いじわるな継母の計略により父殺しの汚名を着せられ、死人のように生きてきた王女スノウリア。
生者のことが苦手な極度のコミュ障で、森深いお屋敷内で『生きる屍』の使用人たちと暮らす死霊術師デュレイン。
命からがら逃げ出したものの従者とも別れてしまい、森で行き倒れたスノウリア。そんな彼女を、新鮮な死体が落ちてるぞ!とばかりに喜んで屋敷に連れ帰ってしまうデュレイン。当然彼女は起き上がり、当然死霊術師は慄きます。長い長い彼の悲鳴が、この奇妙で素敵な物語の開幕の合図です。
コミュ障である主人の代わりに弱りきったスノウリアの世話を焼くのは、コミカルで優しい生屍(アンデッド)の使用人たち。恐ろしい見た目ながら生者よりもあたたかい彼らの待遇により、スノウリアは久々に人間としての尊厳を取り戻します。そして長らく生きた人間と接することができなかったデュレインもまた、少しずつ変わろうとしていく。ささやかな毎日を送りながらだんだんと距離を縮めていく二人の様子にはほっこりしてしまいます。
しかしやはり、多くの問題が二人をそっとしてくれるはずもなく。王女を執拗に追う継母の魔手は、確実に森へと迫っていました。また同時に、デュレインとアンデッドたちの間にある、強くも危うい絆についても開示されていきます。このまま引きこもってはいられないと読者がおろおろしているうちに、戦いの火蓋はすっぱりと切られてしまうのです。
時には多くの代償を払いながらも、スノウリアに味方すると決めたデュレインとアンデッドたち。万一の時は命に換えても恩人である彼らを守ると覚悟を決める王女。とくに優柔不断で頼りなかったデュレインの成長はめざましく、涙なしには見守れないほどです。
物語全体を貫くストーリーが見事なのは、他の方が仰る通りです。それに加え私が特に素敵だなと思った点は、「静と動」の書き分けでした。冷えた屋敷の中での交流を描いた前半は静謐で美しく、継母の軍勢との対峙を描く後半は炎のように激しく。優雅に紅茶を楽しむシーン、そして手に汗握るバトルシーンの両方を書くのが上手い作者さんがどれだけいらっしゃるでしょうか。脱帽です。
策略や死、そして遺されることの寂しさ。そんな重い素材を扱いながらも、死んでしまったのになお陽気なアンデッドたちにぐいぐいと引っ張られて進むお話は、とても読み進めやすいです。最初から「死とは…愛とは…」みたいな哲学が入ってくることはないのでご安心を(笑)。むしろそれは言葉で語られるものではなく、読み終えた時にはもうあたたかいスープのように読者の心に馴染んでしまっている。そんな不思議な感慨でした。
私たちとは切っても切り離せない「死」。それをどう受け止めるのかを力強く語ってくれた名作だと思います。
「コミカルもほっこりもアツいバトルも、全部盛りの作品ねえかなー」などと都合のよいことを考えているあなた…おめでとうございます、こちらがその作品です。ごゆっくりどうぞ^^
一言で言うと重厚なファンタジーでした。しかしファンタジーといえどただのファンタジーではない、魔術が存在しながらもそれ以上に人間が交差する人間ドラマでした。
死霊術師というどちらかといえばマイナスなイメージのつきまとうキャラクターに人間味のあるストーリーを与えることでイメージを覆しています。王女も剣や魔法などの力でなく知力を以て戦いにうって出るなど、さながら最前線で戦う将軍のようでした。
騎士も熱い騎士然としたキャラクターでありながら王道とはやや違う描写があり親しみ、というか共感を得る人物でした。
読みやすく、深い物語に夢中になり一気に読むことができました。
何もかも失った白雪姫は、少年に拾われた。
――生きている人間が苦手な少年に。
「うあああぁぁぁ! こここ、こやつっ、生者ではないかあぁぁぁぁ!!」
そこは、死霊術師《ネクロマンサー》・デュレインの住む屋敷。
薄幸の王女スノウリアを救ったのは、森に住む小人--ではなく、彼に従う生屍。
死体である彼らのために冷気に包まれたそこは、あたたかな関係で満ちていた。
けれど生屍たちは、何かしら思惑があって自分を匿ったのだとスノウリアは気づく。
人は間違え失い、されど生者は間違えを取り戻しながら時を刻む。
生きるとは選択することであり、選ばなかった寂しさを背負うことである。
少しずつ針が動き始める時、二人は何を手放し、何を得るのか。
不気味な森に住む死霊術師デュレイン。
彼が喜々として拾ったのは、死体ではなく生きた女性だったのです。
実はこの女性、この国の王女スノウリアでした。
継母の陰謀により、父王殺しの濡れ衣を着せられ幽閉されていたところ、ひとりの近衛騎士に助けられ、この森に迷い込んだのです。
デュレインの住んでいる屋敷に生者はおらず、家族同然のアンテッドたちと一緒に暮らしていました。
スノウリアは屋敷で生活し、デュレインやアンデッドとの交流を通し、傷ついた心身を癒していきます。けれど、継母からの追っ手はやみません。
引きこもりのデュレインの可愛らしさに癒され、アンテッドたちの溢れるほどの愛情に涙しつつ、ラストの戦いのシーンへ!
死霊術は使いますが、気持ち悪さはまったく感じません。
生きる者達とアンテッド達が与え合う愛情の物語です。
お薦めですので、ぜひ読んでみてください!
継母にいじめられ、風貌が変わるまでに至った王女スノウリア。かつての美女の姿を失って、死人のよう、呪いの魔女のようと形容され辛い毎日を送る彼女は、諦めの中で命が潰えるその日まで漫然と呼吸するだけの生きる屍。
そんな彼女が騎士の一人に救い出され、凍てつく森にたどり着き、そこで死体と間違われて死霊術師デュレインに拾われたところから物語は動きはじめます。
森に引きこもるデュレインもまた、気心の知れたアンデッドと共にただそこに居るだけの生き方をしていました。
哀しみにとらわれ立ち止まっていた二人が、やがて交流を通して生きているからこその温もりを思い出していく過程、そうなるべく周囲で画策するアンデット達の行動に心温まります。
このまま平和なスローライフが続くのかと思いきや、スノウリアが生存する事を許さない継母の魔の手が森に忍び寄る!
大切な物のための取捨選択。自分の気持ちに気付く瞬間。思いやり合うそれぞれが、導き出す最適解とは。一気に怒涛の展開、手に汗握る限界のラストバトルへ!
命の輝く瞬間、本当の美しさ。生きているからこその変化や成長、苦しみを乗り越えて生まれる幸福。
心が動けば世界が変わる事を描き出した、ファンタジーヒューマンドラマです。
とても面白かったです!緻密な構成と個性的ながら王道の展開、そして圧巻の成長と再生の物語でした。
王女であるスノウリアは継母に父殺しの罪を着せられ、幽閉されていました。人生に絶望していたスノウリアでしたが、忠臣である近衛騎士の手によって逃亡するものの、途中ではぐれてしまいます。
森の中を彷徨うスノウリアを救ったのは、その森に住む死霊術師、デュレインでした。
童話の白雪姫を彷彿とさせる場面から始まるこの物語。ですが彼女を救ったのは七人の小人ならぬ一人の死霊術師と六体(四人と二匹)の生屍(アンデット)達。ですが、この死霊術師とアンデットというオリジナルの要素が物語に素晴らしいスパイスを与えてくれることとなります。
この物語の一番の魅力は、登場人物皆がとても温かい存在だということ。
死霊術師の少年、デュレインは大の生者嫌い。おまけにコミュ障なのでスノウリアともまともに話せず、人と喧嘩する時は相手の目ではなく床を見ながら啖呵を切るほど(笑)それでもスノウリアを気遣う気持ちは本物で、どこか憎めない愛すべきキャラクターです。
彼に仕えるアンデット達もまたスノウリアを温かく迎え入れてくれる優しい人達ばかり。彼らと接するうちに少しずつ傷ついた心が癒やされていくスノウリアですが、物語は中盤で転機を迎えます。
序盤は個性的で魅力的なアンデット達との日常が続きますが、ひとまず物語の根幹に触れる11話まで一息に読んでみることをオススメします。なぜデュレインが生者を避けるようになったのか。アンデット達から向けられる、デュレインに対する真の想いを知った時、一気にこの作品の虜になってしまいました。
失うことが怖くて子供のままでいたい気持ちは理解できてしまうもの。それでも決断し、前に進まなければならない時は容赦なくやって来ます。
デュレインの気持ちとアンデット達の心を知れば知るほど彼らの優しさとこれから待ち受ける運命に胸が締め付けられますが、それでもこれまで出てきた物をすべて使いきった全力の戦いは圧巻の一言でした。
おとぎ話をモチーフにしたストーリーラインにオリジナル要素をつけ加えた七人の英雄たち。伏線回収も見事で読んで損をなさせない作品です。胸打たれる作品をお探しの方にぜひおすすめしたい一作です。
賢く美しく、両親に深く愛されていた王女スノウリア。しかし、彼女をよく思わぬ継母の迫害により、酷くやつれて生来の美しさも損なわれ、さらに呪いの王女という濡れ衣を着せられ幽閉されることに。
そのまま処刑を待つ身だった彼女は、忠義の騎士による手引きで逃亡を試みるのですが、その道中もまた過酷。ついには導いてくれた騎士ともはぐれ、死人のような姿で極寒の森に行き倒れてしまいます。
そんな彼女を「死人と勘違いして」拾ったのが、その森に住む死霊魔術師のデュレインでした。
――と、ここまで冒頭二話で一気に語られ、物語は始まります。ストーリーを牽引するのは、どこまでも真面目で素直な王女スノウリアと、我がままで臆病だけれど心優しい死霊魔術師のデュレイン。そして屋敷に住まう生屍(アンデッド)の家族たち。
彼らの過去に何があったのか、なぜスノウリアを匿うのかが少しずつ明らかになってゆき、それとともに追っ手の追撃もだんだん厳しくなってゆきます。決断の時というものは、望むタイミングで訪れるわけではないのです。
似た傷を持ち未来をあきらめていた王女と死霊魔術師が、生きようと決意するための物語。
重たい背景にも関わらず、登場人物みな愛とユーモアにあふれ、会話はテンポよくコミカルです。味方側がなんとなく闇側っぽいのも素敵! ぜひご一読ください。
文句なしに面白かったです!すごい!
真っ先に言えるのは、登場人物がものすごく魅力的だということ。
個性豊かで温かな生屍(アンデッド)たちが、みんな素敵です。
そんな彼らに見守られるコミュ障死霊術師のデュレインと、逃亡中の王女スノウリアの心の交流と再生が、本作の大きなテーマとなっています。
デュレインはなぜ生屍ばかりと暮らし続けているのか。
どこかコミカルで楽しい前半部分から一転、彼の哀しい過去に触れた辺りで、もうこの物語から目が離せなくなっていました。
過去に囚われるより、前に進むべき。
そんな当たり前のことが、これほど難しく耐えがたいと感じた話はありませんでした。
細やかな心理の動きのみならず、後半部分にかけての激しい戦いを描き出す、重厚で熱い筆致も素晴らしいです。
それぞれの決意と覚悟、そして震えるほどの魂の力を感じました。
クライマックスでは、何度泣いたか分かりません。
明るい未来が見える爽やかなラストも最高です。
本当に良い作品を読んだ。そんな充実感でいっぱいです。とても読み応えのある、素晴らしい物語でした!
家族のために 命を削る
死霊術士の お坊ちゃん
家族を亡くし 心を削る
逃亡中の 姫殿下
森で出会った 二人が紡ぐ
生死を超えた 物語
優しい生屍のぎこちない笑顔に癒される……。
そんな序盤の、少し和やかでコミカルな雰囲気は一転し、
後半には息もつかせぬ怒涛の展開が待っています。
少年と少女……。
二人が出会い、そして様々な経験と周囲の影響を受け成長していく。
その過程が丁寧に描かれた圧倒的な文章力は、読者を惹きつけて離しません。
わかりやすい文体で描かれた、数々の印象的なシーンは、
読む者の脳内にリアルな描写を映し出してくれることでしょう。
クライマックスは一気に読破したくなること間違いなしです!
ぜひ、この生死の境を超えた、少年少女の物語を……貴方にも見届けていただきたい。
スノウリア王女が継母の策略に……あれ、こんなこと書かないでも、もう作者様のあらすじに「最後の最後まで」しっかりと書かれているっ!
面白いです、この物語は。
重厚感ある卓越した文章があだになり最初の最初がとっつきにくい方もいるかも知れませんが、逃げ出した王女が死霊の森にて死霊術士デュレインと出会うところまで見てください。そこからはもうスイスイです。
レビューの短い文章すら統一感を維持出来ない私の愚文駄文と違って、とにかく文章力が高くしっかりしており、だというのに会話のノリは優しく柔らかく、特に私はデュレイン坊っちゃまのあまりの不器用からくる可愛らしさに胸を撃ち抜かれちゃいました。
ほんとに抱きしめたくなるくらい可愛らしいんです。まあ、彼の周囲はアンデッドがつきっきりなので、抱きしめるだなんてとても出来そうもありませんけれど。残念。
可愛らしいだけじゃありません。
主人公格の人物たちの成長物語ですが、とくにこのデュレインくん、最初があまりに……すぎて、それはつまり伸びしろしかないということ。どんどん逞しくなっていくところに、あらためて惚れるっ!
読んで損のない素晴らしい作品です。
……って、あらやだデュレイン様のことしか語ってなかった。