蒼き大鎌にて怪異を狩れ。ゴシック死神と銀狐少女が舞う、現代隔離世奇譚。

 ある日突然、空から発生した巨大な紫の壁により、街全体が隔絶されてしまった、天奈が暮らす矢染市。
 街には怪異があふれ、多くの命が奪われて、人々は逃げ道を閉ざされた。そんな衝撃的な状況で怪異と戦う異能の少年少女、勇気ある街の人々を描いた現代ファンタジーです。

 高校生の天奈は、異界の様相を呈した街で逃げまどって疲労し、友人の家で眠りについて目覚めたら――なぜか狐娘になっていたのでした。銀色のもふもふした尻尾、頭上に生えた狐の耳。そして時折り聞こえる、狐の鳴き声。
 彼女の秘密を知る友人の潤子と食糧の調達に出かけた二人は、コンビニでの買い物を終えた帰途で、巨大な蛇の怪異に襲われます。
 逃げきれず死を予感した二人の前に現れたのは、蒼い大鎌を振りかざした、赤い長髪の、ゴシックファッションに身を包んだ死神でした。テンション高く笑いながら異形を切り刻むその人物は、天奈がよく知る人物で――?

 おどろしい怪異との対決を描きながらも、ユーモアでコミカルなキャラ造形によって明るい雰囲気が保たれています。狐の力を身に宿してしまった健気なヒロイン・天奈と、案外メンタルが強い普通人の友人・潤子、そしてカッコ可愛い死神・黒音と。
 三人と、仲間たちや街人たちの奮闘を描きながら、物語はこの異常事態を引き起こした黒幕の企みを少しずつ暴いてゆきます。
 楽しく読める現代怪異譚、ぜひご一読ください。

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