描写のギャップと共通性が非常に秀逸、もっと評価を得るべき。

 この作品は、突如現れた「怪異」と登場人物たちが戦う姿が主に描かれている。良い特徴を挙げ始めれば、閉鎖され緊張感の高い舞台設定や、キャラクター自体の魅力の高さ、バトルシーンの爽快な文章の運びなど非常に多岐にわたるが、その中でも私が非常に素晴らしいと思った点をここでは紹介する。

 それは描写のギャップ、もっと言えば「バトルシーン」と「日常シーン」の描写のされ方が非常に秀逸であることだ。バトルシーンでは大胆かつスピーディーに、日常シーンではほのぼのと、特にその中の感動的な場面では、キャラクターの心情をゆっくりと、事細かく丁寧に説明している。この差が作中の日常と非日常を明確に分け、その境目をはっきりさせている。そしてそこから、今の私たちの日常すらも、一瞬でも境界線を越えれば、簡単にこうした非日常に飲み込まれるかもしれない、という共感性を与えられる仕組みとなっている。

 しかしそうした描写の違いの中にはしっかりと、作者様の特徴である共通性も含まれている。それは描写の繊細さだ。バトルシーンであっても日常シーン、感動シーンであっても、その状況、そしてキャラクターたちの動き一つ一つが繊細に描写されている。そこに時間的な差異はあるものの、作者様の根底にある描写の繊細さが、この作品をよりリアルに、より鮮明にしている印象を受けた。

 正直、クオリティの高さに驚きました、この数倍評価がされていてもなんら不思議の無い作品です。「怪異」ものや「バトル」もの、近年人気を博しているキャラクター自体にも魅力があるもの、そういった作品が好みの方にはぜひ読んでいただきたい作品となっています。
 作者様、素晴らしい作品をありがとうございました。これからのご活動も楽しみにしております。

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