秘めた想いを歌に重ねて。婚約破棄から始まる純愛溺愛ヒストリカルロマン♪

 堅物令嬢と呼ばれる、けれども自由な心を持つご令嬢と、身分を偽る青年歌手との、秘密と陰謀に彩られたヒストリカル恋愛譚です。実際の歴史的知見を織り交ぜつつも堅苦しくなってはおらず、愛らしいヒロインと優しいヒーローの甘いやりとりには読んでいる側が癒されるほどです。

 物語の発端は、ヒロインのリラ嬢が夜会で婚約者から婚約を破棄されたこと。衝撃と居た堪れなさに卒倒する(ふりをした)彼女を助けてくれたのは、その夜会で歌っていた青年歌手・アルカンジェロでした。しかも彼はリラに付き添いながら、自分の幸せを優先して欲しいと説き始めて――?
 彼の言動の端々に表れるリラへの想いや、とある情報について非常に詳しいなどの事実から、読者はその正体を容易に想像できるのですが、リラ自身はなかなかその事実へは思い至りません。しかも、当時の貴族や歌手を縛るしきたり、教会の教え、身分など……恋を自覚したからといって現代のようにはいきません。婚約破棄されたからといって自由に生きる、というわけにはいかないのです。

 物語の背景には、王族の暗殺という陰謀があります。恋の行方、事件の真相、気になることがたくさんです。
 また作者様の体験を下地とした音楽の描写は緻密で美しく、文字として読んでいながら伸びやかな歌声が響いてくるように思えるのも、この物語の魅力です。
 ぜひご一読ください。

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