第3話 もう直ぐで1周年なので少し病院を振り返る

先生の独立について来てもう一年になろうとしている。時間が過ぎるのは速いなと感じている。信頼してくれた患者さんが少しずつだけど増えて来て、通い続けてくれている。その紹介で新しい患者さんが来院して下さったりもしている。数多くの心療内科の中でうちの病院を選んで頂いているので、ちゃんと尽くしていきたいと思っている。


当時の病院の経営はどうなっているかと言うと、去年の10月~12月は開業したてなので認知されていないって事あるのか、1日開けて1人~3人の日々だった。幸いな事に0人と言うのは殆ど経験しないで過ごせていた。そして1人でも来て下さったら感謝をしていた。この時期の私は鬱を乗り切ったけど自律神経失調症をまだ患っていて、元勤め先の精神科から離れた事により何もしなくていいという解放感に浸かっていた。誰も来ない時には寝たり、漫画を読んだり、ゲームをしたりと今まで苦労した分をここで取り戻すんだと堕落した。だけどバキバキに働いていたせいもあってか、「こんなに、だらけてて良いのか?」という焦燥感に駆られて、掃除とか無駄に行っていたけど、それも終わってしまった時は仕方なく漫画とかを読む。でも「こうやって毎日を潰していくのか?」と社会から孤立しているのではないかとずっと悩んでいた様な気がする。


元々、鬱になる前もアル中とかで身体を壊し過ぎて、看護師と言う業界から離れるかどうかの中で、以前から話に出ていた先生の独立の話が浮上した。当時の私は病院の環境がもう合わなくなって離れたいってだけで、看護師の仕事は好きだったし全く違う世界に行くのは、病院を開業して運悪く廃業した後も出来るなと思い、駄目もとで先生と創業補助の支援を受ける為に動いた。この時点でもし落ちていたら私は看護師を完全に辞めていたのだけれど、創業補助を受けれる事になり今に至る。「駄目もとだー!失敗しても立派な車を買って廃車にしたくらいに思えばいい!」とは思っているのだが、内心はずっと続けられたらって気持ちがあるから焦るのだと思う。


コロナウィルスが蔓延して県の活動が停滞した時、0人という日を何日か経験する事になりその時も焦っていたし、住んでいる市で感染者が出てしまい過去最低の窓口売り上げになった時も相当落ち込んだ。8月は徐々にだけどまた患者さんが増えてきている。でもずっとこのままだと一応、まだ補助金はあるので来年までは持つけれどそれ以降は…という感じである。何だかんだ軌道に乗るなら嬉しい限りである。駄目ならまぁ…コロナとかあるけれどある意味、健康的な社会になっている証拠なのかも知れない。


私もそうだし周りもそうだけど、世間が複雑になって来ているので、人と関わっていく事で心の苦しさが解消されて行くってよりは、寧ろ擦り減っていくような気がする。私達の周りは真偽はともかく選択や情報の密だったりする。刺激が多くて詰め込まれ過ぎてパンクしてしまう。江戸時代の人は新聞紙4枚程度の知識だけで生きて来れたそうだ。本来はそれくらいで十分なのかも知れない。でも今は辞書を作るぞ!みたいな感じなので、心身に隙間が無く余裕が出来ないのかも知れない。「頭空っぽの方が夢を詰め込めるぜ!」って台詞を聞いた事あるが、本当のような気がする。


こういっては問題なのだろけど、コロナ鬱って言葉が世間的に広まって、確かにそういった患者さんがうちの病院にも来た。だけどそれ以上に、在宅勤務とか自粛生活になってから体調が優れている人が私の周りでは実は増えてきている。(あくまでも私の周りだけ。)きっと余計な人付き合いがなく、自分にとって必要なものだけがある。デトックスされた生活になっているからだと思う。経済的には大変だし、社会的な制限は確かにあるけれど健康的に見える。


私や先生はメンタルを取り扱う職業に勤めているから、自分達の事を考えるなら来てもらわないと確かに困るけど、でもこれから心を病まずに済むような社会になって行き淘汰されていくならそれで良いと思っている。これはオカルトな話ではあるけど、精神病院があるから心が病むなんて話もあるしね。

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