結婚した幼馴染はいつまでも猫みたいです

結婚した幼馴染はいつまでも猫みたいです A

 「帰ったぞ」

 「お帰り、コータロー! 僕は今日、寂しくて寂しくて死んでしまうかと思ったよ……」

 「休みを取る為だから我慢しろよ……。 まぁおかげで、明日明後日は休みだから、どこか出かけるか?」

 「なら、僕はあの焼き肉屋へ行きたい!」

 「分かった分かった、焼き肉だな」

 「……モミジを呼ばないでくれよ」

 「分かってる」


 …………。


 そんな会話をしたのが10月終わりの昨日の事。

 僕は今日、コータローと一緒に車に乗って、あの焼き肉店へと向かった。

 勿論、車の中でスクリュードライバーを飲みながら!


 そして今回は、客も少なくすんなり入れ、僕とコータローは早速お肉を注文する事になったんだけど。


 「アカネ、俺の膝の上にまたがるな! 誰かに見られたら恥ずかしいだろう!? と言うか、肉が焼けないぞ!」

 「ふふふ、別に良いじゃないか? 僕の仮面は剥がれた、だから僕はもう自分を抑えないよ……。 さぁ僕を夜のデザートにむさぼるんだ……」


 まったくコータローはシャイだと思う。

 だけど、君が僕を愛しているのは知っているんだ、だから僕は君に襲う気を起こさせる為、世間からの評判など気にせず、どんどん挑発してやるんだからね!


 「仮面は剥がれた? どういう事だ?」

 「ふふふ、コータロー……、君は意地悪だね……」


 まぁ良いさ、君が僕のいじめられる姿を見たいなら見せてあげよう……。

 そして、その可愛さに惚れ直すがいいさ!


 「だって君は僕を探すとき、僕の下着姿の写真を、あの変態の知り合いに広めたんだろう? せっかく君だけにと思ってそんな下着写真を撮ったのに……」

 「……お前、たまにバカだよな……。 アカネ、あの写真を弁当に入れていたんだぞ。 偶然、他の社員が通りかかってそれを見るかもしれない、とか思わなかったのか?」

 「ふにゃ!?」

 「ついでに言うと、お前の下着写真の顔の部分だけ送ったんだ、あの4人以外、下着姿は見ていないぞ」

 「ふにゃにゃ!?」


 つ、つまり……。

 僕は勝手に下着写真が広まって、世間で痴女って評判になった!と勘違いしただけだったのかい……。

 こ、これじゃあ僕はただの痴女じゃないか……。

 そう思ってしまい、目元をワナワナさせ始めた時だった。

 コータローは僕の身体をギュッと抱きしめると。


 「まったく……。 俺はお前がどうだろうが気にしない、だから泣くな、アカネ……」


 そう優しく言ってくれた。

 コータロー、ホント君は僕に優しいね。

 僕の全てを包み込むような、優し……。


 「お客様、店内でその様な行為は……」

 「その、まぁ、ちょっと誤解なんだが……、申し訳ない……」


 まったく、せっかくいいムードだったのに、店員め……。

 上手くいけばキスまで行くことが出来たかもしれないのに……。


 …………。


 その後、僕らは店を出て、家へと帰る事にした、そんな帰り道の車の中。


 「アカネ、お前はその……、子供が欲しいのか?」

 「ふにゃ!?」


 突如コータローが照れ臭そうに言った一言に、僕は驚きを隠せなかった。

 だってコータロー、そういう素振りを今まで見せなかったのだから……。

 それに続くように。


 「俺は……興味がある……」

 「ふにゃにゃ!?」


 そんな言葉を僕にぶつけてくる。

 だ、だけど。


 「い、いきなりどうしたんだい!? ぼ、僕は君の予想外の言葉に戸惑っているよ!?」


 どうしていきなりそんな事を言ってきたのか!?

 僕にはそれが不思議だった。

 そして、コータローは僕の疑問に、前を向いて運転しながら答え始めた。


 「……今までのお前の仕草を考えてみて思ったんだ。 『アカネは俺との子供が欲しいのだろうか?』とな……。 今までお前は不自然なほどベタベタしてきて、そして最近では、その、そっちの方面に積極的だったと思った。 始めは、酒に酔ったらそうなるのか?とも思ったが、今日のお前の泣いている姿を見ていて、その、もしかしたらお前は本気だったのだろうか?とふと思ってしまってな……。 その、勘違いだったらすまない! だが、その、俺はアカネ、お前の言葉が聞きたいんだ!」


 僕は静かに答えた。


 「勘違いじゃないよ……」


 それは、恥ずかしさや、嬉しさなどの気持ちを織り交ぜた声だった。

 嬉しさ、でもそれより強い恥ずかしさと言う感情に包まれていた僕は、コータローを向いてそういう事は出来ず、ただ下を向いていう事が精いっぱいだった。


 「すまん……。 俺が鈍いせいで、お前の気持ちに気づくのが遅れて……」


 そんな僕にコータローは優しくそう呟き。


 「……ホテルに泊まるか?」


 僕にそう尋ねてきた。


 「…………」コクリ

 「……そうか……。 アカネ、愛してるぞ……」


 僕は黙って頷き、コータローはそう言ってくれた。

 嬉しかった。

 やっとコータローからが出来たのだから……。


 その後僕らは、ホテルへと向かい、そこで一晩過ごした。

 森に隠れるホテルで、僕らの身体を、そして僕らの愛を、一つにする為に……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る