひ。信じます~……」
カミナは半泣きでそう言った。
「で、だ。アヤカやライ、それにカイゼルやカミナ嬢ちゃんに、更にこの領都に住む人々にも関係する話があるんだが、落ち着いて話せる場所はあるか?」
と、俺が言うと
「では、此方に来てくれ。全員が座って話が出来る部屋がある」
とカイゼルが言ってカミナの部屋を出た。皆でそれに付いていき、部屋に入り椅子に座る。
「それで、タモツ殿。話とは?」
「ああ、アヤカ以外の2人の勇者だが、人々にとっての悪に染まりかけている。というか、もう悪になってしまっているな。それで、このまま放置していると、この領都に住む人々を滅ぼした上に世界中に向けて悪を広げて行こうとするだろう」
タモツがそう言うと、アヤカが、
「やっぱり、そうなったんですね。私が城を出る前から2人には快楽に身を任すのは危険だと何度も警告したんですが……」
「アレは元からの資質からして警告しても無理だったろうな。でも、アヤカは何で城を出たんだ?」
「ライの言動がおかしくなったので調べたらあの王女付きの爺や(ガルバ)に洗脳されていたからです。急いで洗脳を解いて、その足で神殿に向かい神殿長に話して住まわせて貰う事にしました。その後に色々と活動して、祈りを捧げていたら豊穣神から加護を頂きました」
「えっ?カミナは神様から加護を頂いてるの?鑑定では出なかったけど……」
「おお、貰ってるぞ。普通の鑑定じゃ出ないようだな。それに、隠れ職業で【
「なっ、タモツさん、見えたんですか!? 豊穣神からは見えない様に隠しておくと告げられたのですが……」
アヤカが驚いた様に言うので、
「ああ、スマン。見えた。けど見えたから呪いにも気づいたんだけどな。後、お前は良い感じにいってるよ。【想像力】があったが、Lv.はまだ低いな」
「あなたは一体……」
アヤカが呟くと、神官の1人が、
「失礼します、タモツ殿。私は神殿長のサガナと申します。先程のお話ですが、私共は神より聞いておりませんでした。しかし、今、神よりお告げが届きました。タモツ殿の言う通りだと…… そして、これからどう動けば良いかタモツ殿に相談せよとも…… 今回のようなお告げは初めてなので私も戸惑っておりますが…… 我々はどうすれば良いでしょうか?」
神殿長の問い掛けにタモツは、
「おいおい、勘弁してくれよ。俺はマユと2人でこの世界を旅して、安住の地を探したいだけだ。そもそも、呼び出されたのもイレギュラーだし勝手に召喚した者がヤバイ奴に成りそうだからって俺達には関係ないな。どう動くかは自分達で決めてくれ。今回、この話をしたのは
タモツがそう言うとマユが、
「タモツさん…… 私は手助け出来る事があるなら手助けしたい……です」
「マユ、1つだけ言っておくけど自分達でまいた種はその人達自身で対処して貰わないと、後々困るのはその人達になるぞ」
「でも、タモツさん。まいた種と言っても普通に住んでる人達は関係ないですよね」
マユはそう言うがタモツは、
「いや、それは違うぞ。マユ、確かに勝手に召喚したのは王女レインだが、王女は今までにも何度もやらかしてきたんだろう? そのやらかしを止めなかった王族もそうだし、側近達もそうだ。そして、やらかしを庶民も知っていたと言う話だから、それを止めて貰う様に王族に嘆願をしなかった庶民にも関わりがあるって事になるよ。本当にまいた種に関わりがないって言えるのはこの世界には居ないと俺は思うぞ。だから、それに対処するのは俺達じゃダメなんだ」
タモツの言葉に皆は沈黙したのだった……
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