主人公の女子高生、佐久野天奈が住む街である矢染市に突然に起こる怪異から物語は始まっていきます。
街は謎の力により閉鎖空間となり、その中で人々は悪意を持つ怪異たちに襲われていきます。
絶望が蔓延る中で、それでも懸命に生きようとする天奈の前に現れたのは幼馴染であり遠い昔に離れてしまっていた音羽黒音。
黒音はゴシック服に身を包み、体に似合わぬ大鎌をふるい艶やかに、妖しく美しい笑みと共に次々と怪異を駆逐していきます。
なぜここで惨劇は起こったのか?
天奈を含む悪意ある怪異に抗うべき力を持つ存在「怪異融合者」達は、その理由を知るために黒音と共にその謎に挑んでいくことになります。
リズムよく綴られる文体。
それに乗り流れていくかのように黒音が操る鎌を、時にナイフをきらめかせる姿は舞い踊るかのように怪異を次々と狩っていきます。
はたして彼らはこの悪意を、閉ざされた壁を打ち破ることが出来るのか。
ぜひお読みいただき、その結末を知ってほしいと思います。
平和な地方都市、矢染市。
女子高生である天奈と潤子、何気なく過ごしていた休日は突如阿鼻叫喚の地獄絵図と化す——。
物語はそんな日常が非日常へと変化した恐怖からスタートします。
矢染市の空を覆う、紫色の壁。そこら中に蔓延る怪異達。
明確な悪意を持って人間達を蹂躙するそれになす術ないと思いきや……。
突如そこに舞い降りたのは、真っ赤な髪と黒いゴシック服、大鎌を携えた黒音。
物語はこの天奈と黒音、主に二人の視点によって紡がれていきます。
全ての混沌を切り裂く黒音と、淀みを癒し浄化する天奈。そして周りを囲む百鬼夜行のような個性溢れた仲間達。
妖怪変化の類が好きな人はもちろん、超人的な力を持つ可憐な人物と突如力を手に入れた普通の女の子のバトル、和と洋を融合させたセンスある言葉の羅列に各所に散りばめられた音楽的なエッセンス……と、兎に角あちらこちらにハマる要素が盛りだくさん!
だけど戦闘描写がまるで映像を見ているかのように美しく、とにかく頭を空っぽにして読んでほしい作品でもある。
夜を切り裂き、怪異を纏い、少年少女は常闇を穿つ——。
果たして矢染市は薄明を迎えることができるのか。
この恐怖のコンポーザーと、立ち向かうコンダクター、その邂逅をアナタも是非ご覧あれ♪
この作品は、突如現れた「怪異」と登場人物たちが戦う姿が主に描かれている。良い特徴を挙げ始めれば、閉鎖され緊張感の高い舞台設定や、キャラクター自体の魅力の高さ、バトルシーンの爽快な文章の運びなど非常に多岐にわたるが、その中でも私が非常に素晴らしいと思った点をここでは紹介する。
それは描写のギャップ、もっと言えば「バトルシーン」と「日常シーン」の描写のされ方が非常に秀逸であることだ。バトルシーンでは大胆かつスピーディーに、日常シーンではほのぼのと、特にその中の感動的な場面では、キャラクターの心情をゆっくりと、事細かく丁寧に説明している。この差が作中の日常と非日常を明確に分け、その境目をはっきりさせている。そしてそこから、今の私たちの日常すらも、一瞬でも境界線を越えれば、簡単にこうした非日常に飲み込まれるかもしれない、という共感性を与えられる仕組みとなっている。
しかしそうした描写の違いの中にはしっかりと、作者様の特徴である共通性も含まれている。それは描写の繊細さだ。バトルシーンであっても日常シーン、感動シーンであっても、その状況、そしてキャラクターたちの動き一つ一つが繊細に描写されている。そこに時間的な差異はあるものの、作者様の根底にある描写の繊細さが、この作品をよりリアルに、より鮮明にしている印象を受けた。
正直、クオリティの高さに驚きました、この数倍評価がされていてもなんら不思議の無い作品です。「怪異」ものや「バトル」もの、近年人気を博しているキャラクター自体にも魅力があるもの、そういった作品が好みの方にはぜひ読んでいただきたい作品となっています。
作者様、素晴らしい作品をありがとうございました。これからのご活動も楽しみにしております。
平和な街が壁に覆われる…という設定は、ダンジョン攻略モノ、ダンジョンアタック系という事になるのでしょうか?
しかし、そのジャンルで多くの場合、環境と人間関係の双方で閉塞感が漂う印象があるのですが、本作には、そんな閉塞感や息苦しさが感じられません。
これは欠点ではなく、主人公の女子高生、メインとなる人間関係の中心にいる死神の存在が大きいという事だといえば、多くの人が読後に感じる長所と重なると思います。
二人に代表されるキャラクターの関係は、基本的には明るく、ストーリーのガジェットである紫の壁と、その内部に出てくる雪女や朧車といった妖怪の存在は、どこか遊園地のお化け屋敷を思い浮かべさせられました。
閉塞感や絶望感ではなく、そういった不思議さで見せてくる点も、この物語が面白いテンポにある事を度々、印象づけられました。
平和な矢染市がある日突然、紫の壁で覆われ、無数の怪異達が蠢く異界となる。
そこに現れたゴシックの死神、音羽黒音。主人公の天奈が、黒音と再会することで物語は始まります。
のっぺらぼうに雪女、朧車など、妖怪が好きな人にはたまらない世界観。魑魅魍魎達が人々を襲い、時には救えない命が出てくることもあるダークでシリアスな物語ですが、決して暗くならないのは、魅力的に活躍してくれる登場人物の存在があるからでしょう。
コンダクターの異名を持つ死神、黒音はゴシックドレスを身に纏い、どこか飄々とした喋り方をするキャラクターです。
どんな時でも余裕の表情を崩さない黒音の強キャラ感に、読者は頼もしさを感じること間違いなし。蒼い鎌を振るって戦う戦闘シーンは迫力があり、どこか優雅さも持ち合わせています。
また、主人公の天奈も矢染市の異変と同時に狐と融合し、怪異融合者となってしまいます。心優しい彼女は、怪異によって傷ついていく人々に心を痛めながら、授かった力を人々を癒す為に使うことを決めます。
攻めの黒音、癒しの天奈。
各キャラクターの役割がハッキリしているが為に、彼らが活躍する場面は鳥肌が立つくらいかっこいいです。
最終決戦の緊迫感のあるバトルは見事としか言いようがありませんでした。
また、和を感じさせる美しい語彙が、リズミカルに文章を彩ります。スルスルと頭に入っていく文体は、まるで音楽を聞いているかのよう。タイトルにある「あたらよ」。この意味を知った時は唸らされました。
非常に完成度の高い物語です。
妖怪好きはもちろんのこと、そうでない方にも一度は読んでほしい素敵な作品です。
山駆ける猫さんの『あたらよ空にゴシック詠え』のレビューを書くのに、何度か読み直して、その魅力は何なのか? を考えました。
偏った特徴を持った魅力的なキャラクター達? テンポの良い描写で描かれた戦闘シーン? 敵としての怪異? それとも死が迫っている緊迫感?
その魅力を挙げていけば、まだまだあると思うが、黒井はそこまで挙げて、それらすべてを生かしているのが、逃げ出せない閉鎖された街、という舞台装置なのではないか? と思い至りました。
ハリウッドのパニック映画みたいな逃げ出す事が出来ない街での物語は、脇役のキャラクター達の魅力までも引き出し、怪異達をより恐ろしくし、緊迫感を高めて、戦闘シーンにテンポを与えているのではないか?
やっぱり閉鎖された街はいいですよね?
おすすめです(●´ω`●)
怪異が支配する矢染市。そこは紫の壁に閉ざされ現実と隔離された戦慄の世界だった。
そこで暮らす人々は怪異に戦慄し、明日すらも見いだせない過酷な環境下。人は怪異に抗い明日を見出そうと懸命に戦い抜くが、風前の灯火であろう。
しかし、苦境に立たされる人々を救う存在がいる。それは赤髪の死神。青の大鎌をふるい怪異を絶ち、華麗に空を舞う姿は人々を魅了してやまない。正に救世主と言えるであろう。
そんな死神に惹かれる者がいる。それは狐の少女である。二人は偶然出会ったことで運命に導かれるように互いに惹かれ合いそして、共に矢染市と人の運命を動かしていく……。
本作品は、一つの和風ファンタジーの形と言えるのではないだろうか。
怪異に侵食され閉ざされた戦慄世界の確立。それは綿密までに練られた世界観と言え、そこで繰り広げられる怪異との闘い、そして怪異に翻弄される人間模様を見事に醸し出せている。
その反面、ライトノベルらしくお手軽に読み進められ、ユーモラスなキャラクター達が生み出すコミカルな言動は笑いを誘う。それは見どころの一つと言えるのではないだろうか。
特記するべきは、戦闘描写の精密さ。想像が容易く、臨場感あふれ、まるで映像を見ているようにすらりと頭の中に浮かび上がる。
見どころが満載の幻想怪異譚を是非とも皆様に堪能してほしい。
一言で言えば、読み応えがある現代ファンタジーです。是非ぜひ、手に取ってお読みください。凄く、面白いですよ。お勧めですね。
フォローいただいたご縁でこの物語に出会いました。更新分まで読み終えましたので、レビューさせていただきます。
突如として空から発生した巨大な紫の壁が街全体を囲い、人々を閉じ込めるというパニックホラーのような展開からスタートするこの物語。始まり、危機、導き手となる重要人物との出会い、覚醒、くどすぎない説明、そして新たな事件と、話の組み立て方がとにかく綺麗です。
合間合間に主人公の彼女の力や重要な過去を適度に匂わせつつ、途中で笑いも挟むことによって緩急をつけ、退屈することなく読み進めることができました。この書き方はなかなかできるものではないと思うので、素直に羨ましいです。
キャラクターも良い味でている人達ばかりで、個人的には妹のために頑張りすぎてしまった真っ直ぐな彼が、今後良い働きをしてくれると良いなあ、なんて思ったりしています。
幽霊や妖怪、そしてゴシック服を身に纏ったヒーロー(ヒロイン?)らが織りなす、怪異幻想喜劇の物語。
他の皆様も是非読んでみてください。
ある日突然、空から発生した巨大な紫の壁により、街全体が隔絶されてしまった、天奈が暮らす矢染市。
街には怪異があふれ、多くの命が奪われて、人々は逃げ道を閉ざされた。そんな衝撃的な状況で怪異と戦う異能の少年少女、勇気ある街の人々を描いた現代ファンタジーです。
高校生の天奈は、異界の様相を呈した街で逃げまどって疲労し、友人の家で眠りについて目覚めたら――なぜか狐娘になっていたのでした。銀色のもふもふした尻尾、頭上に生えた狐の耳。そして時折り聞こえる、狐の鳴き声。
彼女の秘密を知る友人の潤子と食糧の調達に出かけた二人は、コンビニでの買い物を終えた帰途で、巨大な蛇の怪異に襲われます。
逃げきれず死を予感した二人の前に現れたのは、蒼い大鎌を振りかざした、赤い長髪の、ゴシックファッションに身を包んだ死神でした。テンション高く笑いながら異形を切り刻むその人物は、天奈がよく知る人物で――?
おどろしい怪異との対決を描きながらも、ユーモアでコミカルなキャラ造形によって明るい雰囲気が保たれています。狐の力を身に宿してしまった健気なヒロイン・天奈と、案外メンタルが強い普通人の友人・潤子、そしてカッコ可愛い死神・黒音と。
三人と、仲間たちや街人たちの奮闘を描きながら、物語はこの異常事態を引き起こした黒幕の企みを少しずつ暴いてゆきます。
楽しく読める現代怪異譚、ぜひご一読ください。