怪異と戦う組織に属する青年と、彼に寄り添う妖精(あるいは神)と呼ばれる少女の物語を軸に、人、吸血鬼、神、様々な立場の登場人物が交錯してゆく現代ファンタジーです。怪異と戦うシーンもありますが、全体的には各自の内面が変化してゆく成長物語であると言えるかもしれません。
吸血鬼の被害が続く東京にて、上京してきた主人公のアオさんは早速、食人鬼と呼ばれる化け物と戦うことになります。手勢が足りず、やや劣勢――と思われた彼を助けたのは、不思議な存在感をもつ黒髪の少女でした。
彼女はアオさんに自分がかつて神と呼ばれていた妖精であると告げ、吸血鬼の被害を抑えるためにと人間側の組織に協力を申し出ます。人と異なる見方を持つ彼女によって、得体のしれなかった吸血鬼事件は徐々にその本質を明らかにしてゆくことになります。
繊細に紡がれてゆく物語の中では人と、人ならざるものの関わりが描かれてゆき、その在り方へ何度も問いが投げ掛けられます。
望む、望まざるとも「そういう」存在になったものたちとどう共存して生きるか、架空の事件ではありますが現代に重ねて思いを巡らせる、深い物語でした。完結しており最後まで見届けられますので、ぜひご一読ください。