概要
拒絶と許容、対極の二人のカタストロフが幕を開ける
「キリストは」と正平が言った。「一つだけ偉大な思想を後世に遺した。人間は平等であり、人権を有している、と。日本はキリスト教圏の国じゃない。アメリカは日本人を人間だと思っていない。猿の群れに、特殊爆弾を使用しても、心は痛まない。日本人にも人権などという発想がないから、特高は政治犯や思想犯に対して、ずいぶんひどい拷問を繰り出したそうじゃないか。日本人が神を畏れているのならば、こんなことにはならなかったはずなんだ。しかし日本の神は、その存在のせいで、日本の百姓を滅ぼしてしまうところだったんだ。現人神なんて祭祀は、これこそまさに非人道的じゃないか」
正平は歪んだ顔をしてふと押し黙った。
「それこそ人道的です」と幸作はしばらく間を置き答えた。「日本人は、日本人が信じるべき神のために武器を持ち、立ち上
正平は歪んだ顔をしてふと押し黙った。
「それこそ人道的です」と幸作はしばらく間を置き答えた。「日本人は、日本人が信じるべき神のために武器を持ち、立ち上
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