概要
女子高生「佐久野天奈」はその日、親友と休日のショッピングを満喫していた。
しかし突如として空から発生した巨大な紫の壁が街全体を囲い、人々を閉じ込めた。
平穏は終わりを告げる。
街中から突如溢れる、幽霊、妖怪、魑魅魍魎と呼ばれる無数数多の怪異。それらは理由なく人々に襲い掛かり命を貪る。
逃げ惑う天奈達、飛び交う血と悲鳴……異界と化した街で繰り広げられる命がけの遊戯。
異変は天奈の肉体にも起きた。髪は銀色に変わり生えてきたのは狐の耳と尻尾……人と怪異が混ざった奇跡「怪異融合者」へと少女は変化した。
そんな混迷の中、誰知らず異界に侵入してきた異物「音羽黒音」が嘲笑い舞い降りる。
「アハハハハ
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- ★★★ Excellent!!!非日常の世界でその人は怪異を狩り踊る
主人公の女子高生、佐久野天奈が住む街である矢染市に突然に起こる怪異から物語は始まっていきます。
街は謎の力により閉鎖空間となり、その中で人々は悪意を持つ怪異たちに襲われていきます。
絶望が蔓延る中で、それでも懸命に生きようとする天奈の前に現れたのは幼馴染であり遠い昔に離れてしまっていた音羽黒音。
黒音はゴシック服に身を包み、体に似合わぬ大鎌をふるい艶やかに、妖しく美しい笑みと共に次々と怪異を駆逐していきます。
なぜここで惨劇は起こったのか?
天奈を含む悪意ある怪異に抗うべき力を持つ存在「怪異融合者」達は、その理由を知るために黒音と共にその謎に挑んでいくことになります。
リズムよく綴られる文…続きを読む - ★★★ Excellent!!!明けない夜よ、明け給え! 少年少女、刃となりてその怪異を穿つべし
平和な地方都市、矢染市。
女子高生である天奈と潤子、何気なく過ごしていた休日は突如阿鼻叫喚の地獄絵図と化す——。
物語はそんな日常が非日常へと変化した恐怖からスタートします。
矢染市の空を覆う、紫色の壁。そこら中に蔓延る怪異達。
明確な悪意を持って人間達を蹂躙するそれになす術ないと思いきや……。
突如そこに舞い降りたのは、真っ赤な髪と黒いゴシック服、大鎌を携えた黒音。
物語はこの天奈と黒音、主に二人の視点によって紡がれていきます。
全ての混沌を切り裂く黒音と、淀みを癒し浄化する天奈。そして周りを囲む百鬼夜行のような個性溢れた仲間達。
妖怪変化の類が好きな人はもちろん…続きを読む - ★★★ Excellent!!!描写のギャップと共通性が非常に秀逸、もっと評価を得るべき。
この作品は、突如現れた「怪異」と登場人物たちが戦う姿が主に描かれている。良い特徴を挙げ始めれば、閉鎖され緊張感の高い舞台設定や、キャラクター自体の魅力の高さ、バトルシーンの爽快な文章の運びなど非常に多岐にわたるが、その中でも私が非常に素晴らしいと思った点をここでは紹介する。
それは描写のギャップ、もっと言えば「バトルシーン」と「日常シーン」の描写のされ方が非常に秀逸であることだ。バトルシーンでは大胆かつスピーディーに、日常シーンではほのぼのと、特にその中の感動的な場面では、キャラクターの心情をゆっくりと、事細かく丁寧に説明している。この差が作中の日常と非日常を明確に分け、その境目をは…続きを読む - ★★★ Excellent!!!恐怖ではなく怪異で魅せてくれる
平和な街が壁に覆われる…という設定は、ダンジョン攻略モノ、ダンジョンアタック系という事になるのでしょうか?
しかし、そのジャンルで多くの場合、環境と人間関係の双方で閉塞感が漂う印象があるのですが、本作には、そんな閉塞感や息苦しさが感じられません。
これは欠点ではなく、主人公の女子高生、メインとなる人間関係の中心にいる死神の存在が大きいという事だといえば、多くの人が読後に感じる長所と重なると思います。
二人に代表されるキャラクターの関係は、基本的には明るく、ストーリーのガジェットである紫の壁と、その内部に出てくる雪女や朧車といった妖怪の存在は、どこか遊園地のお化け屋敷を思い浮かべ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!最高に面白い現代怪異譚
平和な矢染市がある日突然、紫の壁で覆われ、無数の怪異達が蠢く異界となる。
そこに現れたゴシックの死神、音羽黒音。主人公の天奈が、黒音と再会することで物語は始まります。
のっぺらぼうに雪女、朧車など、妖怪が好きな人にはたまらない世界観。魑魅魍魎達が人々を襲い、時には救えない命が出てくることもあるダークでシリアスな物語ですが、決して暗くならないのは、魅力的に活躍してくれる登場人物の存在があるからでしょう。
コンダクターの異名を持つ死神、黒音はゴシックドレスを身に纏い、どこか飄々とした喋り方をするキャラクターです。
どんな時でも余裕の表情を崩さない黒音の強キャラ感に、読者は頼もしさを感じること…続きを読む - ★★★ Excellent!!!閉鎖された街はいい
山駆ける猫さんの『あたらよ空にゴシック詠え』のレビューを書くのに、何度か読み直して、その魅力は何なのか? を考えました。
偏った特徴を持った魅力的なキャラクター達? テンポの良い描写で描かれた戦闘シーン? 敵としての怪異? それとも死が迫っている緊迫感?
その魅力を挙げていけば、まだまだあると思うが、黒井はそこまで挙げて、それらすべてを生かしているのが、逃げ出せない閉鎖された街、という舞台装置なのではないか? と思い至りました。
ハリウッドのパニック映画みたいな逃げ出す事が出来ない街での物語は、脇役のキャラクター達の魅力までも引き出し、怪異達をより恐ろしくし、緊迫感を高めて、戦闘シーン…続きを読む - ★★★ Excellent!!!赩の死神、蒼の大鎌ふるう時、怪異は駆逐され銀狐の運命が大きく動き出す。
怪異が支配する矢染市。そこは紫の壁に閉ざされ現実と隔離された戦慄の世界だった。
そこで暮らす人々は怪異に戦慄し、明日すらも見いだせない過酷な環境下。人は怪異に抗い明日を見出そうと懸命に戦い抜くが、風前の灯火であろう。
しかし、苦境に立たされる人々を救う存在がいる。それは赤髪の死神。青の大鎌をふるい怪異を絶ち、華麗に空を舞う姿は人々を魅了してやまない。正に救世主と言えるであろう。
そんな死神に惹かれる者がいる。それは狐の少女である。二人は偶然出会ったことで運命に導かれるように互いに惹かれ合いそして、共に矢染市と人の運命を動かしていく……。
本作品は、一つの和風ファンタジーの形と言えるのではな…続きを読む