第39話 返事をしないといけないマンション

そう言えばツイキャスをしていた頃にサラッと話を出して、それっきりの話題があった。私のお姉ちゃんは万屋をしている。犬の散歩や草刈り、障子の張替えに掃除のお手伝い等、とにかく色んなことをするんだけど、中には少し変わった内容の依頼が来る事も有るんですね。


八月の中旬だったと思う。お姉ちゃんはとあるマンションの住人から依頼を受けたのさ。旅行に行きたいのでその間だけこの部屋に住んでてもらえないだろうか?という話だった。「別に良いですけど…こう言っては何ですが動物を飼っている訳では無いですし、そのぉ…開けても大丈夫なんじゃないでしょうか?」と素朴な疑問をぶつけたそうな。すると依頼主は「いやぁ…コロナの影響もあって中々、遠出すると人の目があるじゃないですか、だけど君が居てくれるとちょっと誤魔化せるかなと思って。」「はぁーなるほど!考え付かなかったです!」「そういう訳でよろしくお願いしたいんだけど、でも守って欲しい事があるのね。」「ええ、なんでしょうか?」


この部屋のものは弄るなとかそんなんかなと思ったそうですが、なんとも変なお願い事で必ず、外出したら行ってきます。帰ってきたらただいま等の挨拶をしっかりする事。声を掛けられるから、何でもいいから返事をする事だそうです。「分かりました…。因みにそのぉ…うっかり出来なかった時はどうなるんですかね?」「いやぁ、私も前に住んでいた人に言われてずっとやって来てるから分からないんだよね。まぁ、察してくれ。」「ええ…」と言った感じでマンション生活が始まった訳です。


結構、広くて大きなマンションで、この中で好き勝手やって良いの?ってピザとか出前を頼んで豪遊してたんですけど、「████░」って声が聞こえてとっさに「はい!」って返事したらしいんです。(そうか、これが言ってた奴か…)と暗い気持ちになったそうです。声は脳に直接ってか部屋の何処からか聞こえてくる感じ。キッチンの方から「████░」テレビの方から「████░」なんて言ってるか分からないけど自分に対して語り掛けて来ているのが感じられるそうです。変な依頼でも鋼のメンタルで乗り切ってきたお姉ちゃんですが、経験上「危ない奴だ」となったみたいで、とにかく神経を使ったそうです。


無事に依頼が終わった後も不安なのか、「ドア開けるねー」とかやたら行動の宣言しまくってましたね。もし、返事を返さなかったり「ただいまー」と言わずに家に入った時にどうなっていたのでしょう?今となっては知る事は出来ません。

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