生きることを諦めず、闇から光へ。絶望に剋ち未来をつかむ、愛しき御伽噺。

 賢く美しく、両親に深く愛されていた王女スノウリア。しかし、彼女をよく思わぬ継母の迫害により、酷くやつれて生来の美しさも損なわれ、さらに呪いの王女という濡れ衣を着せられ幽閉されることに。
 そのまま処刑を待つ身だった彼女は、忠義の騎士による手引きで逃亡を試みるのですが、その道中もまた過酷。ついには導いてくれた騎士ともはぐれ、死人のような姿で極寒の森に行き倒れてしまいます。
 そんな彼女を「死人と勘違いして」拾ったのが、その森に住む死霊魔術師のデュレインでした。

 ――と、ここまで冒頭二話で一気に語られ、物語は始まります。ストーリーを牽引するのは、どこまでも真面目で素直な王女スノウリアと、我がままで臆病だけれど心優しい死霊魔術師のデュレイン。そして屋敷に住まう生屍(アンデッド)の家族たち。
 彼らの過去に何があったのか、なぜスノウリアを匿うのかが少しずつ明らかになってゆき、それとともに追っ手の追撃もだんだん厳しくなってゆきます。決断の時というものは、望むタイミングで訪れるわけではないのです。

 似た傷を持ち未来をあきらめていた王女と死霊魔術師が、生きようと決意するための物語。
 重たい背景にも関わらず、登場人物みな愛とユーモアにあふれ、会話はテンポよくコミカルです。味方側がなんとなく闇側っぽいのも素敵! ぜひご一読ください。

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