第53話 ここから出してという映画を作りたい

【あらすじ】

とある大手掲示板の1カテゴリ「ヒッキー・ニート板」。その名の通り、様々な挫折を得て部屋に引き籠ってしまっている人達の集いである。彼らの中では外の社会は邪悪であり、掲示板に書き込むことが主な生活活動である。1人の男が今日も馬鹿みたいな社会に掲示板で文句を垂れようとすると、とあるスレッドが目に付く。


【緊急】めっちゃ、ドアを叩かれてんだけど!

1.名も無きヒッキーさん IDAAA

ドアぶっ壊れそうなんだけど…なにこれ、怖い。


掲示板の住人は親がキレたんだろう。殺されるかも知れんから武器を持て、引きこもり更正業者だろ。諦めろなど様々な意見をマジ半分、茶化し半分で話していた。


そして

100.名も無きヒッキーさん IDAAA

なんか、声出しても返事帰って来ない…なんなのこれ…。

ちょっと、勇気出して開けてみる。


という書き込みを最後にIDAAAからの書き込みがなくなる。その後も1の安否を待っていると今度は数人の住人も同様の現象が起き始める。その中には退職してアパートに一人引きこもっている住人もおり、親でも業者でもない”ナニカ”の存在なのではないかと騒ぎになる。


男は「はいはい、今頃こんなの誰も引っ掛からねぇよ。」と言いながらも画面にくぎ付けになっている。そして皆、ドアがぶっ壊れそうな程に叩かれるその音に耐えかねて、様子を見に行ったきり帰って来なくなった。次々と消えて行くスレッドの住人達。そうやっているといつの間にか男ともう一人だけになっていた。そして相手の方も部屋のドアがバンバンと鳴り出しているそうだ。



900.名も無きヒッキーさん IDZZZ

俺の所も鳴り出した。何コレ、凄い煩い!めっちゃ怖い!でも、出たらどうなるんだ?俺、部屋にいても餓死だし詰んだじゃん!


901.名も無きヒッキーさん IDBBB

耐えろ!なんか分からんけど、出たらお終いだぞ!


902.名も無きヒッキーさん IDZZZ

>>901

正直ちょっと耐えられん。俺は此処から出る事にする。ただ、今からツイキャスをダウンロードしてビデオ配信にする。それを見て何が起きているのか、お前だけでも知って決めて欲しい。


その後ツイキャスのURLが張られ、ドアにPCカメラが向けられる形で配信が行われた。


「来たか…。凄い音だろ?聞き取れるか分かんないけど、俺は出てみるよ…。もし、仮に死んだとしても、俺らは既に生きながら死んでいる様なもんだ。怖く…ない!」


そういってドアを開けた途端、目の前に黒い世界が広がっており、そこから得体の知れない手が伸びて男を取り込んだ。男は恐怖に声も出せないでいると、自分の部屋のドアがドンドンと鳴り出した。男は布団を被り耳を塞いだ。


そして「こんなの出れる訳ねえじゃん!」と泣いた。みたいな映画ですね。社会問題ホラーです。いやぁ~作りてぇです。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る